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第四章 全部まとめて解決します!
34、ゲーム中盤 前編 ~国際交流~
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国王問題に決着がつくと、残っていた人たちもようやくチームを作って受付に並び始めた。
あとのことを係の人たちにお願いして、あたしはフォージと連れだって大広間から出る。
大広間の外は、予想通り喧噪に包まれていた。謎が解けないというチームはごくわずか。一問目だから、簡単な謎に絞ったからね。フラックスさんが作った難解なものじゃなくて。
騒いでいるのは、謎が解けた友好国の王子王女たちのチームだ。
「この謎が示している場所って、あそこよね……?」
「おい! あんなところ、はしごでも届かないだろう!?」
困り果てるチーム、近くの侍従さん侍女さんに当たり散らす人たち。
「【救世の力】を使えば取ることができます。チームメンバー以外に協力を求めてはいけないというルールはないので、頼んでみたらいかがでしょう?」
「なら、おまえが協力しろ」
「申し訳ありません。私は血族ではないので、【救世の力】を持っていないのです。侍従侍女の中には血族もおりますが、力が弱いのでお役に立てるかどうか…。ゲームにご参加のディオファーン貴族に協力をお求めになられたほうがよろしいかと存じます」
「協力など求められるわけがないだろう! 我々はソルバイト陛下との面談を賭けて争う、いわば敵同士なんだぞ!?」
「そういう考えでいると、このゲームはクリアできませんよ~」
のんびりした声をかけると、王子に詰め寄られていた侍従さんはほっとしたような顔をする。
「舞花様」
「あたしが引き受けるんで、ゲーム内容に不満がある方々にこちらへ集まるよう伝えてください」
「はい!」
侍従さんは元気よく返事をして、早足で離れていく。これも打ち合わせしていたこと。侍従さん侍女さんたちに瞬く間に伝わって、各国の王子王女たちが続々と集まってきた。
「このゲームは不公平ですわ。【救世の力】がなくてはクイズを手に入れられないなんて、わたくしたちにはどうしようもないではないですか」
「そんなことないですよ。スタッフからお聞きになったと思いますが、チームメンバー以外の人に協力をあおいでいただいて問題ありません。皆様方はディオファーンと親交を深めるためにいらしているんですから、ディオファーンの貴族とも交流してくださってますよね? そのうちのどなたかに頼んでみられたらよろしいかと。一階はゲームに参加しているディオファーン貴族ならたいていの方が取れる場所にしか置いていないので、どなたにお願いしても取っていただけると思いますよ」
気まずげに目をそらす王子王女が約半数。今回の招待の趣旨を理解していながら、それを怠っていた自覚があるんだろう。
一割くらい、主に王女たちが誰かを探すようにこの場から離れていく。ディオファーンの貴族と縁続きになりたくて積極的に交流を図ろうとしていた方々もいるそうなので、お願いできそうな貴族に心当たりがあるんだろう。この一割の方々につられるようにして、きょろきょろしながら離れていく王子王女が三割ほど。この方々は、あてはないけれど誰かに頼めないだろうかと考えていそう。建設的で助かる。
あとの約一割はというと。
「頼んだところで断られるに決まっているだろう!」
そんな感じのことを言いながら、主に王子が詰め寄ってくる。
タイミングよく、ディオファーンの貴族のチームが彼らのそばを通り過ぎていった。王子王女たちよりあとに受付をしたのに、すでに暗号を解いたらしく、クイズの書かれた紙を手に入れに向かっているところらしい。このゲーム、自分たち【救世の力】を持つ者が有利だと思ったのか、嫌みったらしい余裕の笑みを王子王女たちに投げかける。
それで頭に血が上った王子たちの中から、一人が声高に叫ぶ。
「このゲームは不公平だ! 別のゲームにて、ソルバイト陛下の面談権を賭けることを要求する!」
「そんなに不公平じゃありませんよ。ディオファーンの貴族たちをご覧いただければ、そのうちわかります」
またもやタイミングよく、ディオファーンの貴族だけのチームがあたしのところへ押しかけてきた。
「何なんだこの問題は!? わかるわけがないだろう!」
「そんなに難しかったですか? 見せていただいても?」
突き出された紙を受け取ったあたしは、隣にいるフォージに紙を渡す。
「読んでくれる?」
まだ知らない単語多いし、読めてもつっかえまくるのが目に見えてるので、最初から任せちゃう。フォージにとっては、人前で話す練習にもなるしね。
フォージはあたしをすがるような目を向けたけど、まっすぐ見つめるあたしの目から気を変える気はないことを見て取ったのだろう。思い詰めたように手の中の紙に視線を落とし、勇気を振り絞るようにして声を出した。
「第一問、ステム国の、王太子殿下のお名前は? 第二問、ホーニング国の、第二王女のお名前は? 第三問、ノーズ国の、第四王子のお名前は?」
あたしに詰め寄っていた王子たちが、口をぱかっと開けて絶句する。だよね。他国をライバル視するあなた方でも、他国の王子王女たちの名前くらい覚えてるよね。あたしは予想してたけど、これはちょっとなぁ……。
「あの、一問もわかりませんか?」
「わかるわけがないだろう!」
苛立つ貴族に、あたしは笑ってしまいそうになるのをこらえて、懸命に真顔を作って伝える。
「ディオファーンの貴族のみなさんは、ソルバイト陛下から友好国の方々をもてなす役目をおおせつかっていたでしょう? 三問とも、現在ディオファーンに滞在中の方々で、先日の交流会にも出席なさってましたよ? 招待された方が大勢いらしたとはいえ、〝問題に出た三人の方のどなたとも自己紹介も交わせなかったとは、よほど運が悪かったんですね〟」
国王陛下の指示をおろそかにしたことを暗に糾弾しながらも、あたしは逃げ道も作る。貴族たちは迷うことなくそれに飛びついた。
「あ、ああ。まったく運が悪かった」
「もっと時間があれば、出題された方々とも交流を持てたでしょうが」
あーあ、言い訳しちゃって。「わかるわけがないだろう!」の一声で、あなた方に友好国の王女たちの名前を覚える気がさらさらなかったってことがバレバレだって。
相手の名前と肩書を覚えることは、社交において基本中の基本。そのことをわかっていて、でもできていなかったことを恥じているからこそ、言い訳の一つや二つ出てくるのだと思いたい。
言い訳が四つ五つと続くと、さすがに「もう結構」と言いたくなる。それをこらえて、あたしは言い訳の合間へ強引に割り込んだ。
「今からでも遅くないですよ。友好国の方々は、謎を解くことはできたものの、クイズを入手することができずにいます。力をお貸しするのをきっかけに、親交を深めるのもよろしいかと」
言い終えてすぐ、今度は友好国の方々にも話しかける。
「クイズが解けずに困っているディオファーンの貴族に答えを教えてあげれば、あなた方の手が届かない場所にあるクイズの紙をきっと取ってくれるでしょう」
この説明に文句を言いたげな王子王女もいたけれど、困っているディオファーンの貴族を探そうと他の王子王女たちが動き出したのを見て、仕方なしにあたしから離れていく。そうそう。文句を言ってる場合じゃないよ。恩を売って助力を乞わなきゃ。
クイズに回答できず困っているディオファーン貴族のチームに、友好国の方々のチームが話しかける。その様子にひとまず満足を覚えながら、あたしは声を張り上げる。
「二階から上の階も、一階と同じように謎を解いて隠されているクイズを入手、クイズに正解したチームから上の階に上がっていただきまーす! 二階三階と上がっていくにつれ、問題数が増えて難しくなりますよー! 問題が易しい今のうちに、できるだけたくさんの方と仲良くなってくださいねー!」
そう。このゲームをクリアする鍵は、少しでも多くの参加者と仲良くすること。交流そっちのけだった友好国の王子王女たちも、友好国を見下して親交を深めようとしてこなかったディオファーンの貴族たちも、陛下との面談権を得るために多くの参加者と手を組まざるを得なくなる。
これで、みんな仲良くお友達──とはいかないだろうことはわかってる。でも、お互いを知る機会程度にはなるといいな。
あとのことを係の人たちにお願いして、あたしはフォージと連れだって大広間から出る。
大広間の外は、予想通り喧噪に包まれていた。謎が解けないというチームはごくわずか。一問目だから、簡単な謎に絞ったからね。フラックスさんが作った難解なものじゃなくて。
騒いでいるのは、謎が解けた友好国の王子王女たちのチームだ。
「この謎が示している場所って、あそこよね……?」
「おい! あんなところ、はしごでも届かないだろう!?」
困り果てるチーム、近くの侍従さん侍女さんに当たり散らす人たち。
「【救世の力】を使えば取ることができます。チームメンバー以外に協力を求めてはいけないというルールはないので、頼んでみたらいかがでしょう?」
「なら、おまえが協力しろ」
「申し訳ありません。私は血族ではないので、【救世の力】を持っていないのです。侍従侍女の中には血族もおりますが、力が弱いのでお役に立てるかどうか…。ゲームにご参加のディオファーン貴族に協力をお求めになられたほうがよろしいかと存じます」
「協力など求められるわけがないだろう! 我々はソルバイト陛下との面談を賭けて争う、いわば敵同士なんだぞ!?」
「そういう考えでいると、このゲームはクリアできませんよ~」
のんびりした声をかけると、王子に詰め寄られていた侍従さんはほっとしたような顔をする。
「舞花様」
「あたしが引き受けるんで、ゲーム内容に不満がある方々にこちらへ集まるよう伝えてください」
「はい!」
侍従さんは元気よく返事をして、早足で離れていく。これも打ち合わせしていたこと。侍従さん侍女さんたちに瞬く間に伝わって、各国の王子王女たちが続々と集まってきた。
「このゲームは不公平ですわ。【救世の力】がなくてはクイズを手に入れられないなんて、わたくしたちにはどうしようもないではないですか」
「そんなことないですよ。スタッフからお聞きになったと思いますが、チームメンバー以外の人に協力をあおいでいただいて問題ありません。皆様方はディオファーンと親交を深めるためにいらしているんですから、ディオファーンの貴族とも交流してくださってますよね? そのうちのどなたかに頼んでみられたらよろしいかと。一階はゲームに参加しているディオファーン貴族ならたいていの方が取れる場所にしか置いていないので、どなたにお願いしても取っていただけると思いますよ」
気まずげに目をそらす王子王女が約半数。今回の招待の趣旨を理解していながら、それを怠っていた自覚があるんだろう。
一割くらい、主に王女たちが誰かを探すようにこの場から離れていく。ディオファーンの貴族と縁続きになりたくて積極的に交流を図ろうとしていた方々もいるそうなので、お願いできそうな貴族に心当たりがあるんだろう。この一割の方々につられるようにして、きょろきょろしながら離れていく王子王女が三割ほど。この方々は、あてはないけれど誰かに頼めないだろうかと考えていそう。建設的で助かる。
あとの約一割はというと。
「頼んだところで断られるに決まっているだろう!」
そんな感じのことを言いながら、主に王子が詰め寄ってくる。
タイミングよく、ディオファーンの貴族のチームが彼らのそばを通り過ぎていった。王子王女たちよりあとに受付をしたのに、すでに暗号を解いたらしく、クイズの書かれた紙を手に入れに向かっているところらしい。このゲーム、自分たち【救世の力】を持つ者が有利だと思ったのか、嫌みったらしい余裕の笑みを王子王女たちに投げかける。
それで頭に血が上った王子たちの中から、一人が声高に叫ぶ。
「このゲームは不公平だ! 別のゲームにて、ソルバイト陛下の面談権を賭けることを要求する!」
「そんなに不公平じゃありませんよ。ディオファーンの貴族たちをご覧いただければ、そのうちわかります」
またもやタイミングよく、ディオファーンの貴族だけのチームがあたしのところへ押しかけてきた。
「何なんだこの問題は!? わかるわけがないだろう!」
「そんなに難しかったですか? 見せていただいても?」
突き出された紙を受け取ったあたしは、隣にいるフォージに紙を渡す。
「読んでくれる?」
まだ知らない単語多いし、読めてもつっかえまくるのが目に見えてるので、最初から任せちゃう。フォージにとっては、人前で話す練習にもなるしね。
フォージはあたしをすがるような目を向けたけど、まっすぐ見つめるあたしの目から気を変える気はないことを見て取ったのだろう。思い詰めたように手の中の紙に視線を落とし、勇気を振り絞るようにして声を出した。
「第一問、ステム国の、王太子殿下のお名前は? 第二問、ホーニング国の、第二王女のお名前は? 第三問、ノーズ国の、第四王子のお名前は?」
あたしに詰め寄っていた王子たちが、口をぱかっと開けて絶句する。だよね。他国をライバル視するあなた方でも、他国の王子王女たちの名前くらい覚えてるよね。あたしは予想してたけど、これはちょっとなぁ……。
「あの、一問もわかりませんか?」
「わかるわけがないだろう!」
苛立つ貴族に、あたしは笑ってしまいそうになるのをこらえて、懸命に真顔を作って伝える。
「ディオファーンの貴族のみなさんは、ソルバイト陛下から友好国の方々をもてなす役目をおおせつかっていたでしょう? 三問とも、現在ディオファーンに滞在中の方々で、先日の交流会にも出席なさってましたよ? 招待された方が大勢いらしたとはいえ、〝問題に出た三人の方のどなたとも自己紹介も交わせなかったとは、よほど運が悪かったんですね〟」
国王陛下の指示をおろそかにしたことを暗に糾弾しながらも、あたしは逃げ道も作る。貴族たちは迷うことなくそれに飛びついた。
「あ、ああ。まったく運が悪かった」
「もっと時間があれば、出題された方々とも交流を持てたでしょうが」
あーあ、言い訳しちゃって。「わかるわけがないだろう!」の一声で、あなた方に友好国の王女たちの名前を覚える気がさらさらなかったってことがバレバレだって。
相手の名前と肩書を覚えることは、社交において基本中の基本。そのことをわかっていて、でもできていなかったことを恥じているからこそ、言い訳の一つや二つ出てくるのだと思いたい。
言い訳が四つ五つと続くと、さすがに「もう結構」と言いたくなる。それをこらえて、あたしは言い訳の合間へ強引に割り込んだ。
「今からでも遅くないですよ。友好国の方々は、謎を解くことはできたものの、クイズを入手することができずにいます。力をお貸しするのをきっかけに、親交を深めるのもよろしいかと」
言い終えてすぐ、今度は友好国の方々にも話しかける。
「クイズが解けずに困っているディオファーンの貴族に答えを教えてあげれば、あなた方の手が届かない場所にあるクイズの紙をきっと取ってくれるでしょう」
この説明に文句を言いたげな王子王女もいたけれど、困っているディオファーンの貴族を探そうと他の王子王女たちが動き出したのを見て、仕方なしにあたしから離れていく。そうそう。文句を言ってる場合じゃないよ。恩を売って助力を乞わなきゃ。
クイズに回答できず困っているディオファーン貴族のチームに、友好国の方々のチームが話しかける。その様子にひとまず満足を覚えながら、あたしは声を張り上げる。
「二階から上の階も、一階と同じように謎を解いて隠されているクイズを入手、クイズに正解したチームから上の階に上がっていただきまーす! 二階三階と上がっていくにつれ、問題数が増えて難しくなりますよー! 問題が易しい今のうちに、できるだけたくさんの方と仲良くなってくださいねー!」
そう。このゲームをクリアする鍵は、少しでも多くの参加者と仲良くすること。交流そっちのけだった友好国の王子王女たちも、友好国を見下して親交を深めようとしてこなかったディオファーンの貴族たちも、陛下との面談権を得るために多くの参加者と手を組まざるを得なくなる。
これで、みんな仲良くお友達──とはいかないだろうことはわかってる。でも、お互いを知る機会程度にはなるといいな。
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