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第四章 全部まとめて解決します!
32、イベント開始前の一騒動 後編
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はぐらかされたままでいてくれるといいんだけどな、と考えてたんだけど、そう都合よく事が運ぶわけもなく。
ヘマータサマたちと別れてすぐ、五十代くらいのディオファーンの貴族が面と向かって言ってきた。
「舞花様、そちらのお方の素性をお聞かせ願いたい」
うーん、どうごまかそうかな。なんて考えていたら、背後からあたしに代わって答える声が聞こえた。
「ラジアル・フェルミオン、余の弟である」
あーあ、言っちゃった。もうしばらくはぐらかしておきたかったんだけど。でもまあ、嘘を言えなければはぐらかすこともできないのが陛下のいいところだもんね。何とか収拾つけましょう。
ざわめきがひときわ大きくなった。
「弟ということは、やはり陛下のお父上は生きておいでで……!?」
「陛下は──いえ、前国王陛下は我々を騙したのですか!?」
「ソルバイト陛下はそれをご存じで今まで黙っておられたのですか!? だったとしたら、何故今まで我らをあざむいてこられたのですか!? 王家は我々貴族を何だと思っているのですか!?」
陛下に非難が集中しはじめる。主に騒いでいるのは五十代以上。二十二年前の次期国王を巡る争いに関わっていたと思われる人たちだ。やれやれ。自分たちのしたことを棚に上げて。
場が緊迫してくる中、あたしはわざとのんびり言った。
「前国王陛下がソルバイト陛下のお父上を亡くなったことにしたのは、仕方のないことだったとあたしは思うんですけど。誰が次期国王陛下にふさわしいかで貴族のみなさんが争って、国が分裂しかけたそうですから」
数人の貴族が口ごもる中、一人が憤慨して言ってきた。
「舞花様、口を挟まないでいただきたい。陛下の婚約者とはいえ、ディオファーンの貴族でないどころかこの世界の人間でもないのですから」
「あたしもそう思ってました。部外者が口を出すべきじゃないって。でも、あたしは関係ないって自分に言い聞かせるのも限界だったんです。ディオファーンのことを思って身を引こうとした方が、どうして表向き死んだことにされて軟禁生活を送らなくてはならないんです? その方のお子として生まれただけのラジアル様が、何故存在しない者として扱われなければならないんです? それもこれも、ディオファーンを混乱に陥れようとしたあなた方貴族のせいでしょう?」
「失敬な! 我々はディオファーンの存続と発展を願って」
あたしは怒鳴り声をさえぎれるよう声を張り上げた。
「だった何故、次期国王には誰がふさわしいかと言い出して、王家を無視して争いを始めたんです!? その争いが、当時幼かったソルバイト陛下から両親を奪ってしまったことに、心を痛めた方はいらっしゃらないんですか!?」
「う、奪ってなどいない! 現に、ソルバイト陛下のご両親はご存命だというではないか!」
あたしは深呼吸して、気を落ち着けた。
「死んだも同然だったんです。ソルバイト陛下は、即位するまでご両親が生きておられるとは知らなかったんですから。それに、生きているとわかったからといって、再会して会えなかった歳月を埋められたわけではありません。こう聞いても、王子派と王孫派に分かれて争ったことに罪悪感を抱かないんですか?」
「無礼な!! 我が国と関わりのないよそ者のくせに!」
「そのよそ者の方が、よっぽどかディオファーンのことを考えてます。先ほどから怒鳴り声を上げているあなた、国賓の皆様方を前にそのように騒いだら、あなたご自身だけでなくディオファーンの恥にもなると思うんですけど」
貴族の男性は、はっとして辺りを見回し、顔を赤くする。
「おっ、おまえが先に始めたことではないかっ! ラジアル様をこの場にお連れしたのはおまえであろう!?」
「ラジアル様を今日の催しに招待するよう勧めたのはあたしですが、実際に招待したのは陛下です」
貴族たちの視線が、あたしの後ろにいる陛下に集まる。陛下はあたしの横に並ぶと、貴族たちだけでなく王子王女方も見渡して悠然と話し始めた。
「舞花が言ったのだ。誰が国王になるべきかに口を出したい者が大勢いるなら、いっそみなに選んでもらったらどうかと」
大広間がざわめきで騒々しくなる。その中でもよく響く声で、陛下は話を続けた。
「余と父と弟を見比べて、誰を国王と仰ぎたいか選ぶとよい」
「へ、陛下まで何をふざけたことを……!」
陛下は真顔になって言った。
「ふざけてなどおらぬ。ラジアルか父のほうが国王にふさわしいという意見が多数を占めるなら、余はその結果を受け入れ、王位を譲ろう。そうして選ばれた国王になら、そなたたちも異論はあるまい。友好国も、我が国の国王に誰が選ばれるか、非常に気になるところであろう。我が国の貴族たちが誰を国王に選ぶか、注目しているがいい」
一部は文句を言い続けたけど、貴族たちの多くが押し黙った。賢明な人には先手を打たれたってわかるんだろうね。不意打ちの国王選定。友好国の代表たちというギャラリーあり。他の貴族と共謀して派閥を作る時間はないし、選定を見守る重要人物もたくさんいる。ふさわしくない人を国王にふさわしいと言えば、自身の評価を落とすことになる。つまり、誰もが国王と認める人を選ぶしかないっていうわけ。
陛下は背後の侍従に合図する。一度引っ込んだ侍従が案内してきたのは、陛下のご両親だった。
「父も本日の催しに招待した。選ぶにしても、見比べられたほうがよかろうと思ってな。これに納得できない者は、催しが終わってから文句を言いに来るといい。今は友好国の王子王女たちと親交を深めるための時だ。宗主国の貴族として恥ずかしくない態度で彼らをもてなしつつ、我が婚約者舞花の趣向を凝らしたゲームを楽しんでもらいたい」
これが開催のあいさつとなった。友好国の王子王女たちから拍手が起こって、ディオファーンの貴族たちもそれに倣わざるを得なくなる。
不満を残しつつも会場内は落ち着いてきたので、あたしは紙を巻いて作った即席メガホンを使って、ゲームのルール説明を始めた。
ヘマータサマたちと別れてすぐ、五十代くらいのディオファーンの貴族が面と向かって言ってきた。
「舞花様、そちらのお方の素性をお聞かせ願いたい」
うーん、どうごまかそうかな。なんて考えていたら、背後からあたしに代わって答える声が聞こえた。
「ラジアル・フェルミオン、余の弟である」
あーあ、言っちゃった。もうしばらくはぐらかしておきたかったんだけど。でもまあ、嘘を言えなければはぐらかすこともできないのが陛下のいいところだもんね。何とか収拾つけましょう。
ざわめきがひときわ大きくなった。
「弟ということは、やはり陛下のお父上は生きておいでで……!?」
「陛下は──いえ、前国王陛下は我々を騙したのですか!?」
「ソルバイト陛下はそれをご存じで今まで黙っておられたのですか!? だったとしたら、何故今まで我らをあざむいてこられたのですか!? 王家は我々貴族を何だと思っているのですか!?」
陛下に非難が集中しはじめる。主に騒いでいるのは五十代以上。二十二年前の次期国王を巡る争いに関わっていたと思われる人たちだ。やれやれ。自分たちのしたことを棚に上げて。
場が緊迫してくる中、あたしはわざとのんびり言った。
「前国王陛下がソルバイト陛下のお父上を亡くなったことにしたのは、仕方のないことだったとあたしは思うんですけど。誰が次期国王陛下にふさわしいかで貴族のみなさんが争って、国が分裂しかけたそうですから」
数人の貴族が口ごもる中、一人が憤慨して言ってきた。
「舞花様、口を挟まないでいただきたい。陛下の婚約者とはいえ、ディオファーンの貴族でないどころかこの世界の人間でもないのですから」
「あたしもそう思ってました。部外者が口を出すべきじゃないって。でも、あたしは関係ないって自分に言い聞かせるのも限界だったんです。ディオファーンのことを思って身を引こうとした方が、どうして表向き死んだことにされて軟禁生活を送らなくてはならないんです? その方のお子として生まれただけのラジアル様が、何故存在しない者として扱われなければならないんです? それもこれも、ディオファーンを混乱に陥れようとしたあなた方貴族のせいでしょう?」
「失敬な! 我々はディオファーンの存続と発展を願って」
あたしは怒鳴り声をさえぎれるよう声を張り上げた。
「だった何故、次期国王には誰がふさわしいかと言い出して、王家を無視して争いを始めたんです!? その争いが、当時幼かったソルバイト陛下から両親を奪ってしまったことに、心を痛めた方はいらっしゃらないんですか!?」
「う、奪ってなどいない! 現に、ソルバイト陛下のご両親はご存命だというではないか!」
あたしは深呼吸して、気を落ち着けた。
「死んだも同然だったんです。ソルバイト陛下は、即位するまでご両親が生きておられるとは知らなかったんですから。それに、生きているとわかったからといって、再会して会えなかった歳月を埋められたわけではありません。こう聞いても、王子派と王孫派に分かれて争ったことに罪悪感を抱かないんですか?」
「無礼な!! 我が国と関わりのないよそ者のくせに!」
「そのよそ者の方が、よっぽどかディオファーンのことを考えてます。先ほどから怒鳴り声を上げているあなた、国賓の皆様方を前にそのように騒いだら、あなたご自身だけでなくディオファーンの恥にもなると思うんですけど」
貴族の男性は、はっとして辺りを見回し、顔を赤くする。
「おっ、おまえが先に始めたことではないかっ! ラジアル様をこの場にお連れしたのはおまえであろう!?」
「ラジアル様を今日の催しに招待するよう勧めたのはあたしですが、実際に招待したのは陛下です」
貴族たちの視線が、あたしの後ろにいる陛下に集まる。陛下はあたしの横に並ぶと、貴族たちだけでなく王子王女方も見渡して悠然と話し始めた。
「舞花が言ったのだ。誰が国王になるべきかに口を出したい者が大勢いるなら、いっそみなに選んでもらったらどうかと」
大広間がざわめきで騒々しくなる。その中でもよく響く声で、陛下は話を続けた。
「余と父と弟を見比べて、誰を国王と仰ぎたいか選ぶとよい」
「へ、陛下まで何をふざけたことを……!」
陛下は真顔になって言った。
「ふざけてなどおらぬ。ラジアルか父のほうが国王にふさわしいという意見が多数を占めるなら、余はその結果を受け入れ、王位を譲ろう。そうして選ばれた国王になら、そなたたちも異論はあるまい。友好国も、我が国の国王に誰が選ばれるか、非常に気になるところであろう。我が国の貴族たちが誰を国王に選ぶか、注目しているがいい」
一部は文句を言い続けたけど、貴族たちの多くが押し黙った。賢明な人には先手を打たれたってわかるんだろうね。不意打ちの国王選定。友好国の代表たちというギャラリーあり。他の貴族と共謀して派閥を作る時間はないし、選定を見守る重要人物もたくさんいる。ふさわしくない人を国王にふさわしいと言えば、自身の評価を落とすことになる。つまり、誰もが国王と認める人を選ぶしかないっていうわけ。
陛下は背後の侍従に合図する。一度引っ込んだ侍従が案内してきたのは、陛下のご両親だった。
「父も本日の催しに招待した。選ぶにしても、見比べられたほうがよかろうと思ってな。これに納得できない者は、催しが終わってから文句を言いに来るといい。今は友好国の王子王女たちと親交を深めるための時だ。宗主国の貴族として恥ずかしくない態度で彼らをもてなしつつ、我が婚約者舞花の趣向を凝らしたゲームを楽しんでもらいたい」
これが開催のあいさつとなった。友好国の王子王女たちから拍手が起こって、ディオファーンの貴族たちもそれに倣わざるを得なくなる。
不満を残しつつも会場内は落ち着いてきたので、あたしは紙を巻いて作った即席メガホンを使って、ゲームのルール説明を始めた。
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