小悪魔な女神とウブなヤンキー少年の恋物語

神野愛輝生

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恋の赤い糸と不良達との友情

別れと

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懐かしいルートをチームの後方集団で走っていると交差点を過ぎた所で後ろから大きな集団が勢い良く近づいてきた。

荒川連合だ。

次々とヘッドライトが流星の様に駆け抜け次第に赤いテールランプがゆらゆらと漂浪精霊の様に流れ込み川の流れが大きく膨らんでいく。

今まで経験したことのない規模だ。

見慣れた俺らチームの各支部の旗に見慣れ無い模様の荒川連合の旗が交わり、まるでオリンピックの開会式の様な団結の決意を醸し出している。

大きな幹線道路を大らかに流れていくこの集団は近い感性や価値観を持ちながらも過去の歴史の中闘ってきた。

闘わなければならない敵として定められていたから闘い、そこで傷を負って憎しみが生まれて心底敵対していく。

そもそもの定めは縄張りを守る事。

境界線は町で区切られ取り合う訳では無く、互いに認め合えば争う事など無いのだ。

闘う相手はもっともっと強大でしたたかな権力者達だ。

国家では一部の権力者達が自分達の都合で様々な大義を並べて都合の良いルールをつくる。

世界では独裁者達が国民の命をまるで虫ケラの様に軽く扱い多くの人達が命を落としている。

そんな理不尽な世の中に正しい手段とは言い難いながらも、その葛藤を打破したいともがく少年達が手を結び力をつけていく。

この違法集団が世を正す事は出来ずとも、ここで得る様々な経験や感覚はその後に社会に飛び立つ若者にとって貴重な財産となり強い信念に繋がる様に思える。

この解散式で今迄争って来た敵と手を結び大切な何かを守る本質を見つめ直す事が経験と成れば、より強い信念を育ててくれるのではないだろうか。

大きな集団の流れは一台一台が挨拶を重ねて行く様に内部でぐるぐると交差し笑みを浮かべる者、親指を立てて喜びを表現する者、二本指で敬礼してくる者と交互に顔見せしている。

俺らも先頭集団に交わり顔見せしていると以前逃した中学生が大きな体格に変貌し近寄ってきた。

俺の事に気がつくと「お久しぶりです」と大きな声で挨拶をしてきた。

「おー!久しぶり」と返すも相手は今や荒川連合の総長。
心の中で「です」と語尾を付け加えてしまう程の威圧感だ。

「本当にあの時は助けて貰って感謝しています」
ピッタリと単車を寄せて爆音ながらもハッキリと会話が出来る距離を楽々と保っている、かなりの腕だ。

「いやぁ俺は大した事してないよ」
と流してみるものの実際は彼等にとって感謝される行為が仲間を裏切り大きなリスクを伴う事に陥った事実は変えられず後ろめたい行為なのだから正直言えば触れられたく無い出来事である。

しかも光輝の前で感謝されてしまう事がより後ろめたさを感じてしまっていた。

「中々出来る行為じゃないですよ!凄い勇気の有る行動だったと思います、本当に有難うございました!」
そう言って単車を走らせながら深々と頭を下げるとアクセルを開けて先頭に戻って行った。

勇気なんて…
ただ後先考えずに感情に流されて取った行動に過ぎないのに。

臆病な俺がその後の事態を想像していたならきっと出来なかったに違いない。
複雑な気持ちだった。

「アキオ、凄えな!」
半身を振り返り光輝が言った。

何が凄いのだろう。。

「あれだけ昔から敵対していた荒川連合の頭にすっかりリスペクトされてるじゃないか」

「そんなのたまたまこうなっただけで実際は仲間に凄い迷惑を掛けてしまった行為なんだから褒められる事じゃ無いよ」
俺は本心を伝えた。

「確かにあの時はなんて事しでかしたんだと焦ったけどな」
ゲラゲラと光輝が笑い飛ばしながら言ってくれた。

「でも結果、荒川連合と手を結び東京では間違いなく最大勢力になったんだ、その事で俺らの後輩達も無駄な争いをしなくて済む様になったんだからプラマイ考えてもかなりの成果だよ!」

「でも成也に申し訳無さすぎて喜べないよ」

「そりゃそうだ」
またもや光輝はゲラゲラと笑い飛ばしてくれた。

「でも成也も今回の事は俺が攫われたから結果実った事だと鼻高々だったぞ」

「そうなんだ!」
俺は胸に抱えるモヤモヤが吹き飛んでいった。

「まぁ終わりよければ全て良し!アキオは胸を張ってこの結果を受け止めればいいんだよ!」
追い討ちをかける様に光輝が言ってくれた。

「ありがとう」
俺は涙を浮かべながら光輝の背中を見つめ皆んなとの思い出を思い返した。

大規模な解散式は警察に横槍を入れられる事もなく無事に幕を閉じた。

「アキオ、これからも自分の気持ちに正直に行動に移して過去からの縛りに囚われず改革していけよ!」
最後に青山先輩と固い握手を交わして地元に帰った。

地元に戻ると改めて光輝、文也、成也の現役引退メンバーと宮地、和人の既に引退しているメンバー、早瀬、橋田の後を継ぐメンバー、そしてあの事件以来久々に再会した菊池と朝まで懐かしい話に花が咲いた。

菊池もあれから一年遅れで定時制に入学し高校生活を何とか平穏に過ごしているらしい。

かなり自分を抑えながら生活しているらしく今回はストレス発散にもなったのかやけに楽しそうに興奮して色々と話してくれた。

菊池の家族は当然俺らの事を否定して色々と悪口を言っていたそうだが息子が命の危険に晒されたのは間違いなくこの環境のせいなのだから当然だろう。

ただ菊池は俺らの悪口を言われる事が耐えられなかったらしい。
結局定時制に通いながら住み込みの仕事を見つけて一人暮らしもしているらしい。

俺よりもかなりストイックで信念を貫き通せる奴だと後輩ながらも尊敬をした。

きっと俺にとってもこの仲間達との出会いと経験は人生で大きな価値を生み出してくれるのだろうと直感的に感じていた。

朝日が昇る頃、後ろ髪を引かれる思いで解散となった。

「ただ光輝からはこれから自由に連めるから宜しくな!」
と言って貰い、心を躍らせてもいた。

次の日、みゆきに電話をしてみた。
ホワイトデーの埋め合わせをするためだ。

するとみゆきからは学校の補習と課題に追われて暫く会う時間が無いと言われてしまった。

俺は少し不安を抱えながらも無理強いする事なくみゆきからの連絡を待つ事にした。

気怠さを残しながら仕事に行き黙々とコーキングの作業をしていると若いスーツ姿の男と恰幅の良いいかにもお偉いさんという感じの二人が近づいてきた。

若い男はお偉いさんに気に入られ様と手揉みをする様に前屈みになりニコニコと話をしている。

すると俺の前を横切ろうとした時、お偉いさんが工具箱を蹴飛ばした。

「ガシャーン」と大きな音を立てて工具がバラバラに散ると若い男がいきなり「何やってるんだ!」と俺の肩を掴んできた。

ムカっときて腕を払い除け立ち上がり相手の顔の前に睨みを効かして文句を言った。

「テメー等が前をろくに見ないでぶつかったんだろうが」
すると若僧は「誰に口聞いてるんだ?お前クビにするぞ!」と捲し立ててきた。

「別にお前に雇われているわけじゃ無えよ」と言うと「上司連れて来い」と更に捲し立ててきた。

するとお偉いさんが「もういいから行くぞ」と言うと若僧は「このままじゃ済まないからな!」と捨て台詞を言って去って行った。

俺はバラバラに散った工具を箱に戻し再び黙々と作業を始めた。
何なんだあのスーツ組は、とイラつきは絶頂であったが。。

昼休みになり休憩場所に戻るとさっきの若僧に俺の会社の上司が怒られていた。

「あっこのクソガキが大迷惑かけてくれたんだよ、どうしてくれるんだ」
と相変わらず捲し立てている。

「しっかり注意して気をつけさせますから」
上司は必死に頭を下げて縋り付いている。

「そう言う本人が全然悪気無い感じだぞ」
俺を悪意たっぷりに若僧は指を差した。

「何言ってんだ、そっちの不注意で勝手にぶつかってきたんだろ」
俺が正論をぶつけると若僧は更に逆ギレして「こいつが土下座しない限り許さんぞ、場合によっては取引停止だ」

若僧は更に怒り撒いた。

上司は俺の頭を押さえつけて無理矢理頭を下げさそうとしたが俺は腕を振り払い「ふざけんな!」と言ってその場を去った。

そして翌日クビに成り給料も支払わないと会社から通告された。

なんて理不尽な世の中だ。
俺は怒りと悔しさで涙が溢れてきた。

怒り疲れたその週末に更なる不運が訪れた。

いや、これは自ら撒いた代償だった。

仕事をクビに成り怒り心頭の中、夜間の学校は何とか通い精神的に疲れ果てて家に帰ると窓ガラスに小石が当たった。

外に出てみるとそこにはみゆきが立っていた。

深妙な顔をしているみゆきを見て嫌な予感が走った。

「久しぶり、アキオ」

「お、おぅ」
明らかにおかしな対応をしてしまう。

「どうしたの?遅い時間に家大丈夫?」
俺は必死に普通を装う。

「大丈夫」
みゆきは余計な言葉は付け加えずシンプルな回答が返ってくる。

「そっか。」
更に俺は普通を装ってみる。

「あのね、アキオ」
みゆきは何かを決意した顔で俺の目を見つめてくる。

「うん」
俺は一語一句聞き逃さない姿勢で聞き入る。

「すっごく、すっごく考えたの」

「うん」

「アキオと付き合ってね、楽しいこと沢山あったよ」

「ホント!俺もだよ」
いきなり別れを切り出されるのかと思ったが違う方向に話が向かう。

「いっつも一生懸命なアキオといると凄く力を貰うの」

「何言ってんだよ、俺の方がみゆきに力を貰っているから頑張れるんだよ」
俺は心の底から本心で伝えた。

「だからね、ずっと一緒に居れば苦しい事も悲しいことも乗り切れると思ったの」

「たの?過去形…」
再び嫌な予感がしてくる。

「でもね、アキオとのすれ違いや思い違いがすっごく苦しいの」

「ごめん、それは俺が全面的に悪いと思う」
俺は真摯に謝りたいと感じた。

「アキオ、謝らないで!」
みゆきは涙を浮かべ始めた。

「私が弱いの!そしてズルい」

「何言ってんだよ」
俺はどうにかなだめようと必死になる。

「とにかく聞いて!」
その言葉に俺は沈黙をした。

「アキオと一緒にいる時は凄く楽しいし幸せも感じたけど離れると不安のせいか、本当にこのままアキオとずっと一緒に居るのが幸せなのか分からなくなるの」

ずっと一緒いるのが幸せか分からない…
心臓をエグる様な言葉だった。

「正直言うと不安な時に友達や他の男友達にも助けられてもっと成長しなければと思うのと同時にもっともっと色々な人と出会って沢山の経験を積みたいとも思ったの」

色々な人と沢山の経験を積みたい…

俺はアッパーカットを食らってノックアウト寸前だ。

俺は必死に耐える。
「出会えば良いし経験も積めば良いよ!」
取り敢えず俺はみゆきの攻撃を交わそうと必死で訴える。

「それは無理だと思う、他の男性とも付き合ってみたいと思ってしまう時がくるかもしれないから。。」

追い討ちの左フックで更にノックダウン寸前だ。

「そう言う人が出来たら考えれば良いよ」
俺は何を言ってるんだ、流石にそんな不安を抱えて付き合うなんて無理だろ。

「アキオも私に気を使う感じが自分らしさを無くしている感じがするの」

俺の話にすり替えないでくれ!
分かったよ、もうトドメを刺してくれ。
と念じた瞬間

「だからね、

 友達に戻って下さい」

肩を震わせ大粒の涙を流しながらみゆきの右ストレートが直撃し俺はマットに沈んだ。

そして俺とみゆき、いや多部さんとは友達という関係に戻る事になった。

ただもう会うキッカケが無い中、実際は友達という関係の維持も難しい。

仕事と恋人を失った俺は新たな日常を探さなければならなかった。

生きていても何もいい事なんて無い…
そんな気持ちに陥った時、家の電話が鳴った。

光輝からだった。
引退した光輝達は仲間として再び受け入れてくれてどん底の俺を救ってくれた。

雨降って地固まる。
まさに家族の様な信頼関係が生まれてきた。

腐っていても仕方が無い!
俺は仲間の為にも何かを守れる様にもっともっと強くなりたいと決意した。

光輝達が教えてくれた事、人は自分の為だけに生きていると人生を見失い時には生きる意味さえ失ってしまう。

だけど守る人がいれば必死に生きて乗り切ろうと背中を押してくれる。
それが持ちつ持たれつなのが人なのだろう。

そしてみゆきが教えてくれた事、大切な人を守るという事はそんなに簡単な事では無い。

時には誰かを守り誰かを見捨てる選択に立たされる事もある。

それを出来る限り避ける為にはとにかく強くなるしか無い。

社会的にも身体的にもまだまだ未熟な俺は一歩一歩成長し力を蓄え、より多くの人のタメになる生き方をしたい。

そんな決意を持たしてくれた仲間達と恋人に感謝をしよう。

そして俺は初夏を迎える眩しい時空の扉を勢いよく開けて飛び立って行った。
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