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第四章:謝罪編
037:逆恨
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「……お?」
「ひ、ひひひひひ……!」
今何が起こった?
普通に宿に向けて歩いてたら……何か女が飛び出してきて、ぶつかって、何かが刺さって……あぁ。
俺、今刺されてるのか。
「きーーーきゃあああああああああ!?」
「神様ーーー!?」
俺が腹に刺さってる刃物に……なんか見覚えがある意匠の短刀に気づくと、俺の隣に回ってきたアリア達が騒ぎ出した。
うるせぇな……たかが刺されたぐらいで騒ぎやがって。
つーかシェスカ、お前そんな慌ててる割にはルルの目を塞ぐの忘れないのな。ありがたいけどよ。
「……そんでおたく、何してくれてんの? てか、誰?」
「あは、あはははははは!! やった、やってやったわ! 最高の気分だわあはははは!!」
急に俺を刺してきた女に聞いてみるけど、げらげらと狂ったように笑うだけで話にならねぇ。
そんで誰なわけ? 顔はこけてるし目は血走ってるし、格好は汚れまくってるし襤褸襤褸だし、こんな知り合いがいた覚えないんだけど。
何? 俺になんか恨みでもあった? あんたに見覚えなんて……ほんのちょっぴりしかないんだけど、本当に誰なの?
「何だこの女! 危ねぇぞ!」
「取り押さえろ! ラグナから引き剥がせ!!」
「あははははは……もう無駄よ! 無駄! その屑はもう助からない! 呪いの報いを受けた! 私をこんな目に遭わせた事を後悔して死ぬのよ! あーっははははは!!」
笑い転げる女を、周りにいた連中が戸惑いながらも取っ捕まえて、地面に押し倒す。本人も全然抵抗しなかったからあっさり捕まったな。
それでも笑うのをやめない女に、捕まえた連中がかなり引いてるのが見える……気持ち悪ぅ。
しかし、なんか滅茶苦茶恨まれてるな……あー、でもおかげでちょっとずつ思い出せてきた気がする。
確か冒険者組合で……受付やってなかったっけ?
そうだそうだ。あんまり顔を見た事ない新人ちゃんだったな……あぁ、そうだ。
勝手に俺を毛嫌いして、口座を封じた上に冒険者登録を抹消したんだったか。流石に腹が立ったもんで忘れてたわ。
「あ、あんた! しっかりして! 死んじゃいやよ、嫌ぁ!!」
「無駄だって言ってんじゃない! そいつは死ぬ! ただ死ぬんじゃないわ、呪われて永遠に苦しみながら終わるのよ! あひゃはははは!!」
「しゃべるな、こいつめ!」
「縛り上げろ!!」
俺がようやく相手の女のことを思い出してすっきりしてる間に、アリアが泣きながら俺の腹に手を当ててくる。
ちょ、やめて。そんなに強く押されるとさっき食った分が出てくるから、とんでもない事になるから。
……おっと、刺さってた短刀が抜けた。
ていうかこの意匠、やっぱ見覚えがあるんだよな……どこで見たんだっけ?
「無駄だって言ってんでしょぉ!? その短刀はねぇ、呪いの武器なの! 刺さった者に凄まじい苦しみを与えて必ず殺す最悪の凶器なの! あんたに復讐する為にね、必死になって探してきたの! どう? 苦しい? 苦しいでしょう、この屑野郎!!」
「……復讐って、俺を追い出したのあんたじゃん」
「煩いのよぉ!! あんたの所為で、私まで組合を追い出されて路頭を迷う羽目になったのよ! 死んで責任を取りなさい! あはははは!!」
うっわ、完全な逆恨みだわこれ……あの阿呆にばっか気を回してた所為で想像だにしなかったな。
……どうしよう、この状況。
新人ちゃん……いや、元新人ちゃんは完全に俺が死んだ感じで満足げに笑ってるし、押さえつけてくれてる奴らも焦りまくってるし、アリアは真っ青な顔で縋り付いてるし、シェスカはルルの目を塞いだまま絶望の表情になってるし。
俺、全然平気なんだけど。
「あんたみたいな屑が存在してる所為で、私達みんなが不幸になるのよ! さっさと死んで、絶望して、私の気を晴らさせなさい! あははははははーーーは?」
ずーっと小道良さそうに笑ってた元新人ちゃんだったが……次第に笑いが収まって、困惑の視線を向け始めた。
気づいちゃった?
俺が倒れもせず苦しみもせず、全く死ぬ様子を見せてない事に。
「……何でよ、何で死んでないのよ……!? 死ぬはずよ、尋常じゃない苦しみの中で死ぬはずよ!? そういう武器だって、ちゃんと試したのに! 何で死んでないのよ!?」
「あちゃー、巻き込まれた奴がいるのか。後で買った場所を確認しとかないと」
平然としてる俺に、アリアもシェスカもぽかんと呆けた顔を見せる。アリアなんか、涙と鼻水で顔中ぐちゃぐちゃになったままなんだが。
はぁ……と溜息をつき、俺は足元に転がった短刀を拾って、新人ちゃんの前に突きつけた。
「俺がかけた【呪い】が、俺に効くわけないじゃない。作ったやつの名前くらい調べてから使いなよ、お馬鹿さん」
「は……?」
「あと、この短刀にかけた【呪い】は苦しんで死ぬもんじゃなくて、呼吸器の機能だけを殺して窒息死させるって内容だからね? 昔の失敗作を持ってこられても恥ずかしいだけなのよ、悪いんだけど」
ずいぶん前に作って、要望と違ったから捨てたもんだったんだが……どっからどう流れてきたのやら。
もしかして俺の昔の失敗作、全部怪しい店に怪しい商品として流通してる? そりゃちょっと面倒だな。
「失敗……作……?」
「とりあえず、毛程も効いてないけど刺されたのは事実だから、騎士団あたりに突き出しておくわ。あとでこれをどこで手に入れたかとか聞かせてもらうから、覚悟しといてね。……連れてっといてくれる?」
「お、おぅ」
「わ、わかった」
女を押さえつけてる奴らに頼んで、連行していってもらう。
手伝ってくれる奴がいるとありがたいねぇ……俺はこっちで固まったままのアリア達をどうにかせにゃならんから本当にありがたい。
色々問い質されんだろうなぁ……教えてやらんと煩そうだ。気が滅入る。
しかしまぁ、俺を追い出したりしなきゃ、こんな事にならなかっただろうに……憐れだねぇ。
「ひ、ひひひひひ……!」
今何が起こった?
普通に宿に向けて歩いてたら……何か女が飛び出してきて、ぶつかって、何かが刺さって……あぁ。
俺、今刺されてるのか。
「きーーーきゃあああああああああ!?」
「神様ーーー!?」
俺が腹に刺さってる刃物に……なんか見覚えがある意匠の短刀に気づくと、俺の隣に回ってきたアリア達が騒ぎ出した。
うるせぇな……たかが刺されたぐらいで騒ぎやがって。
つーかシェスカ、お前そんな慌ててる割にはルルの目を塞ぐの忘れないのな。ありがたいけどよ。
「……そんでおたく、何してくれてんの? てか、誰?」
「あは、あはははははは!! やった、やってやったわ! 最高の気分だわあはははは!!」
急に俺を刺してきた女に聞いてみるけど、げらげらと狂ったように笑うだけで話にならねぇ。
そんで誰なわけ? 顔はこけてるし目は血走ってるし、格好は汚れまくってるし襤褸襤褸だし、こんな知り合いがいた覚えないんだけど。
何? 俺になんか恨みでもあった? あんたに見覚えなんて……ほんのちょっぴりしかないんだけど、本当に誰なの?
「何だこの女! 危ねぇぞ!」
「取り押さえろ! ラグナから引き剥がせ!!」
「あははははは……もう無駄よ! 無駄! その屑はもう助からない! 呪いの報いを受けた! 私をこんな目に遭わせた事を後悔して死ぬのよ! あーっははははは!!」
笑い転げる女を、周りにいた連中が戸惑いながらも取っ捕まえて、地面に押し倒す。本人も全然抵抗しなかったからあっさり捕まったな。
それでも笑うのをやめない女に、捕まえた連中がかなり引いてるのが見える……気持ち悪ぅ。
しかし、なんか滅茶苦茶恨まれてるな……あー、でもおかげでちょっとずつ思い出せてきた気がする。
確か冒険者組合で……受付やってなかったっけ?
そうだそうだ。あんまり顔を見た事ない新人ちゃんだったな……あぁ、そうだ。
勝手に俺を毛嫌いして、口座を封じた上に冒険者登録を抹消したんだったか。流石に腹が立ったもんで忘れてたわ。
「あ、あんた! しっかりして! 死んじゃいやよ、嫌ぁ!!」
「無駄だって言ってんじゃない! そいつは死ぬ! ただ死ぬんじゃないわ、呪われて永遠に苦しみながら終わるのよ! あひゃはははは!!」
「しゃべるな、こいつめ!」
「縛り上げろ!!」
俺がようやく相手の女のことを思い出してすっきりしてる間に、アリアが泣きながら俺の腹に手を当ててくる。
ちょ、やめて。そんなに強く押されるとさっき食った分が出てくるから、とんでもない事になるから。
……おっと、刺さってた短刀が抜けた。
ていうかこの意匠、やっぱ見覚えがあるんだよな……どこで見たんだっけ?
「無駄だって言ってんでしょぉ!? その短刀はねぇ、呪いの武器なの! 刺さった者に凄まじい苦しみを与えて必ず殺す最悪の凶器なの! あんたに復讐する為にね、必死になって探してきたの! どう? 苦しい? 苦しいでしょう、この屑野郎!!」
「……復讐って、俺を追い出したのあんたじゃん」
「煩いのよぉ!! あんたの所為で、私まで組合を追い出されて路頭を迷う羽目になったのよ! 死んで責任を取りなさい! あはははは!!」
うっわ、完全な逆恨みだわこれ……あの阿呆にばっか気を回してた所為で想像だにしなかったな。
……どうしよう、この状況。
新人ちゃん……いや、元新人ちゃんは完全に俺が死んだ感じで満足げに笑ってるし、押さえつけてくれてる奴らも焦りまくってるし、アリアは真っ青な顔で縋り付いてるし、シェスカはルルの目を塞いだまま絶望の表情になってるし。
俺、全然平気なんだけど。
「あんたみたいな屑が存在してる所為で、私達みんなが不幸になるのよ! さっさと死んで、絶望して、私の気を晴らさせなさい! あははははははーーーは?」
ずーっと小道良さそうに笑ってた元新人ちゃんだったが……次第に笑いが収まって、困惑の視線を向け始めた。
気づいちゃった?
俺が倒れもせず苦しみもせず、全く死ぬ様子を見せてない事に。
「……何でよ、何で死んでないのよ……!? 死ぬはずよ、尋常じゃない苦しみの中で死ぬはずよ!? そういう武器だって、ちゃんと試したのに! 何で死んでないのよ!?」
「あちゃー、巻き込まれた奴がいるのか。後で買った場所を確認しとかないと」
平然としてる俺に、アリアもシェスカもぽかんと呆けた顔を見せる。アリアなんか、涙と鼻水で顔中ぐちゃぐちゃになったままなんだが。
はぁ……と溜息をつき、俺は足元に転がった短刀を拾って、新人ちゃんの前に突きつけた。
「俺がかけた【呪い】が、俺に効くわけないじゃない。作ったやつの名前くらい調べてから使いなよ、お馬鹿さん」
「は……?」
「あと、この短刀にかけた【呪い】は苦しんで死ぬもんじゃなくて、呼吸器の機能だけを殺して窒息死させるって内容だからね? 昔の失敗作を持ってこられても恥ずかしいだけなのよ、悪いんだけど」
ずいぶん前に作って、要望と違ったから捨てたもんだったんだが……どっからどう流れてきたのやら。
もしかして俺の昔の失敗作、全部怪しい店に怪しい商品として流通してる? そりゃちょっと面倒だな。
「失敗……作……?」
「とりあえず、毛程も効いてないけど刺されたのは事実だから、騎士団あたりに突き出しておくわ。あとでこれをどこで手に入れたかとか聞かせてもらうから、覚悟しといてね。……連れてっといてくれる?」
「お、おぅ」
「わ、わかった」
女を押さえつけてる奴らに頼んで、連行していってもらう。
手伝ってくれる奴がいるとありがたいねぇ……俺はこっちで固まったままのアリア達をどうにかせにゃならんから本当にありがたい。
色々問い質されんだろうなぁ……教えてやらんと煩そうだ。気が滅入る。
しかしまぁ、俺を追い出したりしなきゃ、こんな事にならなかっただろうに……憐れだねぇ。
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