12 / 49
第二章:出会編
010:醜癖
しおりを挟む
「こちらでございます」
ギルバートに連れられて、俺が向かったまた別の檻の中には……妙な姿をした女の餓鬼が三人いた。
「……ふっ、うっ……」
「ふーっ……ふーっ…!」
「うー……?」
三人とも、俺が近づくと怯えたり威嚇したり首を傾げたりしてくる。ざっと状態を見てみて、俺は思わず引いてしまう。
一人は一桁くらいのちびなんだが……身体つきに比べて矢鱈と乳がでかい。顔とか背丈は相応なんだが、乳だけ不相応過ぎた。
別の餓鬼は人の体に獣の耳と尻尾が生えていて、その上顔も犬のように長い。他所の大陸に棲まう獣人なる種族かと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。
そんで最後のは見た目は大人なんだが、表情とか佇まいが合っていない。俺を見る目がどこかあどけないというか……状況を全くわかっていない様子に見える。
……なるほど、これは確かに厄介だ。
「こいつら、どこで仕入れてきた?」
「ごく最近逮捕された貴族がおりまして……その男の屋敷の地下に」
「……国が保護したりするもんじゃねぇのか、そういうのは」
「見つかった者の中で、生き残っていた者達です。他は皆死亡しておりました。彼女達も見ての通りですので、あのまま放置していればどこに送られていたか」
笑えねぇ話だ……これだから人間って奴は。
「趣味の悪い【呪術】使ってやがる……【成長阻害】に【部分発育】、こっちは【獣化】でこっちは【急成長】。人間の業って奴は悍ましいな」
「まったく」
どういう経緯で、どこの誰がやったかは知らんが……ずいぶん雑な【呪い】を使って体を変質させられているな。
あの乳のでか過ぎる餓鬼は多分、胸部以外の成長を止める術を使って、人工的に幼女巨乳を生み出そうとしたかだな。気持ちの悪い趣味晒しやがって。
こっちの獣人もどきは猫か犬かの獣と混ぜられたか……その所為で知能にだいぶ弊害が出ているようだな。そういうのと遊ぶ趣味の馬鹿にあちこち弄られたか。
そんであのでかい娘は、見た目は二十代だが中身は五歳程度だな。精神をそのままに体だけ大人にして、無垢で無知な餓鬼で楽しもうと思った屑がいたんだろうなぁ。
……まじで気色悪いわ。
自分の性癖を満たすためにここまでやるか、普通。
「これ、やったやつの目星はついてるのか?」
「はい。すでに騎士が派遣され、飼い主共々摘発されております。ただ呪った本人曰く、『ここまで弄った以上元の姿には戻せない』……と」
自分の手に負えない領域まで滅茶苦茶にしやがったのか……こういう奴がいるから、俺みたいな真っ当な立場の〈呪法師〉が肩身の狭い思いをさせられるんだよ。
さて……そんじゃさっさと終わらせちまうか。
「とりあえず次の依頼は、こいつらの処理でいいのか?」
「はい。最低限使える状態にしていただければ……」
「最低限? おいおい、それは俺が仕事で手を抜くと思っての発言か? ーーー最高の状態にしてやるよ」
俺を挑発してくるギルバートを一瞥してから、俺は檻を開けてもらって中に入る。
中にいた餓鬼共は、俺が近づくとより警戒を強くし、中身が餓鬼の女が乳のでかい女に抱きついて震え、獣人もどきの餓鬼が前に出て唸り声を浴びせてくる。
「ひっ!? こ…殺さないで……!」
「おねえちゃん……こわいぃ……」
「ぐるるるるる…! がぁっ!!」
檻の中にいる間に、仲間意識でも芽生えたか、抱き合う二人はなんとなく互いを庇いあっているし、獣人もどきの餓鬼は二人を背に守っている。
……ここまで体を弄られて、玩具にされてなお、誰かを気遣えるのか、こいつらは。
ーーーていうか、こいつらもしかしなくても俺の事、自分達を弄った三流の〈呪術師〉と同類に見てるよな?
「こんなしょうもない事に【呪術】を使う馬鹿と一緒にするな……おら、大人しくしてろ」
「がるるる……ぎゃんぎゃん! ぎゃうんっ!?」
ぎゃんぎゃん喧しい獣人もどきの顔を掴んで、俺の力を注ぎ込む。
獣人もどきの餓鬼がじたばた暴れている間に、俺の力が餓鬼の体に浸透していき、少しずつ見た目に変化が現れていく。
「ぐ……が、ぁ…!」
「ひぃぅう……!」
「や、やめて! その子にそれ以上酷い事しないで!! か、代わりに私を好きにしていいから!!」
他の餓鬼二人が煩いが、俺は手を止めない。
そうこうしているうちに、獣人もどきの餓鬼も大人しくなってくる。その頃には、餓鬼に施していた作業も終わった。
「ぎゃんっ!?」
「はー、やれやれ……素人のくせにややこしい術使いやがって。これに手を加えんの面倒臭ぇんだよ」
どさっ、と床に倒れこんだ獣人もどきの餓鬼を見下ろし、その成果を確認して。
ーーー獣から人の顔に変わった顔を見下ろして、俺は満足の笑みを浮かべたのだった。
ギルバートに連れられて、俺が向かったまた別の檻の中には……妙な姿をした女の餓鬼が三人いた。
「……ふっ、うっ……」
「ふーっ……ふーっ…!」
「うー……?」
三人とも、俺が近づくと怯えたり威嚇したり首を傾げたりしてくる。ざっと状態を見てみて、俺は思わず引いてしまう。
一人は一桁くらいのちびなんだが……身体つきに比べて矢鱈と乳がでかい。顔とか背丈は相応なんだが、乳だけ不相応過ぎた。
別の餓鬼は人の体に獣の耳と尻尾が生えていて、その上顔も犬のように長い。他所の大陸に棲まう獣人なる種族かと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。
そんで最後のは見た目は大人なんだが、表情とか佇まいが合っていない。俺を見る目がどこかあどけないというか……状況を全くわかっていない様子に見える。
……なるほど、これは確かに厄介だ。
「こいつら、どこで仕入れてきた?」
「ごく最近逮捕された貴族がおりまして……その男の屋敷の地下に」
「……国が保護したりするもんじゃねぇのか、そういうのは」
「見つかった者の中で、生き残っていた者達です。他は皆死亡しておりました。彼女達も見ての通りですので、あのまま放置していればどこに送られていたか」
笑えねぇ話だ……これだから人間って奴は。
「趣味の悪い【呪術】使ってやがる……【成長阻害】に【部分発育】、こっちは【獣化】でこっちは【急成長】。人間の業って奴は悍ましいな」
「まったく」
どういう経緯で、どこの誰がやったかは知らんが……ずいぶん雑な【呪い】を使って体を変質させられているな。
あの乳のでか過ぎる餓鬼は多分、胸部以外の成長を止める術を使って、人工的に幼女巨乳を生み出そうとしたかだな。気持ちの悪い趣味晒しやがって。
こっちの獣人もどきは猫か犬かの獣と混ぜられたか……その所為で知能にだいぶ弊害が出ているようだな。そういうのと遊ぶ趣味の馬鹿にあちこち弄られたか。
そんであのでかい娘は、見た目は二十代だが中身は五歳程度だな。精神をそのままに体だけ大人にして、無垢で無知な餓鬼で楽しもうと思った屑がいたんだろうなぁ。
……まじで気色悪いわ。
自分の性癖を満たすためにここまでやるか、普通。
「これ、やったやつの目星はついてるのか?」
「はい。すでに騎士が派遣され、飼い主共々摘発されております。ただ呪った本人曰く、『ここまで弄った以上元の姿には戻せない』……と」
自分の手に負えない領域まで滅茶苦茶にしやがったのか……こういう奴がいるから、俺みたいな真っ当な立場の〈呪法師〉が肩身の狭い思いをさせられるんだよ。
さて……そんじゃさっさと終わらせちまうか。
「とりあえず次の依頼は、こいつらの処理でいいのか?」
「はい。最低限使える状態にしていただければ……」
「最低限? おいおい、それは俺が仕事で手を抜くと思っての発言か? ーーー最高の状態にしてやるよ」
俺を挑発してくるギルバートを一瞥してから、俺は檻を開けてもらって中に入る。
中にいた餓鬼共は、俺が近づくとより警戒を強くし、中身が餓鬼の女が乳のでかい女に抱きついて震え、獣人もどきの餓鬼が前に出て唸り声を浴びせてくる。
「ひっ!? こ…殺さないで……!」
「おねえちゃん……こわいぃ……」
「ぐるるるるる…! がぁっ!!」
檻の中にいる間に、仲間意識でも芽生えたか、抱き合う二人はなんとなく互いを庇いあっているし、獣人もどきの餓鬼は二人を背に守っている。
……ここまで体を弄られて、玩具にされてなお、誰かを気遣えるのか、こいつらは。
ーーーていうか、こいつらもしかしなくても俺の事、自分達を弄った三流の〈呪術師〉と同類に見てるよな?
「こんなしょうもない事に【呪術】を使う馬鹿と一緒にするな……おら、大人しくしてろ」
「がるるる……ぎゃんぎゃん! ぎゃうんっ!?」
ぎゃんぎゃん喧しい獣人もどきの顔を掴んで、俺の力を注ぎ込む。
獣人もどきの餓鬼がじたばた暴れている間に、俺の力が餓鬼の体に浸透していき、少しずつ見た目に変化が現れていく。
「ぐ……が、ぁ…!」
「ひぃぅう……!」
「や、やめて! その子にそれ以上酷い事しないで!! か、代わりに私を好きにしていいから!!」
他の餓鬼二人が煩いが、俺は手を止めない。
そうこうしているうちに、獣人もどきの餓鬼も大人しくなってくる。その頃には、餓鬼に施していた作業も終わった。
「ぎゃんっ!?」
「はー、やれやれ……素人のくせにややこしい術使いやがって。これに手を加えんの面倒臭ぇんだよ」
どさっ、と床に倒れこんだ獣人もどきの餓鬼を見下ろし、その成果を確認して。
ーーー獣から人の顔に変わった顔を見下ろして、俺は満足の笑みを浮かべたのだった。
0
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる