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第258話 side金谷 出発後 魔法具②
しおりを挟む本当に、見れば見るほど不思議だ。
キューブ型の魔法具は一面にボタンのような物がついているのみで、あとはまっさら。
おそらく、このボタンのような部分に魔石を嵌め込むんだろう。ツメのような物も見られる。
だけど、問題は分解の仕方。
どこをどう触ってもツルツルしていて、感触的にも見た目にも繋ぎ目が一切ないことが不思議で仕方ない。
そもそもこの外側の白いのは石?金属?
石なら削り出したはず。
石なら割るしかないのか?
それとも金属で鋳造した?
鋳造なら、中身を組んでから型でキューブを作って覆ったのか?
ランタンの中身のように歯車やネジのような物があるなら、それは熱に強いのか?
それともキューブを作ってから中に機構を組んだ?
こんなに小さいならどちらも難しいと思う。
外側を割ったら中身もバラバラになる?
どうしたら正解だ?
考えろ考えろ!
……………そうか!
ランタンはスライドさせてた!
ランタンの繋ぎ目は!?
慌てて横に置いたランタンを確認する。
ない!
繋ぎ目ないよ!
ランタンは持ち手があるからスライドの方向がわかるだけだ!
じゃあキューブも繋ぎ目がわからないだけでスライドさせたらイケるはず!
どのくらい時間が経ったのか…
あらゆる方向にいくらスライドさせても分解できる気配無し。
段々イライラしてきた。
なんだよこれふざけんなよ!
直せる直せない以前の問題だ!
どうしろって言うんだよ!
唯一弱そうな部分って言ったらボタン部分だけ。
これ、外せないか?
力任せに押し込んだり引っ張ったり横に押してみたり、机の角に押し付けてみたりを繰り返し続けて…
バキッと音がしてボタンが外れた。
てゆーか割れた。
やった!外れた!!!
ボタンが付いていた部分から中が覗ける!
かと思いきや、ボタンが外れてボタン分の凹みの段差ができただけで中も真っ白。
あ゛~~~も゛~~~!!!
一応段差はできたから全面ツルツルよりは取っ掛かりができた。
ここにマイナスドライバー差し込んで無理矢理こじ開けてやる!
……ドライバーないじゃん!!!
先の尖った物何かないか!?
ペン先?駄目だろすぐ折れる!
鋏?これも駄目だ、紫愛が断られてた。
針?あったとしても絶対すぐ折れる。それにもらえるかどうかもわからない。
部屋を見渡してもそんな物はない。
何かないか!何か!!
あっ……フォークなら…なんとかなるかも。
食事が終わればキッチリ数を数えて回収されるけど、食べ終わるまではロビーに居るのは地球人だけ。
良し!使える!!
キューブは今の段階では手詰まり。
朝食までは何もできない。
けど!魔法具が気になってしょうがない!
多分もう真夜中だけど気になりすぎて眠れる気がしない!
それならもう1回ランタンの中身を見てみよう。
再びランタンの中身と向き合う。
本当は全部の部品外してどこがどう繋がってるのか見たいけど、1度バラしたら組める気がしない。一体何個部品があるんだ?
てゆーか、ピンセットでもなきゃこんな細かいの組めない!無理!
素手で触るのも躊躇われる。
人間の皮脂は機械には良くない。
でも、眺めるだけでも楽しい。
上から、斜めから、隙間から、可能な限り確認してみる。
動くのに魔石が必要なら、魔石は電気の代わりのエネルギーのはず。
なら、魔石は電池の役割り?
それなのに歯車?
配線も見当たらない。
どうやって魔石のエネルギーを取り込んでるんだ?
割れたボタンを確認してもそれらしい物は見当たらない。
分解できるのに組んだら繋ぎ目がなくなるのはどうして??
見えなくなってるだけ?
これも魔法?
いやいや魔石ついてないけど?
コンコンコンコン
誰かが部屋をノックする音がした。
こんな夜中に誰?
「はい。」
扉越しに返事をする。
「豪!ご飯の時間なんだけど!一体いつまで待たせる気!?」
麗の金切り声が聞こえてきた。
え?まさかもう朝!?
左手にボタンを外したキューブを握り締め慌てて部屋を出た。
そんな俺を見て
「ねぇ、まさか寝てないの?顔色最悪なんだけど!」
そんなに酷い?
日本では二徹くらい普通だったんだけど。
そういえばこっちに連れて来られてから暇で睡眠不足ってなかったな。
それより早くフォークが欲しい!
「問題ない。」
それだけ言って急いでみんなが待つ食卓へと向かう。
麗が後ろでブツブツ文句を言ってたけど俺はそれどころじゃない。
みんなが揃い頂きますの言葉と共に食事を始める中、俺は目の前の食事が乗った皿を避け、握り締めていた魔法具を机の上に左手で固定し、右手でフォークを持ち、ボタンがついていた段差目掛けてフォークを振り下ろす。
ガツッ!
びくともしないな。
1回くらいじゃ駄目だよな。
ガツッガツッガツッ!
「ちょっと!!!何やってんのよ!!」
麗に右手を掴まれてしまった。
「邪魔するな。」
振り解こうとするけどこっちは片手、麗は両手。無理だった。
「それ昨日もらった魔法具じゃないの!?何壊そうとしてんのよ!魔法具って貴重なんでしょ!?」
「大丈夫。元から壊れてる。」
「大丈夫なわけあるか!!!」
「分解できないんだからしょうがない。」
「ブッ壊したら怒られるどころじゃないでしょーが!!」
「中見れなきゃ直せない。」
「分解の方法あるかもでしょ!」
「ずっとやってたけど無理。」
「一晩で諦めんな!」
「俺は早く中見たいんだよ!!」
「2人ともストーーーップ!」
麗との言い合いがヒートアップしてきたところで香織さんから待ったがかかった。
「絢音君が怯えているわよ?怖がらせたいわけじゃないわよね?」
絢音君の方を見ると、香織さんにしがみついていた。
やらかした…
魔法具のことしか頭になかった。
「……すみません。」
とりあえず謝る。
「香織さん!だって豪がいきなり魔法具壊そうとするから!」
麗は言い訳をする。
香織さんは絢音君の背中をさすりながら
「そうね。金谷君は私達に何の説明もなく、いきなり魔法具を壊そうとしたのは良くなかったと思うわ。みんな驚いたわよ?ねぇ?優汰君?」
「俺もビックリしたよ!急にフォークでガンガン魔法具刺してさ!金谷さんおかしくなったと思ったじゃん!怖すぎだよ!!」
「ごめん。」
「魔法具は壊しても大丈夫なのかしら?」
「わからない。でも中身確認できなきゃ直せるわけない。」
「そんなに急いで結論を出さなくても良いのではないかしら?」
「……護衛が言ってた。俺達を失うのは惜しいと思わせろ、そう行動しろ、それが俺達の身を守る為だって。川端さんと紫愛もその為に外に行った。あの護衛は地球人に対して寛大だ。でもここの奴らは全員がそうじゃない。いくら好きに研究しろって言ったって結果が出なきゃ魔物と戦わせるに決まってる。俺は結果を出さなきゃならない。魔法具が駄目ならまた1から探さないといけない。焦るのは当然。」
俺が結果を出さなきゃ麗だって結果を残せない。
隣で人間が殺されるのを横目に魔物と戦うなんて俺には絶対無理だ。
「……そうね。金谷君がそこまで流暢に話すほど考えてるなんて思わなかったわ。いいわ、その魔法具壊してみましょう。」
「香織さん!?良いの!?」
「麗ちゃん、金谷君の焦る気持ちはここにいる全員の共通の思いだわ。納得のいく結果を最短で得たいんだもの。壊すしかないわ。元から壊れているんだし、もし壊した責任を取れって言われたって、じゃあその方法は?ってなるだけよ。さぁ!やってみて!」
「はい!」
許可は得た。
これで思う存分フォークが使える。
全員が静かに見守る空気に変わり、その中で1人フォークを振り翳す。
ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッバキッ
フォークを繰り返し刺していた段差の1部分にヒビが入り、そのヒビにフォークを捩じ込みテコの原理でこじ開ける。
1部分が開いたらキューブは急にバラバラに崩れた。
ヤバッ!中も完全に壊れた!?
シーンと静まり返るロビー。
恐る恐る崩れたカケラを拾い上げ、目に入ってきた内側の接地面に
フリーズした。
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