11 / 18
サイエンス
種の起源 上・下 (生物)
しおりを挟む
チャールズ・ダーウィン 著
光文社古典新訳文庫
生物が自然淘汰を通して、始原生物から様々な生物へと分岐していった、という生物進化の概念を世界中に広げた有名な書。
「自然淘汰」も「進化」と言う言葉も、元々は社会学分野での用語であったが、ダーウィンが採り入れて使用したことで、恐らく本家以上に有名になったかもしれない。
今では順序が逆転して、生物学分野の用語を社会学が応用した、と思われているのではないだろうか。実際、私も本書を読むまではそう思っていた。
本書が出版されてから150年経った現在は、メンデルの"遺伝の法則"やDNA の存在など様々な知見を得たが、生物の多様性が自然淘汰にあるという学識は、当時から何も変わっていない。
遺伝によって漸進的に変化しようと突然変異しようと、他と明確に区別される1つの種が認識されるのは、最終的には、常に自然淘汰の選別を受けて整理されてからである、という絶対的に変わらない過程を、ダーウィンはこの種の起源で確立している。
種というのは単独では存在せず、許容される誤差を含む多数から構成されているので、種は1つの生物世界を形作っている。ヒトという種も独自の世界を作りあげている以上、人間の社会にも、自然淘汰の選別は明確に働いている。
言葉の出所は社会学方面でも、実質的な概念を規定し機能を作り上げたのは生物学の分野である。
人文科学と総括りにされる分野でも、種の起源に始まる、ヒトを含めた生物世界の法則を知らないと、人間社会を客観的に観察したり研究したりはできないのではないだろうか。
でないと、根拠もなく人間を特別視したりする盲目に陥るのではないか。他の生物に働く原理を知ることで、人間は宇宙における自身の有り様とその位置を理解することができる。
それは、根拠のない自信に足元を掬われて、人間の理想が、1生物であるに過ぎないという現実に敗れた時、人間が立っている足元の真の姿とその由来を理解していれば、人間は自己を見失って茫然自失したり右往左往したりして破滅的自棄に陥らずに、現実に踏みとどまることができるのではないだろうか。
種の起源は、宇宙が人間に与えている原理を知るために必要な一冊である。当たり前のように迎えている毎日が、本当に当たり前であるために、人は種の起源を読んでおく必要がある。
光文社古典新訳文庫
生物が自然淘汰を通して、始原生物から様々な生物へと分岐していった、という生物進化の概念を世界中に広げた有名な書。
「自然淘汰」も「進化」と言う言葉も、元々は社会学分野での用語であったが、ダーウィンが採り入れて使用したことで、恐らく本家以上に有名になったかもしれない。
今では順序が逆転して、生物学分野の用語を社会学が応用した、と思われているのではないだろうか。実際、私も本書を読むまではそう思っていた。
本書が出版されてから150年経った現在は、メンデルの"遺伝の法則"やDNA の存在など様々な知見を得たが、生物の多様性が自然淘汰にあるという学識は、当時から何も変わっていない。
遺伝によって漸進的に変化しようと突然変異しようと、他と明確に区別される1つの種が認識されるのは、最終的には、常に自然淘汰の選別を受けて整理されてからである、という絶対的に変わらない過程を、ダーウィンはこの種の起源で確立している。
種というのは単独では存在せず、許容される誤差を含む多数から構成されているので、種は1つの生物世界を形作っている。ヒトという種も独自の世界を作りあげている以上、人間の社会にも、自然淘汰の選別は明確に働いている。
言葉の出所は社会学方面でも、実質的な概念を規定し機能を作り上げたのは生物学の分野である。
人文科学と総括りにされる分野でも、種の起源に始まる、ヒトを含めた生物世界の法則を知らないと、人間社会を客観的に観察したり研究したりはできないのではないだろうか。
でないと、根拠もなく人間を特別視したりする盲目に陥るのではないか。他の生物に働く原理を知ることで、人間は宇宙における自身の有り様とその位置を理解することができる。
それは、根拠のない自信に足元を掬われて、人間の理想が、1生物であるに過ぎないという現実に敗れた時、人間が立っている足元の真の姿とその由来を理解していれば、人間は自己を見失って茫然自失したり右往左往したりして破滅的自棄に陥らずに、現実に踏みとどまることができるのではないだろうか。
種の起源は、宇宙が人間に与えている原理を知るために必要な一冊である。当たり前のように迎えている毎日が、本当に当たり前であるために、人は種の起源を読んでおく必要がある。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
発達障害の長男と母としての私
遥彼方
エッセイ・ノンフィクション
発達障害の長男と母としての私の関わり方の記録というか、私なりの子育てについて、語ろうと思います。
ただし、私は専門家でもなんでもありません。
私は私の息子の専門家なだけです。心理学とか、医学の知識もありません。きっと正しくないことも語るでしょう。
うちの子とは症状が違うから、参考になんてならない方も沢山いらっしゃるでしょう。というよりも、症状は一人一人違うのだから、違うのは当たり前です。
ですからあなたは、あなたのお子さんなり、ご家族の方の専門家になって下さい。
願わくば、その切っ掛けになりますよう。
※私の実際の経験と、私の主観をつらつらと書くので、あまり纏まりがないエッセイかもしれません。
2018年現在、長男は中学3年、次男小6年、三男小4年です。
発達障害だと発覚した頃は、長男3歳、次男6カ月、三男はまだ産まれていません。
本作は2017年に、小説家になろうに掲載していたものを転記しました。
こちらでは、2018年10月10日に完結。
人生・にゃん生いろいろ
景綱
エッセイ・ノンフィクション
人と猫のエッセイ短編集。
「はい、私カビが生えました」えええ、なにぃ~。それに猫カビってあるらしい。
気づくとそこに知人の子供が!? 勝手入って来るなんて。猫が勝手に侵入?
惹かれる声ってあるよね。濁声の猫?
子猫がずっとついてきて可愛すぎ。などなど。
ここから、学べることもあるのかも?
「えええ、こんなことがあるのか」と楽しんでくれたらと思い書いてみました。
わが家にいた愛猫、わが家に来る通い猫さんの写真も掲載。
(写真は画像が荒いものもあります。古い写真もあるので)
B型の、B型による、B型に困っている人の為の説明書
メカ
エッセイ・ノンフィクション
「あいつB型っしょ、まじ分からん。」
「やっぱ!?B型でしょ?だと思った。」
「あぁ~、B型ね。」
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
何でもB型で片付けるなよ!?
だが、あえて言おう!B型であると!!
身体を暖めることの重要性
ログ
エッセイ・ノンフィクション
寒さが身体に及ぼす影響は、我々が考える以上に深刻です。人々は日常的に冷えを感じることがあるが、それが健康に与える影響を軽視しがちです。しかし、身体を適切に暖めることは、健康を維持・向上させるために非常に重要な要素となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる