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6章 宇宙を司る株式会社

6-14. 卒業検定

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 翌朝、田町のオフィスへ行くと、シアンが待っていた。若々しいピチピチの肌にくっきりとした目鼻立ち……。なんだかこう、小動物系の可愛さがある。とても宇宙最強の存在には見えないのだが……。

「おはようちゃん! 今日は研修だよ! きゃははは!」
 朝からテンションが高い。
「よろしくお願いします」
「じゃぁ、早速行くよ~!」
 そう言って、シアンは指先をくるくると回した。

 気が付くとそこは真っ白な世界だった。上下左右、何もない真っ白な世界。そこに俺とシアンが浮いていた。
「ここは練習場だよ。まずは、仮想現実世界へのアクセス方法『イマジナリー』について教えるね。最初は呼吸法から」 
 俺は言われるがままに呼吸法を学び、イマジナリーに挑戦していく。基本はマインド・カーネルに行くときの瞑想と同じだ。意識を抑え、心のままの存在となり、深層心理の深い所へ降りていく。違うのはシステムのゲートを呼び出して接続する事だけだ。

 システムと繋がってしまえば後はゲームの世界と同じである。リンゴのデータをダウンロードすればリンゴがポコッと出てくるし、物のデータを書き換えれば超能力のように動かすこともできるし、自分の体のデータを書き換えれば飛んだりワープする事もできる。

 何度か試行錯誤しているうちに、基本はマスターする事が出来た。

「上手い上手い。次に戦い方を教えるねっ!」
「戦い方?」
「相手が管理者だった時の戦い方だね!」
 俺はヌチ・ギの事を思い出した。確かに彼と戦う場合、単純にイマジナリーでデータをいじっているだけでは負けてしまうだろう。
 いい管理者となるためには、ヌチ・ギのような奴にも勝てないとならない。

 戦闘と言っても物理的な攻撃はあまり意味がない。お互い物理攻撃無効をかけてしまうからだ。相手のセキュリティプロテクトをハックして意識にアクセスし、直接思考回路を叩くしかない。
 俺は様々なハッキング手法、ツールを教わった。だが、それぞれ無数の組み合わせがあり、なかなか使いこなすのは難しい。
 シアンは淡々と説明し、俺は必死に実験して理解に努める。時には俺が実験台になってハッキングを受けたりした。

         ◇

 最後にシアンと模擬戦闘の卒業検定。
「ハイ、どこからでもかかっておいで。きゃははは!」
 とても嬉しそうである。

 俺は教わった通り、シアンの身体のデータにアクセスしようと試みる。しかし、次の瞬間、全身に激痛が走った。
「ぐわぁ!」
 もんどり打って転がる俺。アクセスしようとした操作から逆に侵入されてしまったのだ。
「攻撃する瞬間が一番危ないんだよ、きゃははは!」
 すごく楽しそうなシアン。
 俺は頭にきて、データアクセスの精度と速度を高め、フェイントを交えながらシアンを攻撃する。
 しかし……、
「ぎゃぁ!」
 また倒されてしまう。さすが宇宙最強。ヌチ・ギみたいにワナ張って不意を突くくらいしないとこの人には通用しないのではないか?

「ふふふっ、頑張って! ほら」
 そう言うとシアンはピョンと飛び上がり、優雅に弧を描きながら気持ちよさそうに飛び始めた。
 止まっていても難しい相手が高速で移動している。まさに無理ゲー。しかし、この試験に合格できないと管理者にはなれない。そして、なれなかったらうちの星は消されてしまう。責任重大だ。負けじと俺も飛び立つ。

「ふふっ、ここまでおいで~!」
 シアンは急に方向を真上に変え、超高速ですっ飛んで行って、ワープして消えた……。
 唖然あぜんとしていると、背中をバン! と叩かれた。
「目に頼ってちゃダメだよ! きゃははは!」
 そう言いながらまた高速で飛び去って……、消えた。
 俺はジグザグに飛びながら、目をつぶり、大きく息をつくとシアンの動きを感覚でとらえてみた。俺の周りをクルクルと高速で回るシアンがイメージの中に浮かび上がってくる。しかし、これを追撃するのは現実的ではない。とても追いかけきれない。
 そこで、俺はあえてゆっくりと弧を描きながら飛んでシアンにすきを見せた。そして、シアンのしぐさをジーッと観察する。
 次の瞬間、指先が微妙に動いたのを見て、俺は背中方向に一メートルほどワープした。果たして、背中を叩こうとしたシアンが目の前に現れる。俺はシアンをギュッと両手で捕まえて、ハックツールを全部一斉に起動させた……。

「うわぁ!」
 驚くシアン、そして開いたセキュリティホール。俺はその中へと飛び込んだ……。
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