5 / 6
5.蒸発する地球
しおりを挟む
女神様を悪しざまにけなし、頭を吹き飛ばされても死なない司教が自分を殺そうと廃工場を吹き飛ばす。そんな現実感の伴わない事態にソフィーは混乱の極みにあった。
しかし、シアンはそんなソフィーに構わず、叫んだ。
「ちょっと身体借りるよ!」
「へ? 借りるって?」
シアンは自分を包んでいたスカーフからピョンと飛び出すと、ソフィーの胸元に潜り込み、自分をソフィーの胸と融合させると手足を勝手に操作し始めた。
「ちょ、ちょっと!」
驚いたソフィーだったが、シアンは背を丸め、手足に力をこめると、全身を光り輝かせ、
ウガァァァ!
と、咆哮しながら胸を張った。
すると、立ち昇るキノコ雲の中から、頭の吹き飛んだ司教が青白い光を纏いながら飛び出してくる。
「ひぃ!」
おびえるソフィーをそのままに、シアンは両腕を司教に向けてブンブン! と振り、緑色に輝く光の刃を乱射した。鳥の大群のように司教に迫った刃だったが、司教は金色に輝く魔法陣をシールドとして攻撃に耐え、逆に真紅に輝くエネルギー弾を無数放ってくる。
シアンは「きゃははは!」と楽しそうに笑いながら、ジグザグに高速移動し、それらを避けていく。ただ、少し避けそこない、ソフィーの銀髪がジュッと音をたてて焦げる。
ひぃぃぃぃ!
ソフィーは顔面蒼白になって悲鳴を上げた。
「当たらなければどうということは無いよ!」
うれしそうなシアンだったが、
「髪に当たってるわよ!」
と、ソフィーは抗議する。
外れた弾は次々と地面に落ち、ズズズズン! と麦畑のあちこちで大爆発を起こした。まるで空爆を受けたかのように麦畑は燃え上がり、煙がもうもうと立ち込める。さらに一部は王都にも着弾していく。城壁は吹き飛び、石造りの建物は崩壊し、火の手が上がった。
「なんだお前! 顔だけか!」
司教は叫ぶが、
「顔が無いよりマシだね! きゃははは!」
と、シアンは笑った。そして、ボワッと紫色の光を纏うと、直径一キロはあろうかという漆黒の球を展開して司教を覆った。
「ぐわぁ! しまった!」
司教の叫んだ直後、ピュン! という電子音が響き渡って球は数センチの小ささにまで縮退する。
しかし、シアンは何かを察知して険しい顔をすると、数キロほどワープした。
直後、宇宙から謎の青い閃光が降り注ぎ、シアンのいた辺りの麦畑が大爆発を起こした。
きゃぁぁぁ!
激しい閃光に思わず目をギュッとつぶるソフィー。
さらにワープするシアン。
次に来たのは巨大な空間断裂。辺り一帯の空間がずれ、ズン! という重低音と共に麦畑には巨大な地割れが走った。
うひぃぃぃ!
もうソフィーは限界だった。
更に敵の攻撃が続き、辺り一帯は火の海と化し、麦畑は原形をとどめていない。
どうやら複数の敵が参戦してきているようである。
「こりゃダメだ……」
シアンはそう言うと宇宙へとワープして逃げた。
満天の星々の中にぽっかりと浮かぶ青い惑星、地球。
今までの激しい戦闘が嘘のように静まり返り、ただ、美しい雲の模様を浮かび上がらせる青い惑星だけが静かに佇んでいる。
しばらく呆然とするソフィー。
攻撃を受けない所に逃げてきたのだろうが、それがどこか分からなかった。
「あ、あれは?」
「あれは地球、ソフィーの住んでる星だよ。空のずーっとずーっと高い所から見るとこう見えるのさ」
シアンは何かを必死に準備しながら説明した。
「あぁ……。美しい……。こんな綺麗な所に住んでいたのね……」
ソフィーはホッとしながら、初めて見る自分の星をウットリしながら見入っていた。
「はい、準備OK!」
シアンはニヤリと笑うと巨大な黒い穴を空間に開いた。
「え? 何するの?」
ポカンとするソフィー。
「それ行け! ガンマ線バースト!」
直後、激烈な閃光が黒い穴からほとばしり、宇宙最大の爆発現象ガンマ線バーストのエネルギーが地球に降り注いだ。そのエネルギーは太陽が放出するエネルギーの百億年分を数十秒に凝縮したけた外れのもので、全てのものが一瞬にして蒸発してしまうレベルだった。
1万キロ以上の大きさを誇る岩石と金属の星、地球も数秒しか持たず、けた外れのガンマ線に焼かれていく。
激しい光を放ちながら、数多の命とともに地球は蒸発した。
しかし、シアンはそんなソフィーに構わず、叫んだ。
「ちょっと身体借りるよ!」
「へ? 借りるって?」
シアンは自分を包んでいたスカーフからピョンと飛び出すと、ソフィーの胸元に潜り込み、自分をソフィーの胸と融合させると手足を勝手に操作し始めた。
「ちょ、ちょっと!」
驚いたソフィーだったが、シアンは背を丸め、手足に力をこめると、全身を光り輝かせ、
ウガァァァ!
と、咆哮しながら胸を張った。
すると、立ち昇るキノコ雲の中から、頭の吹き飛んだ司教が青白い光を纏いながら飛び出してくる。
「ひぃ!」
おびえるソフィーをそのままに、シアンは両腕を司教に向けてブンブン! と振り、緑色に輝く光の刃を乱射した。鳥の大群のように司教に迫った刃だったが、司教は金色に輝く魔法陣をシールドとして攻撃に耐え、逆に真紅に輝くエネルギー弾を無数放ってくる。
シアンは「きゃははは!」と楽しそうに笑いながら、ジグザグに高速移動し、それらを避けていく。ただ、少し避けそこない、ソフィーの銀髪がジュッと音をたてて焦げる。
ひぃぃぃぃ!
ソフィーは顔面蒼白になって悲鳴を上げた。
「当たらなければどうということは無いよ!」
うれしそうなシアンだったが、
「髪に当たってるわよ!」
と、ソフィーは抗議する。
外れた弾は次々と地面に落ち、ズズズズン! と麦畑のあちこちで大爆発を起こした。まるで空爆を受けたかのように麦畑は燃え上がり、煙がもうもうと立ち込める。さらに一部は王都にも着弾していく。城壁は吹き飛び、石造りの建物は崩壊し、火の手が上がった。
「なんだお前! 顔だけか!」
司教は叫ぶが、
「顔が無いよりマシだね! きゃははは!」
と、シアンは笑った。そして、ボワッと紫色の光を纏うと、直径一キロはあろうかという漆黒の球を展開して司教を覆った。
「ぐわぁ! しまった!」
司教の叫んだ直後、ピュン! という電子音が響き渡って球は数センチの小ささにまで縮退する。
しかし、シアンは何かを察知して険しい顔をすると、数キロほどワープした。
直後、宇宙から謎の青い閃光が降り注ぎ、シアンのいた辺りの麦畑が大爆発を起こした。
きゃぁぁぁ!
激しい閃光に思わず目をギュッとつぶるソフィー。
さらにワープするシアン。
次に来たのは巨大な空間断裂。辺り一帯の空間がずれ、ズン! という重低音と共に麦畑には巨大な地割れが走った。
うひぃぃぃ!
もうソフィーは限界だった。
更に敵の攻撃が続き、辺り一帯は火の海と化し、麦畑は原形をとどめていない。
どうやら複数の敵が参戦してきているようである。
「こりゃダメだ……」
シアンはそう言うと宇宙へとワープして逃げた。
満天の星々の中にぽっかりと浮かぶ青い惑星、地球。
今までの激しい戦闘が嘘のように静まり返り、ただ、美しい雲の模様を浮かび上がらせる青い惑星だけが静かに佇んでいる。
しばらく呆然とするソフィー。
攻撃を受けない所に逃げてきたのだろうが、それがどこか分からなかった。
「あ、あれは?」
「あれは地球、ソフィーの住んでる星だよ。空のずーっとずーっと高い所から見るとこう見えるのさ」
シアンは何かを必死に準備しながら説明した。
「あぁ……。美しい……。こんな綺麗な所に住んでいたのね……」
ソフィーはホッとしながら、初めて見る自分の星をウットリしながら見入っていた。
「はい、準備OK!」
シアンはニヤリと笑うと巨大な黒い穴を空間に開いた。
「え? 何するの?」
ポカンとするソフィー。
「それ行け! ガンマ線バースト!」
直後、激烈な閃光が黒い穴からほとばしり、宇宙最大の爆発現象ガンマ線バーストのエネルギーが地球に降り注いだ。そのエネルギーは太陽が放出するエネルギーの百億年分を数十秒に凝縮したけた外れのもので、全てのものが一瞬にして蒸発してしまうレベルだった。
1万キロ以上の大きさを誇る岩石と金属の星、地球も数秒しか持たず、けた外れのガンマ線に焼かれていく。
激しい光を放ちながら、数多の命とともに地球は蒸発した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる