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78. 互いの想い
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「ふふっ、いきなりどうしたの?」
ミラーナはオディールの必死さに少し戸惑い、眉をひそめる。
マズい……。どうやら押しすぎてしまったらしい。しかし、もはや猶予はない。オディールは深呼吸をしてテンションを少し落とすと、落ち着いた声で語り掛ける。
「ねぇ、ミラーナ……」
「なぁに?」
オディールは大きく息をつくとミラーナを引き寄せ、ミラーナのブラウンの瞳をのぞきこむ。
「僕と一緒に人生を歩んで行って欲しいんだ」
「あら、今でも一緒じゃない?」
ミラーナはトロンとした目で、屈託のない笑顔を見せる。
ダメだ……、全く手ごたえを感じられない。オディールはギリッと奥歯を鳴らす。見れば光の雲はもうすぐそこまで迫っている。もう、ためらってる場合ではない。オディールはなりふり構わず勝負に出た。
「ミラーナ……。僕がミラーナをどれだけ愛しているか知って欲しいんだ。僕の心は、ミラーナへの思いで溢れかえってる。もうミラーナなしでは生きていけないんだよ。恋人に……なってくれないか?」
オディールは碧い瞳に情熱を宿しながら、まっすぐにミラーナを見つめる。
「えっ、恋人……?」
ミラーナは想定外の告白に、言葉を失ったまま目を見開く。
ここが人生の分岐点。自分の未来、ミラーナの未来が次の一瞬で決まる。
NOであれば生きてても仕方ない。オディールはこのままミラーナと一緒に人生を終えるつもりだった。
瞳がキュッキュと動き、言葉が出てこないミラーナ。
オディールは沈黙に耐えられず、口を開いた。
「そ、そりゃ、女同士、変かもしれない。でも……」
ミラーナは幸せそうな笑顔を浮かべると、オディールの唇をふわりと人差し指で押さえる。
え……?
静かにうなずいたミラーナは何も言わず、そっと唇を重ねてきた。
ん、んん……?
ミラーナの舌が愛おしそうにオディールの唇をなぞる。それはいまだかつて体験したことのない、甘い甘い愛撫だった。
オディールは恐る恐るミラーナの舌に触れてみる。
その瞬間、カラーン、カラーンとどこかで鐘の音が鳴り響き、二人の身体は煌めく黄金色の輝きに満たされていく。やがて、愛のエネルギーは二人の心を温かく包み込んでいった。
女神から授かった奇跡は全てを超越し、二人の失われかけた未来を明るく照らし出していく。
二人は温かに輝く光の中でお互いの想いを確かめ合う。紆余曲折を経て、ようやく結ばれた二人。ここにオディールの試練に満ちた旅は幕を閉じる。
オディールの目から自然と溢れ出す涙は空へと舞い上がって飛び散り、キラキラと輝きを放った。
◇
夢見心地の時が過ぎ、オディールが目を開けると、そこはベッドの上だった。
月明かりの差し込む見慣れた部屋、そこは壊れたはずのオディールの部屋――――。
「えっ!?」「あれっ!?」
二人は一体何が起こったのか混乱し、見つめあう。
窓から外を眺めると、セントラルもしっかりと建っているし、フローレスナイトも健在だった。
「こ、これは……?」
その時、けたたましく非常警報が鳴る。
そう、公爵たちが襲来した時に時間が巻き戻っていたのだ。きっと女神が気を利かせてくれたのだろう。
二人は見つめあい、うなずきあうと手をつなぎ、一緒に指令室へと駆けていく。
指令室ではケーニッヒとトニオが地図を指さし、深刻そうな顔をしていた。
前回見たのとまったく同じ光景に、オディールはつい笑ってしまいそうになる。二周目は絶対に負けない。オディールはキュッと口を結ぶとこぶしに力を込めた。
「オディール殿、お休みのところ申し訳ない。東方に赤い狼煙ですが……そっちは延々と砂漠が続きその先は海。そちらから何かが来るとは考えにくいのですが……」
ケーニッヒがあの時と同じように言う。
「それね、陽動なの。敵は公爵、この屋根の上に隠ぺい魔法で隠れてるよ。捕まえてくれる?」
「えっ!? でも魔力反応はありませんが……?」
「いいから早く!」
「ぎょ、御意!」
ケーニッヒは屋上に突入し、公爵たちの野望はあっさり砕かれたのだった。
◇
捕らえられた公爵はオディールを見て真っ赤な顔して喚く。
「この疫病神め! お前のおかげで公爵家はおとりつぶしだ!」
「勝手に追放しておいて何言うの? つくづく自分勝手ね」
オディールはあきれ顔で肩をすくめた。
「屋上にいたのをなぜ分かった? 隠ぺい魔法は完ぺきだったはずだ」
「分かんなかったわよ。で、何度も死にそうな目に遭ったわ」
オディールは剣をギラリと光らせ公爵ののど元に突きつける。その碧い瞳には激しい怒りが燃えていた。
「な、何を意味分からないことを……」
冷汗を浮かべて刀身を見つめる公爵。
「とは言え僕もあんたの娘だ。お前に選択肢をやろう。奴隷契約をするか……、今ここで死ぬか……だ。どっちがいい?」
オディールはかつて聞かされた通りに返す。
「ど、奴隷!? 親に向かって奴隷とは……」
「じゃあ死ぬ? 寝込み襲ってきて無事に帰れるとでも思ってるの?」
オディールは剣先でのどを少し突いた。
「くっ! や、止めろ! わ、分かった……奴隷でも何でも好きにしろ!」
公爵はのどから少し血を流しながら観念し、うつむいた。
ここに父親との確執は完全に終止符が打たれ、オディールは完全勝利を達成することとなる。
安堵したオディールはふぅと息をつき、目をつぶった。次元回廊からの数奇な旅路の果てにたどり着いた新たな人生の始まり。オディールは女神に感謝の祈りを捧げた。
ただ、今回は前回とは全く違う結末を描かねばならない。
ぬるい対応が招いた失態。二回目は徹底抗戦以外考えられないが、下手をしたら多くの人が死んでしまう。もうこの道しかないと分かっていても手が震えてしまうのだ。
「オディ、大丈夫?」
ミラーナはオディールの震える手を取り、心配そうに顔をのぞき込む。
オディールはギュッとミラーナを抱きしめ、深呼吸を繰り返す。
そう、やらねばやられる。セント・フローレスティーナを作ろうと決めた時から、衝突はもう運命だったのだ。であるならば全力で完勝する以外ない。
オディールは大きく深呼吸をすると覚悟を決める。
「ありがとう……。もう大丈夫」
オディールはニッコリとほほ笑み、ミラーナの頬に軽くキスをした。
ミラーナはオディールの必死さに少し戸惑い、眉をひそめる。
マズい……。どうやら押しすぎてしまったらしい。しかし、もはや猶予はない。オディールは深呼吸をしてテンションを少し落とすと、落ち着いた声で語り掛ける。
「ねぇ、ミラーナ……」
「なぁに?」
オディールは大きく息をつくとミラーナを引き寄せ、ミラーナのブラウンの瞳をのぞきこむ。
「僕と一緒に人生を歩んで行って欲しいんだ」
「あら、今でも一緒じゃない?」
ミラーナはトロンとした目で、屈託のない笑顔を見せる。
ダメだ……、全く手ごたえを感じられない。オディールはギリッと奥歯を鳴らす。見れば光の雲はもうすぐそこまで迫っている。もう、ためらってる場合ではない。オディールはなりふり構わず勝負に出た。
「ミラーナ……。僕がミラーナをどれだけ愛しているか知って欲しいんだ。僕の心は、ミラーナへの思いで溢れかえってる。もうミラーナなしでは生きていけないんだよ。恋人に……なってくれないか?」
オディールは碧い瞳に情熱を宿しながら、まっすぐにミラーナを見つめる。
「えっ、恋人……?」
ミラーナは想定外の告白に、言葉を失ったまま目を見開く。
ここが人生の分岐点。自分の未来、ミラーナの未来が次の一瞬で決まる。
NOであれば生きてても仕方ない。オディールはこのままミラーナと一緒に人生を終えるつもりだった。
瞳がキュッキュと動き、言葉が出てこないミラーナ。
オディールは沈黙に耐えられず、口を開いた。
「そ、そりゃ、女同士、変かもしれない。でも……」
ミラーナは幸せそうな笑顔を浮かべると、オディールの唇をふわりと人差し指で押さえる。
え……?
静かにうなずいたミラーナは何も言わず、そっと唇を重ねてきた。
ん、んん……?
ミラーナの舌が愛おしそうにオディールの唇をなぞる。それはいまだかつて体験したことのない、甘い甘い愛撫だった。
オディールは恐る恐るミラーナの舌に触れてみる。
その瞬間、カラーン、カラーンとどこかで鐘の音が鳴り響き、二人の身体は煌めく黄金色の輝きに満たされていく。やがて、愛のエネルギーは二人の心を温かく包み込んでいった。
女神から授かった奇跡は全てを超越し、二人の失われかけた未来を明るく照らし出していく。
二人は温かに輝く光の中でお互いの想いを確かめ合う。紆余曲折を経て、ようやく結ばれた二人。ここにオディールの試練に満ちた旅は幕を閉じる。
オディールの目から自然と溢れ出す涙は空へと舞い上がって飛び散り、キラキラと輝きを放った。
◇
夢見心地の時が過ぎ、オディールが目を開けると、そこはベッドの上だった。
月明かりの差し込む見慣れた部屋、そこは壊れたはずのオディールの部屋――――。
「えっ!?」「あれっ!?」
二人は一体何が起こったのか混乱し、見つめあう。
窓から外を眺めると、セントラルもしっかりと建っているし、フローレスナイトも健在だった。
「こ、これは……?」
その時、けたたましく非常警報が鳴る。
そう、公爵たちが襲来した時に時間が巻き戻っていたのだ。きっと女神が気を利かせてくれたのだろう。
二人は見つめあい、うなずきあうと手をつなぎ、一緒に指令室へと駆けていく。
指令室ではケーニッヒとトニオが地図を指さし、深刻そうな顔をしていた。
前回見たのとまったく同じ光景に、オディールはつい笑ってしまいそうになる。二周目は絶対に負けない。オディールはキュッと口を結ぶとこぶしに力を込めた。
「オディール殿、お休みのところ申し訳ない。東方に赤い狼煙ですが……そっちは延々と砂漠が続きその先は海。そちらから何かが来るとは考えにくいのですが……」
ケーニッヒがあの時と同じように言う。
「それね、陽動なの。敵は公爵、この屋根の上に隠ぺい魔法で隠れてるよ。捕まえてくれる?」
「えっ!? でも魔力反応はありませんが……?」
「いいから早く!」
「ぎょ、御意!」
ケーニッヒは屋上に突入し、公爵たちの野望はあっさり砕かれたのだった。
◇
捕らえられた公爵はオディールを見て真っ赤な顔して喚く。
「この疫病神め! お前のおかげで公爵家はおとりつぶしだ!」
「勝手に追放しておいて何言うの? つくづく自分勝手ね」
オディールはあきれ顔で肩をすくめた。
「屋上にいたのをなぜ分かった? 隠ぺい魔法は完ぺきだったはずだ」
「分かんなかったわよ。で、何度も死にそうな目に遭ったわ」
オディールは剣をギラリと光らせ公爵ののど元に突きつける。その碧い瞳には激しい怒りが燃えていた。
「な、何を意味分からないことを……」
冷汗を浮かべて刀身を見つめる公爵。
「とは言え僕もあんたの娘だ。お前に選択肢をやろう。奴隷契約をするか……、今ここで死ぬか……だ。どっちがいい?」
オディールはかつて聞かされた通りに返す。
「ど、奴隷!? 親に向かって奴隷とは……」
「じゃあ死ぬ? 寝込み襲ってきて無事に帰れるとでも思ってるの?」
オディールは剣先でのどを少し突いた。
「くっ! や、止めろ! わ、分かった……奴隷でも何でも好きにしろ!」
公爵はのどから少し血を流しながら観念し、うつむいた。
ここに父親との確執は完全に終止符が打たれ、オディールは完全勝利を達成することとなる。
安堵したオディールはふぅと息をつき、目をつぶった。次元回廊からの数奇な旅路の果てにたどり着いた新たな人生の始まり。オディールは女神に感謝の祈りを捧げた。
ただ、今回は前回とは全く違う結末を描かねばならない。
ぬるい対応が招いた失態。二回目は徹底抗戦以外考えられないが、下手をしたら多くの人が死んでしまう。もうこの道しかないと分かっていても手が震えてしまうのだ。
「オディ、大丈夫?」
ミラーナはオディールの震える手を取り、心配そうに顔をのぞき込む。
オディールはギュッとミラーナを抱きしめ、深呼吸を繰り返す。
そう、やらねばやられる。セント・フローレスティーナを作ろうと決めた時から、衝突はもう運命だったのだ。であるならば全力で完勝する以外ない。
オディールは大きく深呼吸をすると覚悟を決める。
「ありがとう……。もう大丈夫」
オディールはニッコリとほほ笑み、ミラーナの頬に軽くキスをした。
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