13 / 74
13. 紅蓮虎吼剣
しおりを挟む
市場の喧噪の中、一人のおじいさんが山のような荷物を背負って現れた。白いひげを蓄えた人懐っこそうな顔が、人だかりの中から覗く。
「あー、すまんが、ちょっとどいてくれ」
おじいさんの背負う荷物からは、剣の鍔が覗いている。武具の販売者だろうか? だが、明らかに錆びだらけの手入れの行き届いていないものばかりだった。
ユータはため息をつきながらも、半ば反射的に鑑定スキルを発動させる。
ワンド レア度:★
木製の杖 攻撃力:+8
スピア レア度:★
大剣 攻撃力:+9
紅蓮虎吼剣 レア度:★★★★
大剣 強さ:+5、攻撃力:+8/40、バイタリティ:+5、防御力:+5
「キターーーー!!」
俺は思わず叫んで立ち上がってしまった。隣に置いていたお茶のカップが転がり、地面を濡らしたが、もはやそんなことは気にならない。
紅蓮虎吼剣は、他の武器と一緒に無造作に箱に突っ込まれていた。
錆びつき、刃こぼれした姿に、俺は胸が痛む。★4の武器がこんな扱いを受けているなんて……。
「攻撃力8/40か……」
俺は首をかしげた。
(きっと手入れすれば、本来の力を取り戻せるはず)
おじいさんは丁寧に武器を並べていく。その中には★3の武器も混じっていた。
「すごい……」
俺は息を呑んだ。レア武器を二本も出すなんてただものではない。いったいこのおじいさんは何者なのだろうか?
早速、おじいさんに近づいた――――。
「あの、すみません……」
俺は緊張しながら声をかける。
「この剣、売ってもらえませんか?」
「あぁ?」
おじいさんは白ひげをなでながら、ユータをけげんそうな目で見上げる
「坊主か、驚いた。まだ小さいのに武器になんて興味あるのか? ん?」
おじいさんはそう言って相好を崩した。
「この剣と、あの錆びた大剣が欲しいんですが、いくらですか?」
「え!? これは一本金貨一枚だぞ! 子供の買えるもんじゃねーぞ!」
おじいさんは困ったような顔で言い放った。
「お金ならあります!」
俺はポケットから金貨を取り出して見せた。
「ほぅ、こりゃ驚いた……」
おじいさんは金貨を受け取ると、本物かどうかじっくりと確かめる。
「……。いいですか?」
「そりゃぁ金さえ払ってくれたらねぇ……。よし! じゃ、錆びた奴はオマケにしといてやろう!」
そう言って笑うと、剣を丁寧に紙で包み始めた。
なんと、★4の称号付きの名剣がオマケになるという。俺はちょっと申し訳なく思いながらも厚意に甘えることにした。
「もしかして、こういう武器、他にもありますか?」
俺はさりげなく聞いてみる。きっとここにあるだけではないに違いない。
「あー、うちは古い武器のリサイクルをやっとってな。倉庫にはたくさんあるよ」
おじいさんは開店するなり武器が売れてニコニコと上機嫌だ。
「それ、見せてもらうことはできますか?」
「おいおい、坊主。お前、武器買いあさってどうするつもりかね?」
怪訝そうなおじいさん。
「あー、実は冒険者相手に武器を売る商売をはじめようと思ってて、仕入れ先を探してたんです」
「え? 坊主が武器商人?」
「武器ってほら、魅力的じゃないですか」
おじいさんはフッと笑うと、肩をすくめる。
「そりゃぁ武器は美しいよ。でも、儲かるような仕事じゃないぞ?」
「大丈夫です、まず試したいので……」
きっと在庫は宝の山に違いない。俺は必死にプッシュした。
おじいさんはユータの目をジッと見る。そして、根負けしたように年季の入ったカバンを漁る。
「分かった、じゃぁ明日、ここへおいで」
そう言って、おじいさんは小さなチラシを差し出した。
「ありがとうございます!」
ユータはお礼を言うと、剣を抱え、ウキウキしながら孤児院の倉庫へと走った。
◇
倉庫の隅で、俺は必死に紅蓮虎吼剣と向き合っていた。水を汲んできて早速研ぎ始めたものの、思うように進まない。錆びは落ちるが、刃こぼれの修復には頭を悩ませる。
「なんて硬いんだ……」
額に汗を浮かべながら、必死に砥石を動かす。しかし、★四つの剣は簡単には砥石を受け入れない。その頑強さに、俺は身をもって紅蓮虎吼剣の質の高さを実感させられた。
諦めかけた瞬間、ふと目に入ったのは庭に転がる石垣の崩れた石だった。それは砥石よりももっと粗野な硬さで、砥石ではなんともならない紅蓮虎吼剣にはいい荒療治になりそうだった。
「これなら……!」
平らな面に剣を当ててみると、ジョリジョリと手応えのある音が響いた。
「よし、いける!」
俺は確かな手ごたえを感じながら必死に研いでいく――――。
しかし、すぐに息切れし始めた。子供の小さな体にはレア武器の手入れなど重労働だ。
「ふぅ……何やるにしても身体鍛えないとダメだなぁ……」
ボーっと休憩しながら呟いたその時、倉庫の扉が開いた。
「あー、すまんが、ちょっとどいてくれ」
おじいさんの背負う荷物からは、剣の鍔が覗いている。武具の販売者だろうか? だが、明らかに錆びだらけの手入れの行き届いていないものばかりだった。
ユータはため息をつきながらも、半ば反射的に鑑定スキルを発動させる。
ワンド レア度:★
木製の杖 攻撃力:+8
スピア レア度:★
大剣 攻撃力:+9
紅蓮虎吼剣 レア度:★★★★
大剣 強さ:+5、攻撃力:+8/40、バイタリティ:+5、防御力:+5
「キターーーー!!」
俺は思わず叫んで立ち上がってしまった。隣に置いていたお茶のカップが転がり、地面を濡らしたが、もはやそんなことは気にならない。
紅蓮虎吼剣は、他の武器と一緒に無造作に箱に突っ込まれていた。
錆びつき、刃こぼれした姿に、俺は胸が痛む。★4の武器がこんな扱いを受けているなんて……。
「攻撃力8/40か……」
俺は首をかしげた。
(きっと手入れすれば、本来の力を取り戻せるはず)
おじいさんは丁寧に武器を並べていく。その中には★3の武器も混じっていた。
「すごい……」
俺は息を呑んだ。レア武器を二本も出すなんてただものではない。いったいこのおじいさんは何者なのだろうか?
早速、おじいさんに近づいた――――。
「あの、すみません……」
俺は緊張しながら声をかける。
「この剣、売ってもらえませんか?」
「あぁ?」
おじいさんは白ひげをなでながら、ユータをけげんそうな目で見上げる
「坊主か、驚いた。まだ小さいのに武器になんて興味あるのか? ん?」
おじいさんはそう言って相好を崩した。
「この剣と、あの錆びた大剣が欲しいんですが、いくらですか?」
「え!? これは一本金貨一枚だぞ! 子供の買えるもんじゃねーぞ!」
おじいさんは困ったような顔で言い放った。
「お金ならあります!」
俺はポケットから金貨を取り出して見せた。
「ほぅ、こりゃ驚いた……」
おじいさんは金貨を受け取ると、本物かどうかじっくりと確かめる。
「……。いいですか?」
「そりゃぁ金さえ払ってくれたらねぇ……。よし! じゃ、錆びた奴はオマケにしといてやろう!」
そう言って笑うと、剣を丁寧に紙で包み始めた。
なんと、★4の称号付きの名剣がオマケになるという。俺はちょっと申し訳なく思いながらも厚意に甘えることにした。
「もしかして、こういう武器、他にもありますか?」
俺はさりげなく聞いてみる。きっとここにあるだけではないに違いない。
「あー、うちは古い武器のリサイクルをやっとってな。倉庫にはたくさんあるよ」
おじいさんは開店するなり武器が売れてニコニコと上機嫌だ。
「それ、見せてもらうことはできますか?」
「おいおい、坊主。お前、武器買いあさってどうするつもりかね?」
怪訝そうなおじいさん。
「あー、実は冒険者相手に武器を売る商売をはじめようと思ってて、仕入れ先を探してたんです」
「え? 坊主が武器商人?」
「武器ってほら、魅力的じゃないですか」
おじいさんはフッと笑うと、肩をすくめる。
「そりゃぁ武器は美しいよ。でも、儲かるような仕事じゃないぞ?」
「大丈夫です、まず試したいので……」
きっと在庫は宝の山に違いない。俺は必死にプッシュした。
おじいさんはユータの目をジッと見る。そして、根負けしたように年季の入ったカバンを漁る。
「分かった、じゃぁ明日、ここへおいで」
そう言って、おじいさんは小さなチラシを差し出した。
「ありがとうございます!」
ユータはお礼を言うと、剣を抱え、ウキウキしながら孤児院の倉庫へと走った。
◇
倉庫の隅で、俺は必死に紅蓮虎吼剣と向き合っていた。水を汲んできて早速研ぎ始めたものの、思うように進まない。錆びは落ちるが、刃こぼれの修復には頭を悩ませる。
「なんて硬いんだ……」
額に汗を浮かべながら、必死に砥石を動かす。しかし、★四つの剣は簡単には砥石を受け入れない。その頑強さに、俺は身をもって紅蓮虎吼剣の質の高さを実感させられた。
諦めかけた瞬間、ふと目に入ったのは庭に転がる石垣の崩れた石だった。それは砥石よりももっと粗野な硬さで、砥石ではなんともならない紅蓮虎吼剣にはいい荒療治になりそうだった。
「これなら……!」
平らな面に剣を当ててみると、ジョリジョリと手応えのある音が響いた。
「よし、いける!」
俺は確かな手ごたえを感じながら必死に研いでいく――――。
しかし、すぐに息切れし始めた。子供の小さな体にはレア武器の手入れなど重労働だ。
「ふぅ……何やるにしても身体鍛えないとダメだなぁ……」
ボーっと休憩しながら呟いたその時、倉庫の扉が開いた。
94
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる