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52. 根源の焔
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「クフフフ……。はっはっは!」
魔王は大口を開けて笑う。
ヴィーナはなぜ効かないのか理解ができず、険しい目をして魔王の醜い脂ぎった顔をにらんだ。
この世界において管理者の攻撃は絶対である。どんなに物理的な対策を講じようともこの世界を動かしているのはシステムであり、システムに直接働きかける管理者の攻撃は防ぎようがないのだ。
だが、花びらに込められた【消去コマンド】を浴びても魔王は平然としている。これは魔王も管理者権限を持っていることを示していた。
なぜ? どうやって? どこまで権限を使える? ヴィーナはギリッと歯を鳴らして目を凝らし、魔王のデータを必死に集める。
しかし、魔王に関する一切のデータは取れなかった。それは自分よりも高位であることを示している。
「な、なぜ……? あんた一体……」
ヴィーナは焦り、慌てて空間跳躍で逃げようと扇子を取り出してパチンと鳴らした。しかし、何も起こらない。自分の権限も制限されてしまっていたのだ。
ハッとして魔王をにらむヴィーナだったが、打つ手がない。ここに来てヴィーナは絶体絶命の窮地に追い込まれたことに気がついたのだった。
「クフフフ……。次は俺の番だな……」
魔王は手のひらを上にして気合を込める。
直後、ブワッと虹色のきらめきが放たれ、ヴィーナは険しい表情で後ずさる。
魔王の手のひらの上にゆらゆらと立ち上がる虹色の炎。それは神秘的な輝きを放ちながら辺りを照らした。
「ま、まさかそれは……」
ヴィーナはおののいて、言葉を失う。
よく見ると、揺れている炎は全て無数の輝く「1」「0」の数字で構成され、この世界を構成するデジタルの本質をそのまま表すきらめきだった。
「そう、これは根源の焔……。この世界の根源に揺蕩うこの世界の本質だ」
「な、なぜおまえがそんなものを!」
ヴィーナは冷や汗を流しながら叫ぶ。この世界の根源にアクセスできるということは管理者でも触れない、この世界のさらに上位の世界全てのことにアクセスできるということ。ヴィーナは今まで感じたことのない底知れぬ恐怖にゾッとして、青ざめた顔で唇を震わせた。
「お前の権限に、俺の千年にわたる研究成果を組み合わせた。そう、まさにお前のおかげだな、はっはっは」
ニヤニヤしながら根源の焔を揺らめかせる魔王。
ヴィーナは踵を返すと飛び上がり、宇宙船に向かってツーっと飛び上がる。
「逃がすか! 死ねぃ!」
魔王はそう叫ぶと、根源の焔をヴィーナに投げつけようと振りかぶった。
一部始終を見ていたレヴィアは、ヴィーナが決定的な危機に陥ったことに覚悟を決めざるを得なくなった。女神には思うところはあるが、超常者となってしまった魔王が今後自分たちを放っておくとは思えない。女神だけが自分たちの希望なのだ。
大きく息をつくと、レヴィアは何とか指先を届かせたクリスタルスティックに気合を込める。
直後、ボン! という音を立てて、漆黒のドラゴンが満天の星々の中に現れ、鱗に浮かぶ黄金の光をぼうっと浮かび上がらせた。
魔王は爆発音に振り向いたが、レヴィアの方を向いた時には長く巨大なシッポが目前に迫っていた。
うわぁ!
ズン! と鈍い音を立てて吹き飛ぶ魔王。
「女神さま、逃げてください!」
そう言うと、レヴィアは転がる魔王に向けてパカッと大きな口を開いた。
ほとばしる灼熱のドラゴンブレス。
しかし、直後に倒れたのはレヴィアだった。
ギュァァァ!
レヴィアは苦しそうに巨体を倒し、痛そうにうめいた。
「バカが! 管理者相手にそんな攻撃が効くとでも思ってるのか」
苦しむレヴィアの鱗には根源の焔が美しく虹色に輝きながら燃え上がり、どんどんと火の手を広げていく。
「さて、ヴィーナ! どこへ行こうというのかね?」
魔王はツーっと飛んで逃げているヴィーナの方に手のひらを向け、グッとこぶしを握った。
キャァ!
髪の毛を引っ張られたヴィーナの悲鳴が響き、動きがピタッと止まる。魔王は管理者の力を使いこなしていた。
「ふんっ!」
魔王がこぶしをブンと手前に引っ張ると、ヴィーナは髪の毛を引っ張られるように引き寄せられ、宙を舞って、魔王の足元に転がった。
もはやこの星系で最強となってしまった魔王。ヴィーナはかつてない恐怖にガタガタと震え、これから始まるであろう惨劇に言葉を失っていた。
魔王は大口を開けて笑う。
ヴィーナはなぜ効かないのか理解ができず、険しい目をして魔王の醜い脂ぎった顔をにらんだ。
この世界において管理者の攻撃は絶対である。どんなに物理的な対策を講じようともこの世界を動かしているのはシステムであり、システムに直接働きかける管理者の攻撃は防ぎようがないのだ。
だが、花びらに込められた【消去コマンド】を浴びても魔王は平然としている。これは魔王も管理者権限を持っていることを示していた。
なぜ? どうやって? どこまで権限を使える? ヴィーナはギリッと歯を鳴らして目を凝らし、魔王のデータを必死に集める。
しかし、魔王に関する一切のデータは取れなかった。それは自分よりも高位であることを示している。
「な、なぜ……? あんた一体……」
ヴィーナは焦り、慌てて空間跳躍で逃げようと扇子を取り出してパチンと鳴らした。しかし、何も起こらない。自分の権限も制限されてしまっていたのだ。
ハッとして魔王をにらむヴィーナだったが、打つ手がない。ここに来てヴィーナは絶体絶命の窮地に追い込まれたことに気がついたのだった。
「クフフフ……。次は俺の番だな……」
魔王は手のひらを上にして気合を込める。
直後、ブワッと虹色のきらめきが放たれ、ヴィーナは険しい表情で後ずさる。
魔王の手のひらの上にゆらゆらと立ち上がる虹色の炎。それは神秘的な輝きを放ちながら辺りを照らした。
「ま、まさかそれは……」
ヴィーナはおののいて、言葉を失う。
よく見ると、揺れている炎は全て無数の輝く「1」「0」の数字で構成され、この世界を構成するデジタルの本質をそのまま表すきらめきだった。
「そう、これは根源の焔……。この世界の根源に揺蕩うこの世界の本質だ」
「な、なぜおまえがそんなものを!」
ヴィーナは冷や汗を流しながら叫ぶ。この世界の根源にアクセスできるということは管理者でも触れない、この世界のさらに上位の世界全てのことにアクセスできるということ。ヴィーナは今まで感じたことのない底知れぬ恐怖にゾッとして、青ざめた顔で唇を震わせた。
「お前の権限に、俺の千年にわたる研究成果を組み合わせた。そう、まさにお前のおかげだな、はっはっは」
ニヤニヤしながら根源の焔を揺らめかせる魔王。
ヴィーナは踵を返すと飛び上がり、宇宙船に向かってツーっと飛び上がる。
「逃がすか! 死ねぃ!」
魔王はそう叫ぶと、根源の焔をヴィーナに投げつけようと振りかぶった。
一部始終を見ていたレヴィアは、ヴィーナが決定的な危機に陥ったことに覚悟を決めざるを得なくなった。女神には思うところはあるが、超常者となってしまった魔王が今後自分たちを放っておくとは思えない。女神だけが自分たちの希望なのだ。
大きく息をつくと、レヴィアは何とか指先を届かせたクリスタルスティックに気合を込める。
直後、ボン! という音を立てて、漆黒のドラゴンが満天の星々の中に現れ、鱗に浮かぶ黄金の光をぼうっと浮かび上がらせた。
魔王は爆発音に振り向いたが、レヴィアの方を向いた時には長く巨大なシッポが目前に迫っていた。
うわぁ!
ズン! と鈍い音を立てて吹き飛ぶ魔王。
「女神さま、逃げてください!」
そう言うと、レヴィアは転がる魔王に向けてパカッと大きな口を開いた。
ほとばしる灼熱のドラゴンブレス。
しかし、直後に倒れたのはレヴィアだった。
ギュァァァ!
レヴィアは苦しそうに巨体を倒し、痛そうにうめいた。
「バカが! 管理者相手にそんな攻撃が効くとでも思ってるのか」
苦しむレヴィアの鱗には根源の焔が美しく虹色に輝きながら燃え上がり、どんどんと火の手を広げていく。
「さて、ヴィーナ! どこへ行こうというのかね?」
魔王はツーっと飛んで逃げているヴィーナの方に手のひらを向け、グッとこぶしを握った。
キャァ!
髪の毛を引っ張られたヴィーナの悲鳴が響き、動きがピタッと止まる。魔王は管理者の力を使いこなしていた。
「ふんっ!」
魔王がこぶしをブンと手前に引っ張ると、ヴィーナは髪の毛を引っ張られるように引き寄せられ、宙を舞って、魔王の足元に転がった。
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