24 / 61
1章 鏡の中の異世界
2-5. ダンジョン地図
しおりを挟む
まずは魔道具屋に向かった。日当たりの悪い裏通りをしばらく行くと、出窓に年季の入ったランプや不思議な人形の飾られた店がある。中は薄暗がりで良く見えない。一人ではなかなか入れないお店だ。
エステルがドアを開ける。
カラン、カラン
「こんにちはぁ」
そう言いながらエステルは入っていき、俺も続く。
店の中はアジア雑貨のお店のようで、良く分からない物が所狭しと陳列されていた。右手には棚があり、いろんな形をした魔法の杖がずらりと並んでいた。何の気なしに値札を見ると、高い物では金貨百枚を超えるものがあり、ちょっとビビる。
「おや、エステルちゃん、今日はどうしたんだい?」
奥のカウンターのおばさんが、メガネをクイッとあげて声をかける。
「この杖の買取りと、あと、ダンジョンの地図とポーションをください」
「はいはい、いい杖が見つかったのね」
「少しだけですけどね」
エステルはちょっと恥ずかしそうに言った。
「地図は何階の?」
おばさんが聞くと、エステルは俺の方を見る。
「出来たら全部欲しいんですが」
俺が答える。
「全部!? 百階までって事かい?」
おばさんは驚く。
「あれ? マズい……ですか……?」
「八十階から先はなかなか更新されないから、あまり役に立たないうえに高額よ?」
「高額……というと?」
「十階ごとに一冊となっていて、八十台は銀貨五枚、九十台は金貨一枚ね」
「役に立たないというと……、ダンジョンがどんどん変わっていっちゃうからと言う事ですか?」
「そうよ? それに……、悪いけどあなた達で八十台は……。見たところ三階とかが適正じゃないかしら……」
おばさんは渋い顔をする。
「大丈夫です! ソータ様は双頭のワイバーンを瞬殺できるんです!」
エステルがニッコリと笑いながら言う。
「えっ!? 一人で倒したのかい?」
驚いて俺を凝視するおばさん。
「いや、まぁ、ちょっと特殊な方法で倒せるんです」
「こりゃまた驚いた……。ワイバーンと言うと六十階ね、七十階は筋肉ムキムキのミノタウロス、八十階はワシとライオンのキメラ、グリフォンよ、勝てる?」
おばさんは興味津々に聞いてくる。
「多分余裕かと……」
俺はニヤッと笑う。
「ふへー……!」
おばさんは言葉を失う……。
「えへん!」
エステルが自分のことのように胸を張る。
「もしかして……、あなたが稀人かい?」
おばさんが俺を見つめながら聞いてくる。
「あー、違います。そうだったら良かったんですけどね」
俺は苦笑いしながらごまかす。
「ふぅん……」
「そ、それより、これは何ですか?」
話題を変えるべく、ショーウィンドウの中に丁寧に並べられた本を指さした。
「これは魔導書よ。魔法を覚えられるわ」
「え? これ使えば誰でも魔法を使えるんですか?」
「知力が一定以上あればね」
おばさんは挑戦的な視線で俺を見る。
「空飛ぶ魔法とかもあるんですか?」
「これね。知力が30以上なら覚えられるわ」
おばさんは青い表紙の魔導書を指さす。その六芒星をあしらった不思議な模様が描かれた重厚な書籍に俺は魅せられた。
そんな俺を見てエステルが言う。
「魔法は憶えても使いこなすには修練が要るですよ?」
「修練?」
「ちょっと浮き上がる事は誰にでもできますが、自由自在に飛ぶには凄い練習が要るんです」
なるほど、そんなに簡単な話じゃないらしい。だが、いつかは飛んでみたい。それは子供の頃からのあこがれなのだ。
「分かりました。それじゃ今日は八十階までの地図と、あとポーションを一式ください」
◇
その後、武具屋と防具屋にも行ったが、やはり物干しざおとユニクロの服や防刃ベストの方が優秀だった。日本の物は異様に高いパラメーターを付与されている。むしろ、ユニクロの服を仕入れて売ったら儲かるんじゃないかとすら思った。
左腕に付ける丸い盾だけ買って装備してみる。殺虫剤をかいくぐられた時の一撃を回避するのに使えそうだった。
さて、これで準備万端。いよいよ本格的にダンジョン攻略だ!
エステルがドアを開ける。
カラン、カラン
「こんにちはぁ」
そう言いながらエステルは入っていき、俺も続く。
店の中はアジア雑貨のお店のようで、良く分からない物が所狭しと陳列されていた。右手には棚があり、いろんな形をした魔法の杖がずらりと並んでいた。何の気なしに値札を見ると、高い物では金貨百枚を超えるものがあり、ちょっとビビる。
「おや、エステルちゃん、今日はどうしたんだい?」
奥のカウンターのおばさんが、メガネをクイッとあげて声をかける。
「この杖の買取りと、あと、ダンジョンの地図とポーションをください」
「はいはい、いい杖が見つかったのね」
「少しだけですけどね」
エステルはちょっと恥ずかしそうに言った。
「地図は何階の?」
おばさんが聞くと、エステルは俺の方を見る。
「出来たら全部欲しいんですが」
俺が答える。
「全部!? 百階までって事かい?」
おばさんは驚く。
「あれ? マズい……ですか……?」
「八十階から先はなかなか更新されないから、あまり役に立たないうえに高額よ?」
「高額……というと?」
「十階ごとに一冊となっていて、八十台は銀貨五枚、九十台は金貨一枚ね」
「役に立たないというと……、ダンジョンがどんどん変わっていっちゃうからと言う事ですか?」
「そうよ? それに……、悪いけどあなた達で八十台は……。見たところ三階とかが適正じゃないかしら……」
おばさんは渋い顔をする。
「大丈夫です! ソータ様は双頭のワイバーンを瞬殺できるんです!」
エステルがニッコリと笑いながら言う。
「えっ!? 一人で倒したのかい?」
驚いて俺を凝視するおばさん。
「いや、まぁ、ちょっと特殊な方法で倒せるんです」
「こりゃまた驚いた……。ワイバーンと言うと六十階ね、七十階は筋肉ムキムキのミノタウロス、八十階はワシとライオンのキメラ、グリフォンよ、勝てる?」
おばさんは興味津々に聞いてくる。
「多分余裕かと……」
俺はニヤッと笑う。
「ふへー……!」
おばさんは言葉を失う……。
「えへん!」
エステルが自分のことのように胸を張る。
「もしかして……、あなたが稀人かい?」
おばさんが俺を見つめながら聞いてくる。
「あー、違います。そうだったら良かったんですけどね」
俺は苦笑いしながらごまかす。
「ふぅん……」
「そ、それより、これは何ですか?」
話題を変えるべく、ショーウィンドウの中に丁寧に並べられた本を指さした。
「これは魔導書よ。魔法を覚えられるわ」
「え? これ使えば誰でも魔法を使えるんですか?」
「知力が一定以上あればね」
おばさんは挑戦的な視線で俺を見る。
「空飛ぶ魔法とかもあるんですか?」
「これね。知力が30以上なら覚えられるわ」
おばさんは青い表紙の魔導書を指さす。その六芒星をあしらった不思議な模様が描かれた重厚な書籍に俺は魅せられた。
そんな俺を見てエステルが言う。
「魔法は憶えても使いこなすには修練が要るですよ?」
「修練?」
「ちょっと浮き上がる事は誰にでもできますが、自由自在に飛ぶには凄い練習が要るんです」
なるほど、そんなに簡単な話じゃないらしい。だが、いつかは飛んでみたい。それは子供の頃からのあこがれなのだ。
「分かりました。それじゃ今日は八十階までの地図と、あとポーションを一式ください」
◇
その後、武具屋と防具屋にも行ったが、やはり物干しざおとユニクロの服や防刃ベストの方が優秀だった。日本の物は異様に高いパラメーターを付与されている。むしろ、ユニクロの服を仕入れて売ったら儲かるんじゃないかとすら思った。
左腕に付ける丸い盾だけ買って装備してみる。殺虫剤をかいくぐられた時の一撃を回避するのに使えそうだった。
さて、これで準備万端。いよいよ本格的にダンジョン攻略だ!
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる