上 下
104 / 213
秘密の味

22

しおりを挟む
 まるで猫のように膝の上で転がり続ける。こんな姿を見るのは正直初めてだ。

 思わず俺は頭を撫でていた。

 その感覚ですらすんなりと受け入れ、俺に甘えてきているように思える。

 これが可愛いというものなのか。

 俺もこの感覚にすっかり虜になってしまい、ずっと撫で続けていた。

 猫を撫でながら優雅に酒を飲んでいる気分だった。思わず俺の酒のペースが上がってしまう。

 空になったコップに残りを注ぎ、ボトルを床に置く。大した量ではないものの、原液を飲んでいるようなものなのでさすがに少し酔ってきた。

 すると、少し手を離したところで金森さんがゴロリと上を向いた。それに気付かずに撫でようとしたら、思い切り手を払われた。

「あいたっ」

 どうやら顔を塞いでいたようで、少し機嫌が悪そうな顔をしていた。

「ごめんごめん」

 無言のまま睨みつけるようにこちらを見てくる。俺も無言のまま見つめ返す。

 音のない時間がしばらく続いた。こうして見ると、少しは酔いが覚めたのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

平熱が低すぎて、風邪をひいても信じてもらえない男の子の話

こじらせた処女
BL
平熱が35℃前半だから、風邪を引いても37℃を超えなくていつも、サボりだと言われて心が折れてしまう話

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...