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秘密の味

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 山本さんがピッチャーを置いたところで、どうやら全員に行き渡ったようだ。乾杯の音頭を取るために、俺はグラスを持ちながら立ち上がる。

「えー、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。えー、毎年の恒例行事の成功をお祈りします。乾杯!」

 適当に短く済ませた言葉に、ほぼ全員がブーイングしていた。しかし、そうしながらもグラスを鳴らして乾杯していた。俺は立ち上がったまま、テーブルの端から端まで移動していった。

 全員とグラスを交え、ようやく自分の席に座って一口飲む。気付けばお通しと小皿と箸が並べられており、誰だか分からないがとりあえず感謝しておく。

 まずは前菜のサラダが運ばれ、四人ずつ程度の間隔で並んでいく。特に他人に配慮した様子もなく、自分の箸で適量を小皿に取っていく。さっぱりとしたドレッシングらしい液体を切りながら、俺も取る。

 さて食べるか、と一口取ったところで、目の前の金森さんは少量をようやく盛っていたというところだった。

「大丈夫っすか?」

「平気だ……」

 そう言いつつも、俺にはあまりそうは見えなかった。しつこく問うのもどうかと思ったのでこれ以上は追求しなかったが、目の前で調子悪そうな様子をされてもあまり気分のいいものではない。
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