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風の悪戯

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「げっ……」

 思わず出た令嬢らしからぬ言葉に、お兄様は苦笑いでしたわね。


 お兄様がハンカチを受け取ってすぐにメイドに、汚れたから処分しておくれ。とディータに聞こえるか聞こえないかの絶妙な声で言った。


「リディアーヌ、体調はどうだ? あれから学園に来ないものだから心配していたんだ」


 ディータと話すのも面倒だと思った。なんでうちにいるんだろうか? 家族は知っているのかしら? お兄様をみるとにたっと笑っていたわ。知っていらしたのね。そう言う目でお兄様をみると、頷いていらしたわ。あとはお任せして良いんでしょう?

 お兄様の元へ一歩踏み出すと、華奢なヒールが庭の芝生にひっかかり、思わずふらついてしまったの。


「リディアーヌ!」

 ディータがふらついた私を助けようと寄ってこようとしたけれど、近くにいたお兄様がキャッチしてくださったわ。


「おや? リディはまだ体調が万全ではないようだな。今からお客さんが来るから、待っている間は座ってなさい」


 お兄様は先程のパラソルの下へ私を連れて行き椅子に座るように言った。

 なので少し離れたところでお兄様とディータの話を聞くことにした。


 それにしても今日のディータの服装も、流行りに囚われすぎていて個性がないわ….。

 なんだかチャラチャラした印象? あの胸元のチーフがレインボーカラーって……どんなセンスよ! 小物にレインボーカラーで差し色って本気で信じたのね……。
 顔は悪くないけど、俺様感が滲み出るせいで50%マイナスってところね。


「ディータ殿、両親との話はもう終わったのだろう?」


「フリード殿おひさしぶりですね。今日はリディアーヌに会いにきたんです。話をさせてもらっても?」


「悪いが、妹はディータ殿と話す事はないよ。訳あって婚約解消した男と何を話すんだい?」


「あれはつい、魔がさしたと言うか……」


「ほぅ。魔がさして衆人の前で婚約破棄を? 一度悪魔祓いをした方が良さそうだな。帰りにでも行ってくるが良い。今からお客さんを迎えるんだ、君と話している暇はない。おい! ディータ殿を案内してやれ」


 はい。と言って侍従にメイドが、ぞろぞろと向かってくる

「リディアーヌ! 話がある。聞いてくれ!」


 しつこく話しかけられる。名前で呼ぶなっての!



「なんだ? 先客か?」


 執事に案内され来た男性……お兄様は友達が来ると言っていらしたけれど



 お兄様のお友達って……!! 



「フリード、私は早く来すぎてしまったのか?」


「いや、時間通りだよ。リディ挨拶はどうした?」

 すくっと立ち上がりお兄様のお友達の元へ行こうとすると、サクッサクッと芝生を踏む音がリズム良く近づいてきた。


「リディ、久しぶりだね、元気だったか?」


「はい。お久しぶりです。アルセーヌ様」


 ワンピースのスカートを持って挨拶した。

 アルセーヌ様はお兄様のお友達で、侯爵家の嫡男でらっしゃいます。
 去年から隣国とのちょっとした諍いを治めるため、先日帰ってきたばかり。


 来月には隣国との和平の為のパーティーが王宮で行われるのです。
 その時にアルセーヌ様は陛下より功労者として勲章を与えられるそうです!


「ところで、先客とはディータ殿の事か?」

「あぁ、もう帰るから気にしなくて良い、さぁ、案内を!」

「いやいや……リディアーヌに話が、」


「ディータ殿、うちの妹の名前を呼ぶのはよして貰う。もう金輪際リディに近寄るなよ」

 お兄様がそういうと

「もう一度婚約しよう! リディアーヌ!」

 声が大きいですわね。

 すると血相を抱えてディータの父親がこちらにいらしたわ


「おい! もう恥をかかすな! お前がいないと思ったら庭に入り込み寄って! 帰るぞ! フリード殿申し訳ない、帰ったら愚息に言い聞かせ…………アルセーヌ殿! 失礼いたしました」


「伯爵か……リディが迷惑そうだから連れて帰ってくれ」


「は、はいっ。失礼致しました」


 引き摺るように連れて行かれるディータを見ていた……




 なんなんだろう? 慰謝料さえ払ってくれればそれでいっか。










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