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南の国の王宮

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「王子殿下からですか?」

 お兄様のお友達がいらしてから一ヶ月が経った頃、侯爵様からお手紙を渡されました。

「そうなんだ。ミシェルに直接渡して欲しいと言われてね」


 苦笑いの侯爵様がローランお兄様をチラリと一瞥されました。


「父上を使うとは! 卑怯なやつだ」

「同じ学園に通っているのだからローランに渡せば良いんだけど、受け取らないのだとか?」

「なんのことやら……勘違いしているようですね」


 お兄様……。惚けた演技がバレバレですわね



「読んでみたら? 返事を書く時はメイドに渡しなさいね」

「はい、ありがとうございます」

 お手紙をみんなの前で開封するのは躊躇われたので後にしようとポケットに仕舞いました。


「なんで読まないんだ?」


「今から晩餐ですし汚しては失礼かと思って」


「なんか嫌な予感がする! なんて書いてあるか分からんが断って良いからな」


******


 お手紙はお茶のお誘いでした。

 お断りしても良いとお兄様は仰いましたけど、日にちの時間も指定されていますし、迎えの馬車も手配されているというので、断れませんね。


 でも他国の王宮は気になりますよね。遠くから見た印象は、青と白のコントラストが美しい宮殿と言った感じです。


 何を着ていこうかしら? 叔母様にご相談してみましょう。



******


「なんで私は行ったらダメなんですか! 護衛が必要ですよ!」


 ローランお兄様に護衛なんて頼めませんよ

「貴方は誘われてないもの、そもそも貴方が邪魔するからこうなったんでしょう?」


「う! 痛いところを」

「いいか? ミシェルすぐに帰ってくるんだぞ」

「お茶を飲んだら帰ってきます」

「遅くなるようなら私が迎えに行くからとウェズリーに言うように!」

「ふふっ。心配症ですのね、行ってまいります」


******


 王子殿下の用意してくれた馬車に乗り王宮に着くと、馬車の扉が開かれ降りようとすると手が差し出されたので、ん? と顔を上げると王子殿下自ら迎えに来てくださったようでした。

「ミシェル、ようこそ! よく来たね」

 手を取り馬車から降りました。



「王子殿下、この度はご招待いただきありがとうございます。馬車まで用意してくださって感謝いたします」

「それは当然でしょう? 行こうか」


 連れてこられた先は南の国特有のお花が咲くパティオのような場所だった。


「素敵ですね! 見たことのないお花ばかりです」


「気に入った?」


「はい、風が吹いてきて日差しも心地よくて、お昼寝をしたら気持ちが良さそうです」


「気に入ってくれたなら嬉しいよ。さぁ席に着こう」



「王子殿下、あの、」

「ウェズリーと呼んでくれない? 私はローランの友達だよ?」
  

「ではウェズリー殿下、」


「殿下だなんて、ローランの友達なのに」


「ウェズリー様とお呼びしても?」


「うん」


「ウェズリー様はどうしてお誘いくださったのですか? 先日お会いしたばかりですのに」


「話をしたかったからだよ」

「話をですか?」


「あの時は邪魔が入ったからね。ミシェルは甘いものが好き?」

「はい好きです」

「良かった。うちの国で作っているカカオから作ったケーキを用意したんだ」

「わぁ! 良い香り、美味しそうですね。カカオは苦いのでお薬だと思っていましたけど甘い香りがします」


「食べてごらん」


「んー。甘くて美味しいです」

 甘みの中にカカオ特有の苦味が感じられるけど、ドロっとしたカカオソースがまた美味しい。カカオソースと生クリームを合わせると至福! 悶絶だ!


「美味しそうに食べるね。フルーツは好き?」

「はい好きです」

 色とりどりのフルーツが冷やされた状態で出てきてキラキラと光っていた。




「わぁ! 贅沢ですね」

「そう?」

 んー。瑞々しくて美味しい。種類豊富でどれだけでも食べられそう。

「食べっぷりが良いね」


「あの……食べているとこを見られるのは恥ずかしいです」

「ごめん、ごめん。用意した甲斐があって良いよね?」


 周りのメイドさん達に声をかけるウェズリー様に微笑み頷くメイドさん達



「……美味しくて少し食べ過ぎてしまいました」

 初めて呼ばれた先で、こんなにばくばくと食べても良いのだろうか。メイドさん達は呆れているかもしれませんね。



「遠慮しなくて良いのに」

「そういえばお話とは?」


 すっかり忘れていた。美味しいおもてなしに気を取られていた。


「ミシェルには将来を誓った人いるの?」

「え! 将来? ですか…?」

「言い換えると国に婚約者はいるの?」

「……いませんよ。いましたら侯爵様のお屋敷でお世話になりませんもの」


「そうなんだ!良かった。また誘って良い?」


「あの時の事なら本当に気にしてませんからね」


「うん。わかったよ。ありがとう」


「はぁ」


 気の抜けた返事をした理由はウェズリー様が何故だか楽しそうだから。一回目に会った時は泣いちゃったし、二回目は挨拶だけ、今日は三回目でお菓子を与えられただけ。




 そうして四回目、五回目……十回目にウェズリー様にお会いした時でした。







「ミシェルの事が好きなんだ」







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