【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの

文字の大きさ
上 下
4 / 22

過ごしやすい南の国

しおりを挟む
「お兄様、どちらへ行かれるのですか?」


 お世話になっているアラニス侯爵家の嫡男ローランお兄様です。


「今日は友達と会うんだよ」

「まぁ、そうでしたか。足を止めてしまって申し訳ございません。お気をつけて行ってらっしゃいませ」


「うん、行ってくるよ。お土産を買ってくるから帰ってきたら一緒にお茶をしよう」


「わぁ、楽しみです」



「兄上は僕にはお土産なんて買ってこないのに、ミシェルがいると買ってくるんだね」


「リベロの分も買ってくるよ、じゃあな」



 ローランお兄様は十五歳。リベロ君は十歳です。急にお世話になることになった私を優しく迎えてくれた二人にも感謝しかありません。



「ミシェル、今から何するの?」

「レース編みの続きをしようかな」

「じゃあ僕は本を読む」

「一緒のお部屋に居ても良い?」

「良いよ。でも書庫でも良いの?」

「書庫は落ち着くから捗るもの、そうしましょう」


 屋敷に穏やかな空気が流れるのは、侯爵様と叔母様のお人柄ね。


 

 そうやって一年ほど過ごした頃。



「明後日、友達を呼んでも良い?」

 ローランお兄様が晩餐の場で言いました。


「あら、そう、何人くるの?」

 叔母様が言いました。


「三人。宿題をしてランチをしたいと思うんだけど、いい?」

「もちろんよ。シェフにも伝えて頂戴」

 執事さんに言いました。


「ランチはみんなで取りましょう。ミシェルもリベロも良いわね?」

「「はい」」


 お兄様のお友達が来られるのね。そういえばこの国に来て、まともにお会いした子息って居ないわね……。

 少し緊張するけれどご挨拶はしっかりしないと、ローランお兄様に迷惑ですわね。




 そしてお約束通り、お兄様のお友達が来られました。


 お友達って……南の国の王子殿下に公爵家のご子息に伯爵家のご子息……! 


 高貴な人の集まり……気後れしてしまいました。

 少し浅黒い王子殿下が、ウェズリー・ド・シーラ様と言いました。少し長い髪の毛を緩い三つ編みにしてました。

 公爵家のご子息は眼鏡をかけていて、明らかに頭脳明晰な感じがしました。お名前はエリック・デュール様。


 伯爵のご子息は、騎士の家系だそうで、身体を鍛えられている感じがしました。お名前はロジェ・ダリュー様。


「はじめまして。去年からこちらでお世話になっています。ミシェル・アルディと申します」


「いとこなんだ、挨拶はすんだ? それじゃ部屋に行こうか?」


 王子殿下が目を見開き驚いていました。私は何か変なことを言いましたか?



「間違っていたら謝るけど、ミシェル嬢は隣国からだよね?」


「はい。そうですけれど、何かございましたか?」

「……王宮とかに行ったことはあるよね?」

「えぇ。小さい頃からお母様と一緒に、どうかされました? お会いしたことが?」


「……剣術の稽古とか見学したことは?」

「何度かあります、けど?」

 なんでそこまで知っておいでるのかしら


「髪を引っ張られて泣かされたこと、ある?」

「ん? んんん……ありますね。小さい頃でしたわね。突然のことで驚いてしまって」



「あの時は悪かった」


「え?」


「珍しい髪の色でふわふわとしていて触れたくなったんだ、泣かせるつもりはなかった」



「あの男の子は王子殿下でしたの! えっと、昔のことですし気にしてませんので、謝罪は必要ないかと」


 驚きました。あの時の男の子が、王子殿下とは知りませんでしたし、驚いて泣いてしまって失礼な事をしてしまいました……。


「ずっと気になっていたんだ、良かった会えて。ミシェルと呼んでも良いかな?」


「え? えぇ、どうぞ」


「ではミシェル、君に将来を約束した人は、」

「ウェズリー! それ以上言うな!」

 ローランお兄様の怒気を含んだ声が響きました。


「ミシェル、後で話をしようね」

 ローランお兄様に注意をされて、苦笑いをしていましたが、気にしていないようなそんな素振り。



 なんだったのかしら? 叔母様のお顔を見るとなんだか楽しそうに笑っておられました。


「なにか?」


「いえ、若いって良いわね。ウェズリー王子殿下は十六歳、年齢的にはいい感じだし、第三王子だし悪くないわねー」


「ミシェルがこの国にいるのは良いけど王子かー……微妙だ」


 叔母様とリベロ君がボソッと言った。





 ランチを一緒に取ろうと仰っていたのに、お兄様は


「ミシェルとリベロは挨拶も済んだし、たまには出かけたらどうだ? 天気もいいし、そうしなさい!」

 お勉強中だというのにお兄様は書庫へ来て、早く出掛けなさい! とまるで追い出すかのようにリベロ君と屋敷を出ました。



「急にどうしたのかしらね?」

「さぁね。でも小遣いもくれたから、何か見にいこうよ」

「そうね、お天気も良いですしね」



 久しぶりに連れてきてもらった街は今日も活気にあふれていた。カフェに行ったり本屋さんに行ったり、雑貨屋さんをはしごしたりとても楽しく過ごし、気がつくと夕方で急いで帰りました。



 途中王子殿下が乗る馬車とすれ違ったそうです。もうお帰りの時刻でしたのね。















しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...