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番外編

ブラッド君の姉の話

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『お嬢様、息子のブラッドです、ほらご挨拶をしなさい』

 子爵家に侯爵様と奥様、そしてお嬢様が顔合わせにやって来た。
 侯爵様はこの国の宰相というとても重大なポストに付いている。そんな方がわざわざ挨拶に来た。
 二つ上の兄か僕が養子として貰われて行く。
 良い人だったら良いけど、怖い人だと行きたくない。


『こんにちは、わたしカテリーナ、あなたブラッドって言うの?仲良くしてね』

 いつのまにか僕の前に立っていたカテリーナと言う少女。
 あどけない笑顔で可愛い子だった。侯爵家のお嬢様なのにこんなに人懐っこいなんて、不思議な子だ、高位貴族のお嬢様なんて気位が高そうなのに。


 一生懸命話をするので、大人しく聞いていたが、妹ってこんな感じなのかな……? 兄しかいないから分からないけど、なんだか可愛いから笑ってしまった。


『カテリーナ、ブラッド君ともう仲良くなったのか?』

侯爵様が二人の姿を見て聞いて来た

『うん、とっても楽しい』

『そうか、ブラッド君はどう?君が嫌でなければ、うちに養子に来てもらいたいと思うんだけど、無理強いはしないよ』

 侯爵様が優しく仰った


 父と相談の上、僕が養子に行く事になった。お嬢様のブラッドが良い~っと言う一言だった。僕もお嬢様と家族になれるのが嬉しかった。


『私の事は姉かリーナって呼んでね』

そう言われると、後者を取る。姉? と言うかどう見ても妹にしか思えない。

『家族になったらリーナのお家の事お願いね。女の子はお家継げないんだって。だからね、ブラッドにあげるね』

 小さな手をギュッと繋いでお願いしてくるリーナの手が温かくてうん。と言った
 僕が出来る事をちゃんとやろうと思ったから、小さな手に約束した。


 侯爵家は僕に充実した生活を与えてくれた。大好きな本に囲まれて、素晴らしい教師もつけてくれた。毎日リーナとお茶もした


 宰相を務める父と一緒にリーナは出掛ける。その時は僕は留守番だった。
 王子の元に遊びに行くのだと言う。
 ブラッドも行こ! 誘われるが行かない。
 僕はその間に勉強をする。リーナと約束したから、この家を頼まれたから、ちゃんと出来る事はする。後悔したく無い。


 よく分からないけど、リーナにはノーマンと言う執事が仕えている。


 リーナがお菓子を取り上げられていたのに、母上は何も言わない。
 どうして? 執事なのに失礼じゃないか? と聞くと、良いの良いの! 仲良しでしょう?


 ノーマンはリーナに仕えているから、私たちはリーナが嫌だって言わない限り、何も言えません。ノーマンも分かってやっているの。ほら、リーナも楽しそうに笑っているわ。私が許しているのだから、ブラッドも許してあげてね。あの子からノーマンを取り上げたら、悲しむわよ。


 なんだかそう言う関係らしい。僕がくる前の話だから分からないけど、母上が許しているのなら、それで良い。


 僕は十三歳で学園に入学する事になった。同じ歳なのにリーナはあと二年後だと言う。
『ずるい!』とリーナは言うが、あと二年で一緒に通えるから……


 ようやく二年が経ち、リーナが入学! となる少し前に、なんとなく元気のないリーナが王宮から帰ってきた。


 理由を聞くと、もう王宮に行かない。もう殿下にも会わない。遊ばないと言った。
 しばらくしてから婚約者候補から外されたと聞いた。
 毎週、リーナを呼びつけておいて何様だ!


 僕は王子を許せない! 大事な家族を傷つけた。リーナが会いたくないなら、会わせないようにするしかない


 リーナが入学をしてから、あのクソ王子が、何故かリーナに近寄ろうとする、婚約者候補から外したくせに! 他人なんだから近寄るな。


 そう思い、リーナと一緒にいた。
 家にいるとちょくちょく没収されるスイーツは学園で食べる事にしたらしい。
 クリームを口の端に付けて……幸せそうにしていた。ここでは誰も取り上げないよ……


 また王子がリーナを見てる。
 仕方がない……クリームを親指で取って舐めた。リーナは普通にありがとう。と礼を言った。
 王子がすごい目で睨んできた。
 ザマみろ! リーナを悲しませるからだ!
 なんなんだよ、あのクソ王子


気がつくといつでもどこでも見てやがる、ストーカーじゃないか! 気持ち悪い


 ランチだの、エスコートだの、デビューの祝い? 自分が何をしたか分かってるのか?


ほら! お前のせいでリーナが嫌がらせを受けている。リーナは僕にも言ってこない、何があったか聞くと何が?と惚けるが、教科書……何冊買ってるんだよ……!


 クソ王子がリーナの変化に気が付いたらしい。お前がリーナに付き纏うからこんなことになったんだろうが!
 僕だけでは調査は行き詰まってしまったから、仕方なしに協力体制を取った。


クソ王子が調査に入る前に、頭を下げて来た


『カテリーナが好きなんだ。私はそう言った感情に疎い……愚かな自分を悔やんでいる、これから信頼を取り戻せるように努力する』


 驚いた。もっとクソかと思ったら、意外と真面目だったから……だから僕は言った。


『僕よりリーナを大事にしてくれる人じゃないと嫌だ。僕の家族を悲しませる事は、例え貴方であろうと許さない!』

『君に誓うよ。カテリーナが、私を選んでくれたなら絶対裏切らない。何かあったら私を好きにして良い』


 そんな事を言われたからには、後はリーナに任せよう。リーナが誰を選んでも僕とリーナには、切っても切れない家族の縁で繋がっているから。血より濃いものってあるから。



 リーナは無自覚で変な男ばかり寄せ付ける。ストーカーに、ロリコンに、あの執事に至っては、よくわからない存在……



 男の趣味は最悪だ……



 ……リーナが幸せならそれで良い




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