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グレイソン

だから警備の責任者なのだが

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「皆さんごきげんよう」

「「「「こんにちは~」」」」

 今日は王都の孤児院へと来ていた。子供がたくさんいる中で、威圧感のある騎士達をずらっと揃えるわけにはいかない。まだ数少ない女性騎士達を孤児院内に、男達は孤児院の外を見張らせている。

「あらぁ。皆元気ね! お土産を持ってきたのよ。後で皆でおやつに食べてね」

「お姉ちゃんありがとう~」

「あ! 王子様だー。久しぶりだー」

 エリック殿下に気がついて女の子達がエリック殿下の周りに集まった。

「覚えていてくれたのだな。皆元気そうで安心したぞ」

 しゃがみこみ、女の子達の頭を撫でていく。エリック殿下はこうやって下見といいながら、孤児院によく来ていたようだ。

「あら、エリック様はこんな小さな女の子達にも人気なのね」

「そのようですね」

 その代わり女王の周りには男の子達が集まってきた。

「お姉ちゃん綺麗だね~」
「偉い人~?」
「どこの人~?」
「何しに来たの~?」
「遊んでくれる?」


 子供とは容赦ない……可愛いな。

「おじちゃんは身長が高いんだね!」
「騎士の人でしょ!」
「高い高いして~!」

 ……私は任務中だ。断ろうとするがどうやって断れば怖く見えないだろうか……リュシエンヌの顔を思い出しながら笑ってみるとか?


「あら! 閣下人気じゃない? 子供達のリクエストに応えてあげなさいよ」

「私は警備の責任者です。何かあっては私のクビだけではすみませんから、」

「わたくしの命令よ! 今日は皆で子供と遊ぶの。ほらエリック様も楽しそうよ? わたくし達も遊ぶわよ」

 はぁっ。仕方がない。外の警備達の半分を建物の中に入れた。


「閣下の高い高いの列は人気ね」
「グレイソン殿のあのような顔を初めてみた」
「そうなの?」
「私の知る限り笑った顔など見た事がなかった」
「奥様のおかげなんじゃない? さぁ。絵本を読むわよー」


「「「「わーーい」」」」

 女王は警護をする女性騎士と共に絵本を読み聞かせしていた。女王は演技派で子供達は真剣に聞いていた。


 私はといえば、子供達全員を持ち上げる事になった。筋トレだと思えば問題ない。警備に問題もなかった。


「閣下お疲れ様でした。皆楽しそうにしていて良かったですわ。わたくしは子供達の笑顔を見るのが大好きなの。国が平和じゃないと子供達の笑顔も翳ってしまうわ。ここにいる子達は理由があって親のいない子達だけれど、笑顔で健やかに育ち、幸せになって欲しいわね」

「はい、そう思います」

 寄付をしていたがこうして孤児院に足を運んだことはなかったな……怖がられると思って足が遠のいていた。


「おじちゃん、おじちゃん」

 足元に子供達が寄ってきた。おじちゃんか……

「どうした?」

 なるべく圧がかからないように、しゃがんでみた。すると背中に子供が一人、二人とおぶさってきた。

「また遊びに来てね! すごくすごく楽しかったよ! ありがとう」


 子供に喜ばれるというのは嬉しいものだな……

「そうだな、また来るよ」

 ぽんっと子供達の頭を撫でると自然に笑顔になった。

「約束だからねー!」


 手を振る子供達に手をあげて挨拶をした。


 次はカフェに行くんだったな。もちろんカフェは貸切にしてある。

 女王とエリック殿下の後ろの席に座ろうとしたら同じテーブルに着くようにと言われた。

「いえ、お二人の邪魔になりますので、私は離れた席に、」
「良いじゃない。友好を深める為でもあるのだし、このお店のオススメは何?」

 この店はガトーショコラが看板メニューだったな。リュシエンヌが友人と来た事があると言っていた。若い女性に人気の店だ。この店は警備しやすくて助かる。

「ガトーショコラがオススメです」

「それにするわ。ここにいる皆も一緒に食べましょうね。わたくし達だけが食べていても面白くないし、この時間を共有しましょう」

 ふむ。女王は飾らない性格のようだ。国にいる時よりも周りの目が気にならないのかもしれないな。

「美味しいわ。ビターなのね」
「美味いな。このような店があったとは知らなかった」
「そうなの? 国にいた時デートで来たりしなかったの? モテていたのに」
「……婚約者も彼女もいなかったから、女性人気の店に来たことはないよ」

「へぇ。閣下は?」

「下見に来た時に初めて来ました。女性人気の店に私が来るわけないでしょう」

 いるだけで令嬢達の邪魔になる。店に迷惑などかけるつもりもない。

「甘いものは食べるの?」

「食べることもありますよ」

 リュシエンヌが作ってくれるマフィンが一番好きだが、今は作っている余裕などない。リュシエンヌが食べられそうなゼリーなどを買っていくと喜んで食べてくれるし、私の口にも入れてくれる可愛い妻だ。

「え! グレイソン殿が?!」

「そりゃ食べますよ。疲れた時などにも差し入れされたものを食べたりもしますよ」

 どんな人間だと思っているんだ……まぁ良いけどな。

「その差し入れは奥様から?」

「そうですね。最近はそういうわけにはいきませんが、公開練習をしていた時はよく作って来てくれましたね」

「へぇ。すごいわね。わたくしも何か作ってみたいわ。皆が異常に反対するのよ」

 そりゃそうだろうな。リュシエンヌでさえもシェフやメイドの監視の元作っていたようだし、火は近づくことさえ許されなかったと言っていた。女王となればもっとだろう。


 今日も無事に終わって良かった。明日の予定と実家に戻りパーティーの準備の進み具合を見てこなくては行けない。



 早く帰ってくれないかな……















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