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婚約者としてパーティーに出席します2
しおりを挟む「すまない、捕まってしまった……」
レイ様が慌てて戻って来ました。十分程でしたのでよくある事ですわ。急いで戻って来てくださりましたもの。
「ふふっ。大丈夫ですわ。でもお待ちしてましたのよ?」
レイ様にもお断り出来ない方がいらっしゃるんだわ。新鮮ですわね。それからレイ様のお知り合いの方に挨拶をしてまわりました。少しだけ目がとろんとして来ましたわ。
「どうした? 眠いのか?」
「もう、レイ様ったら子供扱いですか……ちょっとだけですわよ、もしかしたら慣れないお酒が、」
「ん? 酒を飲んだのか? いつ?」
「二口だけですわ」
「……私が離れた隙に何があった?」
「レイ様の隊の方とお会いして少しお話をしましたわ。その時にカクテルを渡されて口にしました。でも二口だけです」
「……そうか。目を離すべきではなかったな。ところでどこのどいつがリュシエンヌに酒を飲ませたんだ!」
どこのどいつ……お名前を存じ上げませんのよね。
「えぇっと……」
レイ様の隊の方なのに名前を知らないなんて婚約者失格ですわ……
「なぜ言わないんだ……私がいない間に一体何が……もしかしてそいつの方が、」
何か変な方へ話がいきそうですわ!
「違いますの! レイ様に変な誤解を与えたくはないのですが……私お名前を存じ上げませんの。レイ様の隊の方なのに失礼すぎて言えませんでしたの。申し訳ありません」
名前を覚えていないなんて失礼極まりないですもの。
「名前を?」
「はい。お聞きしたとは思うのですが、わたくしレイ様と婚約したことに浮かれていて、副隊長様のお名前くらいしか覚えていませんの。練習中はレイ様に夢中で周りの声も聞こえませんし……他の方に興味はありませんもの。お話しされた方は人気No.3の騎士様ですわ。茶色の髪の、」
「シオンか……」
「確かそんなお名前でしたわ! スッキリしましたわ」
そうですわ! 人気No.3のシオン様ね!
「……離れた私が悪いのだが、何かあっては困る。これからは遠慮せずに私を呼びに来て欲しい」
「レイ様が他所行きのお顔でお話をされている姿を見ているのもわたくし好きですわ」
「そんな可愛い事を言ってもダメだ。離れた私が悪いのだが、リュシエンヌが誰かといると思うと腹立たしい」
「ふふっ大丈夫ですわよ? わたくしはレイ様一筋ですから」
肩に腕を回されてギュッとレイ様の胸元に寄せられましたわ! 私はこの厚い胸板が大好きですわ。
「くそ、今日も可愛いな」
「レイ様大好きですわ」
「あまりそう言うことは、こんな所で言わないでくれ……」
「だーい好きです」
「……酔っているのか?」
「うーん、どうでしょう」
レイ様に抱きつきました。酔っているのかもしれませんわね? そうすると優しく背中に手を当てられました。
「隊長ではないですか」
「シオンか」
人気No.3の騎士様ですわね。もうお名前は覚えましたわ。せっかくレイ様と良い感じでしたのに。
「リュシエンヌちゃん、今日も綺麗だね」
あら、このお声は。レイ様の胸から離れてご挨拶しました。
「副隊長様、御機嫌よう。騎士様も先ほどはありがとうございました」
「リュシエンヌから聞いた。私が離れていた間にシオンが相手をしてくれたそうだな」
レイ様に肩を抱かれました。婚約者って役得ですわ!
「いえ、大したことはしておりません。少しお話をさせてもらっただけです」
「リュシエンヌちゃん、良かったら私とダンスを、」
「え、ずるいですよ! 副隊長、モルヴァン嬢、私と、」
「しなくて良いぞ。お前達と踊りたい令嬢が待ちかねている。それに私たちはそろそろ失礼する」
「え、もう帰るのか? リュシエンヌちゃんとまだダンスしてないのに!」
「……しなくても良いと言った。リュシエンヌ帰るぞ」
「あ、はい。それではお先に失礼します」
長居は無用と言う方もいますし、挨拶は終わりましたものね。腕を組んで歩き出しました。
「レイ様、お久しぶりの方もいらっしゃるのでしょう? よろしいのですか?」
「あぁ、問題ない。久しぶりなのは私が華やかな場に参加してなかったからだ。リュシエンヌがいるからこれからはなるべく参加する様にする。だから問題ない」
レイ様はあまりパーティーに顔を出さなかったのですわね。伯父様の家のパーティーは、珍しく参加されたとのことですわ。珍しい誘いだったから裏があるのかと思った。との事でしたけれど、あの場でお会いしたのも運命ですわね。
「リュシエンヌ、酔いは覚めたか?」
「なんのことですの?」
「酔っているから、その、あんな事を言ったのかと、思ってだな」
あんな事? ってなんですの?
「わたくし何か変なことをいいましたか? レイ様が気に障るような、」
「違う、そうでなくだな、大好きだとか、」
ごにょごにょと口籠もりましたわ。
「本心ですわ。レイ様が好きなので酔ったふりをしてどさくさ紛れに伝えたのですわ」
「そう、か……それなら、良い」
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「それは、いつでも良い。酔ったふりなどしなくても好きな時にいつでも甘えてくれ。その方が嬉しい」
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「レイ様?」
「すまない、耐えきれずつい」
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「大好きです。レイ様!」
レイ様の胸に飛び込んだ所で馬車が来てしまいました。残念ですわ……
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