73 / 100
子爵令嬢2
しおりを挟む
「優しく……」
「そうよ。女の子は優しい言葉を待っているの。自分だけの王子様を待っているのよ」
ここまできて何を言ってるの? 寝ているモルヴァン嬢の顔をただただ見つめているだけだなんて。
両手両足は縛ってあるし、好きにすれば良いじゃない! 好きにしたところで私はこっそり出て悲鳴をあげ、モルヴァン嬢とシオン様が……と目撃者になればシオンに責任を押し付けられる。あの隊長もショックを隠せないでしょうね。
そもそも騎士団は精鋭部隊で、容姿も重要視される筈なのに厳つい強面が隊長なのよ! しかもこれからだという新人相手に容赦なく打ちのめすだなんて!
これは体罰だわ! 投書箱に何度も隊長を副隊長に譲るべきだと書いて出したわ!
やっとレオン様が隊長になれる。と小耳に挟んだの!
やっとあの隊長が解任されるのか。と胸を撫で下ろしたら【本部騎士団副団長補佐官】ですって!! 最短でエリートコースにのってんじゃないわよ!
本部の騎士団長といえばあの隊長の父親でアルヌール公爵が務めていたわ! 退団したから息子を本部に入れるなんて世襲制っていうのよ! と言うことは隊長は特に秀でるところがなくとも騎士団長になれる? ふざけているわ!
容姿が優れていてもっと優秀な騎士がたくさんいると言うのに。陛下も口出さないところを見ると、身内には甘いんでしょうね! 王族から排出するなら第二王子は美形なんだから第二王子を騎士団に入れれば良かったのよ!
なんで遠い国の王配になんてしたのよ! たまにしかお目にかかれない第二王子は人気だったんだから!!
「早く手を出さないと起きちゃうわよ!」
「意識のない令嬢に手を出すなんて出来ない」
こいつバカなの? 意識があったら拒絶されるに決まってるのに……ずっとモルヴァン嬢を見つめてうっとりしているなんて……変態??
「キスでもなんでも良いからしなきゃ、口実が作れないわよ」
「モルヴァン嬢の瞳に私だけを写して唇を塞ぎたい」
モルヴァン譲の頬に手を当てうっとりとするシオン。正直言って気持ちが悪い。
「寝ている姿も美しい……寝姿を見ているだけで食事が進みそうだ」
だから気持ちが悪いんだってば! モルヴァン嬢って変な男を惹きつける才能でもあるのかしら? ……あ、そういえば!
「ほら。モルヴァン嬢の持ってきてたバスケット」
隊長への差し入れでしょう。あんな男と一緒に食事して何が楽しいのかしら? バスケットを受け取り歓喜の声を上げた。
「こんな豪華な差し入れは見た事がない。キレイに並んだサンドイッチ、マフィン、フルーツ。くそ……隊長め。いつもこれを独り占めしていたのか」
サンドイッチに手を伸ばし頬張るシオン。
「はぁっ……なんて美味いんだ。料理が上手なんだね、リュシエンヌ」
急に名前で呼び始めるシオン。料理上手って……そんなのシェフに作らせているに決まってるでしょうに……バカなの?
「マフィンも手作りなのかな? リュシエンヌから甘い香りがするのはマフィンのせいかも……」
モルヴァン嬢に近づき匂いを嗅いでいた……この光景をずっと見ているのも辛いわね……良い加減に目を覚まして欲しいわ……
そしてようやく
「ん、んんっ……」
と声を上げたので私はさっと隠れた。
「リュシエンヌ目覚めましたか?」
シモンが声をかけた。
「……ここは? 確かわたくしは練習場で……」
息がきれそうになっているモルヴァン嬢。意識がなかったのだから仕方がないわよね。そういう薬だもの。
「あぁ、体調が良くないのですね。無理はしない方が良いですね」
いいからとっとと手を出せ! ヘタレ!!
「私がリュシエンヌの看病をしますから安心して下さい」
モルヴァン嬢の手をぎゅっと握り締めているシオン。
「……やめてください、ここはどこですか、私のメイドと護衛をどこにやったのですか」
「リュシエンヌのメイド達は安全な場所で眠っている。少し大人しくしてもらう必要があったから、もうすぐ解放しますよ」
「手を離してください。わたくしはグレイソン様の婚約者ですわよ? もしこんな事が、」
「ですからリュシエンヌを私のものにしてしまいます。隊長より私の方が年齢的に合うでしょうし大事にしますよ」
そっとシオンはモルヴァン嬢の手にキスを落とした。両手を縛られているから抵抗が出来ないみたい。やめて下さい。と口だけは抵抗出来るのだけど、それも時間の問題。騎士の力に適うはずがないものね。
「リュシエンヌ……」
シオンが椅子に座らされているモルヴァン嬢の前に膝をつき、モルヴァン嬢の胸に顔を埋めた……今ね! 部屋をこっそりと抜け出し廊下へ出た。すると隊長とレオン様が……
「……大変ですのよ、こちらの部屋で、」というなり隊長とレオン様が凄い勢いで部屋に入る。自分の婚約者が不貞をしている姿を見てあの女に幻滅すれば良いわ!
「そうよ。女の子は優しい言葉を待っているの。自分だけの王子様を待っているのよ」
ここまできて何を言ってるの? 寝ているモルヴァン嬢の顔をただただ見つめているだけだなんて。
両手両足は縛ってあるし、好きにすれば良いじゃない! 好きにしたところで私はこっそり出て悲鳴をあげ、モルヴァン嬢とシオン様が……と目撃者になればシオンに責任を押し付けられる。あの隊長もショックを隠せないでしょうね。
そもそも騎士団は精鋭部隊で、容姿も重要視される筈なのに厳つい強面が隊長なのよ! しかもこれからだという新人相手に容赦なく打ちのめすだなんて!
これは体罰だわ! 投書箱に何度も隊長を副隊長に譲るべきだと書いて出したわ!
やっとレオン様が隊長になれる。と小耳に挟んだの!
やっとあの隊長が解任されるのか。と胸を撫で下ろしたら【本部騎士団副団長補佐官】ですって!! 最短でエリートコースにのってんじゃないわよ!
本部の騎士団長といえばあの隊長の父親でアルヌール公爵が務めていたわ! 退団したから息子を本部に入れるなんて世襲制っていうのよ! と言うことは隊長は特に秀でるところがなくとも騎士団長になれる? ふざけているわ!
容姿が優れていてもっと優秀な騎士がたくさんいると言うのに。陛下も口出さないところを見ると、身内には甘いんでしょうね! 王族から排出するなら第二王子は美形なんだから第二王子を騎士団に入れれば良かったのよ!
なんで遠い国の王配になんてしたのよ! たまにしかお目にかかれない第二王子は人気だったんだから!!
「早く手を出さないと起きちゃうわよ!」
「意識のない令嬢に手を出すなんて出来ない」
こいつバカなの? 意識があったら拒絶されるに決まってるのに……ずっとモルヴァン嬢を見つめてうっとりしているなんて……変態??
「キスでもなんでも良いからしなきゃ、口実が作れないわよ」
「モルヴァン嬢の瞳に私だけを写して唇を塞ぎたい」
モルヴァン譲の頬に手を当てうっとりとするシオン。正直言って気持ちが悪い。
「寝ている姿も美しい……寝姿を見ているだけで食事が進みそうだ」
だから気持ちが悪いんだってば! モルヴァン嬢って変な男を惹きつける才能でもあるのかしら? ……あ、そういえば!
「ほら。モルヴァン嬢の持ってきてたバスケット」
隊長への差し入れでしょう。あんな男と一緒に食事して何が楽しいのかしら? バスケットを受け取り歓喜の声を上げた。
「こんな豪華な差し入れは見た事がない。キレイに並んだサンドイッチ、マフィン、フルーツ。くそ……隊長め。いつもこれを独り占めしていたのか」
サンドイッチに手を伸ばし頬張るシオン。
「はぁっ……なんて美味いんだ。料理が上手なんだね、リュシエンヌ」
急に名前で呼び始めるシオン。料理上手って……そんなのシェフに作らせているに決まってるでしょうに……バカなの?
「マフィンも手作りなのかな? リュシエンヌから甘い香りがするのはマフィンのせいかも……」
モルヴァン嬢に近づき匂いを嗅いでいた……この光景をずっと見ているのも辛いわね……良い加減に目を覚まして欲しいわ……
そしてようやく
「ん、んんっ……」
と声を上げたので私はさっと隠れた。
「リュシエンヌ目覚めましたか?」
シモンが声をかけた。
「……ここは? 確かわたくしは練習場で……」
息がきれそうになっているモルヴァン嬢。意識がなかったのだから仕方がないわよね。そういう薬だもの。
「あぁ、体調が良くないのですね。無理はしない方が良いですね」
いいからとっとと手を出せ! ヘタレ!!
「私がリュシエンヌの看病をしますから安心して下さい」
モルヴァン嬢の手をぎゅっと握り締めているシオン。
「……やめてください、ここはどこですか、私のメイドと護衛をどこにやったのですか」
「リュシエンヌのメイド達は安全な場所で眠っている。少し大人しくしてもらう必要があったから、もうすぐ解放しますよ」
「手を離してください。わたくしはグレイソン様の婚約者ですわよ? もしこんな事が、」
「ですからリュシエンヌを私のものにしてしまいます。隊長より私の方が年齢的に合うでしょうし大事にしますよ」
そっとシオンはモルヴァン嬢の手にキスを落とした。両手を縛られているから抵抗が出来ないみたい。やめて下さい。と口だけは抵抗出来るのだけど、それも時間の問題。騎士の力に適うはずがないものね。
「リュシエンヌ……」
シオンが椅子に座らされているモルヴァン嬢の前に膝をつき、モルヴァン嬢の胸に顔を埋めた……今ね! 部屋をこっそりと抜け出し廊下へ出た。すると隊長とレオン様が……
「……大変ですのよ、こちらの部屋で、」というなり隊長とレオン様が凄い勢いで部屋に入る。自分の婚約者が不貞をしている姿を見てあの女に幻滅すれば良いわ!
13
お気に入りに追加
3,737
あなたにおすすめの小説
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる