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夜会があります
しおりを挟む夜会に招待されました。
夜会の会場はお母様の実家です。お母様の実家は伯爵家で、ハリスとパティも出席します。これからのことを考えて場数を踏んでおこうという事になり、家族揃っての参加になりました。
お父様とお母様がパートナー。ハリスとパティがパートナー。
えぇ。私は婚約者がいませんので一人で……というわけには参りませんので、伯父様の息子で嫡男のブリュノ兄様がパートナーを務めてくれますの。
ブリュノ兄様は留学から帰って来たばかりで、婚約者がいません。年齢は二十一歳なのでそろそろ相手を! との事ですわ。嫡男ですものねぇ。
そんなこんなでパーティー当日。ブリュノ兄様と久しぶりに会ってダンスを踊りました。ハリスとパティも上手にダンスが踊れて姉としてホッとしましたわ。
私はハリスとダンスを、パティはブリュノ兄様とダンスをしていました。それからブリュノ兄様は沢山の令嬢を紹介されてくたくたになっていました。
「……勘弁してくれよ。紹介されすぎて一人も覚えていない」
それは失礼極まりないですわよ? 次々に紹介されるものだからお疲れの様子です。
「ブリュノ兄様のお口から魂が抜け出ていますわ……」
くすくすと笑う。
「リュシーも大変だったんじゃないか? 父上がリュシーの相手も探そうと躍起になっている」
伯父様は不憫に思った私の相手も見つけようとして、伝手を使い子息達を呼んでくれたみたいですの。
「えぇ、そうですわね……」
「はぁ。疲れたな……何か飲むか? 気にしなくて良いよ、変なものは入ってない。ほら、伯爵も叔母上もワインを楽しんでいる」
普段パーティーでドリンクは口にしないお二人だけど、お母様にとっては実家ですものね。知らない人に渡されたものは絶対に口にしないというルールはブリュノ兄様もご存知なのね。
「それなら果実水が飲みたいですわ」
「取ってくる。少し待ってて」
ウェイターに声をかけ果実水を持って来てくれるブリュノ兄様。
「ありがとうございます。兄様はワインじゃなくて良いのですか?」
「寝る前には飲むけどいま酒に酔うと面倒くさそうだから意識はしっかり保っておこうと思う」
成程……そういう考えもあるのですね。ブリュノ兄様が意識をなくなるほどお酒に呑まれるとは思いませんが、いろいろと面倒なのですね。
「それにしても色んな人が来てるね。普段は会えないような人まで……父上凄いな」
がっちりした体型の方が数人いらっしゃるけれど騎士の方なのかもしれませんわね。正装でも体型でなんとなく分かってしまうものなのですね。
「見てみろ、パティが楽しそうにダンスをしている。リュシーより先に相手が決まるかもしれないぞ?」
子息たちにダンスに誘われて数人の子息と踊っていますわ。
「あら。それをいうならハリスも頑張って社交をしていますわ。令嬢達に囲まれていますもの。ブリュノ兄様よりも先に相手が決まるかもしれませんわよ?」
うちのハリスとパティが……成長したわ。と思うと感慨深いですわ。
「ハリス、やるじゃないか! あれ、今来たゲストもいるようだ。大きい人だな」
……!
「まぁ。閣下ですわ! アルヌール公爵家の方ですのよ」
「公爵家の方? よくこんなところに足を運んでくれたものだ……」
……こんな所って伯父様に失礼ですわよ。
「知り合いなのか?」
「お話をしたことがあるくらいです」
「よし、挨拶に行こう」
「えぇ」
丁度伯父様が挨拶をしていらしたので、邪魔にならない距離で待機していましたの。閣下はまだ気がついておられませんわね。
「おぉ、ブリュノ今呼びに行こうとしていた所だ。閣下は三ヶ月前に王都に戻って来られたんだ。お会いするのは初めてだろう?」
お兄様が挨拶をしていた。
「そちらは、婚約者の方かな?」
閣下がようやく私を見て固まった。気が付かれましたのね?
「閣下、このような場所でお会いするのは初めてですわね」
「……あぁ。モルヴァン嬢か」
なんだか素っ気ない返事でした。先日の事、怒っていらっしゃるのかもしれませんわね。
「閣下とリュシーは知り合いだったのか?」
伯父様は意外だという顔で私を見てきます。
「何度かお話をさせていただきましたの」
「えぇ、そうです」
閣下も頷いてくれました。
「リュシーは私の姪っ子でして、本日は息子のパートナーをしてもらっているんですよ。息子には残念ながら相手がいなくて、」
「それを言うならリュシーにもいないけど」
ブリュノ兄様ったら自分のことを棚にあげたわ! むすっとした顔をして睨んでみましたわ!
「リュシーせっかくだから閣下とダンスをしてもらったらどうだい? まだブリュノとハリスとしか踊ってないだろう? 閣下宜しければ是非」
……伯父様ったら迷惑でしょう!
「閣下、ご迷惑でしたら、」
「いや。私も来たばかりですのでモルヴァン嬢さえ良ければ、ダンスを申し込みたい」
……嘘!? 閣下とダンスを?
「喜んでお受けいたしますわ」
閣下の口元が綻んだように見えました。嫌ではないのですよね?
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