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なんですと
しおりを挟む「やぁ。待っていたよ」
「殿下、本日はお招きいただき誠に有難うございます」
ここは王宮。きちんと礼をしなくてはいけません。殿下と約束をしてしまったので、侍女とメイドと護衛を連れて行くようにとお父様に言われました。人数が多すぎても少なすぎても失礼に当たりますし、伯爵家令嬢ごときが使用人をぞろぞろと連れて歩く訳にもいけませんし……。
「誘ったのは私だから、気にしなくて良い。学園の友人として君を招待しているのだから、殿下ではなく名前で呼んでくれたら嬉しいかな」
……殿下を名前で呼べと? 無理です。返事を返さず微笑んでいた。友人? も無理です。
「これは手強いな……リュシエンヌ・モルヴァン令嬢」
……手を? 出せと仰るのですか?! 私は人目につきたくないのです! どうしましょう!
「……殿下? 友人にエスコートは必要ありませんわ」
「私は友人だと言ったのに返事がないから令嬢としてエスコートしようと思ったんだけど、これも違うの?」
……あぁ言えば、でもエスコートは困ります。二択なのなら……
「エリック殿下とお呼びしても宜しいでしょうか……」
「もちろん嬉しいよ。殿下はいらないんだけど、」
「それは、ちょっと……殿下の名前をお呼びするだけでも畏れ多いのですからお許しくださいませ」
「そっか……いつか慣れたら省略して欲しい。私は君のことをなんて呼べば良いかな?」
「友人は皆、名前で呼んでいますわ」
「そう? それではリュシエンヌ行こうか?」
……呼び捨てですか。まぁ構いませんが。王宮の敷地内にある王宮図書室まで歩いて行きます。殿下の侍従の方と護衛の方もいますので結局は大人数になってしまいましたわ。
王宮の図書館に行きますと入館できるようになっていました。入館許可証は次回名前を言えばくださるのだそうです。殿下は本当に申請して下さっていたのですね。これは有難いですわね。一ヶ月かかるはずか、一週間も掛からないなんて! 学園が早く終わった時に来てもよろしいですし、学園が休みの日にも! 憧れの王宮図書館ですもの。
「殿下、ありがとうございました!」
「エリックだよ、リュシエンヌ」
にこりと微笑む殿下。
「失礼致しました」
本当にこの件に関しては殿下に感謝しかありませんわ。憧れの王立図書館ですもの。
「本当に嬉しそうだね。リュシエンヌには宝石やドレスなんかより歴史書をプレゼントした方が喜ばれたりしてね。ってリュシエンヌ聞いてる?」
きょろきょろと図書館を見回すリュシエンヌ。
「あはは。聞いていないね。まぁいいや。楽しんでくれているようだし。今日は貸し出しは出来ないけれどシステムを紹介するよ」
貸し出しが出来なくてもここで本を読ませてくださるだけでも良いのだけど……とはいえませんわね。貸し出しシステムは理解致しました。とにかく入館証を手に入れなくてはいけませんものね。学園が早く終わる日に入館証をいただきに参りましょう。
図書館は二階建てになっていて、蔵書の多さに驚きましたし、紙とインクの香りが心を落ち着かせてくれました。
「お腹空かない?」
時計を見ると正午を少し過ぎた時間帯でした。
「いえ、大丈夫ですわ……」
正直図書館の香りで胸が一杯で、空腹を感じませんでした。
「せっかくだからランチをしてお茶を飲まないか? リュシエンヌには軽食を用意させるよ」
「え、そこまでお世話になるわけには、」
「まだバラ園も行ってないし、こんな機会中々ないんだから付き合ってよ」
「はい」
……入館証の借りがあるので、ここで失礼します。とは言えませんもの。
「来客が来た時に使われる部屋なんだけど、景色が良いから開け放しておくように言ってあったんだ」
「素敵です!」
池があって鯉が泳いでいて、異国情緒あふれる庭園なんですね! 竹が伸びていて風が吹くとさらさらと葉が擦れる音も心地がいいでわすわ。
殿下はうちの侍女やメイド護衛にも軽食を用意して下さっていました。至れり尽くせりで申し訳ないですわ。
軽食はフレンチトーストで、しっとりしていてとても美味しく頂きました。
学園の話やテストの話を面白おかしく話して下さって殿下は実は良い人なのかも? 少しだけですけどそう思いました。
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