3 / 100
婚約破棄の立会い
しおりを挟む
~エリック(第二王子)視点~
「これで婚約破棄が出来るね。アルバートこれで満足かい?」
第二王子エリックはアルバートに微笑みかける。
「あぁ、助かった。ありがとう! 立会人が殿下で良かったよ。婚約破棄を言い渡されても泣きもしないなんて本当に生意気な女だ。最後まで可愛げがない」
ふん。っと鼻息を荒くするアルバート。
「そうかい? とても凛として素晴らしい令嬢だと思ったよ」
「凛としている? はっ。生意気なだけですよ」
「滲む出る知性は隠しきれないんだね」
「? 知性が出てましたか? 女なんてものは男を立ててくれるほど良い女だと思う。“さすがです!”と言われれば嬉しいし“知らなかったです!”と言われれば教えてやりたくなるし“素敵です!”と言われれば悪い気はしないし“センスがある!”と言われれば何かをプレゼントしたくなるし“そうなんですか!”と言われれば興味があるんだな。と思い相手に好意を持ってしまうものではないですか?」
アルバートは誰を思い浮かべながら話をしているのだろうか?
「単純だな、君は」
呆れた口調でエリックは言う。好いている相手に言われると嬉しいだろうが、そこまで単純だと恥ずべき事だ。
「これで君も彼女との縁が切れたんだから、今後は彼女に近寄らないように。そうしないと私の立場も悪くなるからね」
エリックは笑いながらアルバートに顔を寄せた。その顔は何故が薄ら恐ろしいと思えるほどの笑みだった。
「え? あ、あぁ。それはもちろん。親同士が勝手に持ってきた話で、私は納得していなかったから」
「そうかい。それなら良いんだ。大きくいうと性格の不一致という事だし、成績が悪くて美しくなく、人気がなく爵位は高いか低い女性が好みだもんな。彼女は当てはまらない」
「? なんだそれは? 殿下流石にそれはジョークが過ぎるよ」
鼻で笑ってしまうアルバート。意味がわかっていない様子だ。
「彼女は美しく努力家で、困っている生徒がいたら身分問わず声をかけるような優しい人だ。そんな彼女を慕っている生徒は多い」
「みんな騙されているんでしょう。彼女の親もうちの鉱山目当てで婚約を結んだんでしょう」
アルバートの家は傾きかけている。鉱山を買ったまでは良かったが採掘費用が重くのしかかってきている。人を雇うのもお金がかかるし、そもそも思っている物が採掘されていないので借金が嵩んでいる。各所から不満の声も上がっているのだった。
「鉱山ねぇ……」
「それに、リュシエンヌの話は大した事ないし、違うといっても納得しないし、つまらないし、適当に聞き流していました。今考えてみてもとんでもない女ですよ……」
「彼女の話についていけなかっただけじゃないのか?」
とぽつり言ってみるが聞こえていないようだ。
「あ、そろそろ私は失礼します。両親に今日のことを報告しなくてはいけませんから」
「あぁ、分かったよ。今日のことは公にしてくれるなよ」
「もちろん。殿下に迷惑のかからないようにしますよ」
そういってアルバートが部屋を出て行った。その様子を見て思った。自分の家がどういう立場にあるのか、自分の婚約していた相手がどれだけ素晴らしい令嬢だったかということに。
それにしてもリュシエンヌ嬢は本当に美しい令嬢だ。学園で話しかけようと思っても彼女の周りにはいつも人がいて話しかけることが出来ないからな。今回の事がきっかけで話しかけることが出来るだろうか。
まずは挨拶から始めよう。声をかけても不自然ではないだろう。婚約破棄をされて傷心だろうからその心に寄り添えばいい。
私は第二王子でいずれ爵位を貰い王家が所有する領地を経営することになる。その時はリュシエンヌ嬢が一緒にいて欲しい。誰にでも優しく優秀な彼女は領民にも好かれるだろう。今持っている領地の中では南の領地が心地良さそうだ。温暖な気候で作物もよく育ち避暑地としても人気がある。
普段は領地で過ごし避暑を楽しむ貴族たちとのパーティーで情報交換をするというのはどうだろう。完璧な計画だな。
「これで婚約破棄が出来るね。アルバートこれで満足かい?」
第二王子エリックはアルバートに微笑みかける。
「あぁ、助かった。ありがとう! 立会人が殿下で良かったよ。婚約破棄を言い渡されても泣きもしないなんて本当に生意気な女だ。最後まで可愛げがない」
ふん。っと鼻息を荒くするアルバート。
「そうかい? とても凛として素晴らしい令嬢だと思ったよ」
「凛としている? はっ。生意気なだけですよ」
「滲む出る知性は隠しきれないんだね」
「? 知性が出てましたか? 女なんてものは男を立ててくれるほど良い女だと思う。“さすがです!”と言われれば嬉しいし“知らなかったです!”と言われれば教えてやりたくなるし“素敵です!”と言われれば悪い気はしないし“センスがある!”と言われれば何かをプレゼントしたくなるし“そうなんですか!”と言われれば興味があるんだな。と思い相手に好意を持ってしまうものではないですか?」
アルバートは誰を思い浮かべながら話をしているのだろうか?
「単純だな、君は」
呆れた口調でエリックは言う。好いている相手に言われると嬉しいだろうが、そこまで単純だと恥ずべき事だ。
「これで君も彼女との縁が切れたんだから、今後は彼女に近寄らないように。そうしないと私の立場も悪くなるからね」
エリックは笑いながらアルバートに顔を寄せた。その顔は何故が薄ら恐ろしいと思えるほどの笑みだった。
「え? あ、あぁ。それはもちろん。親同士が勝手に持ってきた話で、私は納得していなかったから」
「そうかい。それなら良いんだ。大きくいうと性格の不一致という事だし、成績が悪くて美しくなく、人気がなく爵位は高いか低い女性が好みだもんな。彼女は当てはまらない」
「? なんだそれは? 殿下流石にそれはジョークが過ぎるよ」
鼻で笑ってしまうアルバート。意味がわかっていない様子だ。
「彼女は美しく努力家で、困っている生徒がいたら身分問わず声をかけるような優しい人だ。そんな彼女を慕っている生徒は多い」
「みんな騙されているんでしょう。彼女の親もうちの鉱山目当てで婚約を結んだんでしょう」
アルバートの家は傾きかけている。鉱山を買ったまでは良かったが採掘費用が重くのしかかってきている。人を雇うのもお金がかかるし、そもそも思っている物が採掘されていないので借金が嵩んでいる。各所から不満の声も上がっているのだった。
「鉱山ねぇ……」
「それに、リュシエンヌの話は大した事ないし、違うといっても納得しないし、つまらないし、適当に聞き流していました。今考えてみてもとんでもない女ですよ……」
「彼女の話についていけなかっただけじゃないのか?」
とぽつり言ってみるが聞こえていないようだ。
「あ、そろそろ私は失礼します。両親に今日のことを報告しなくてはいけませんから」
「あぁ、分かったよ。今日のことは公にしてくれるなよ」
「もちろん。殿下に迷惑のかからないようにしますよ」
そういってアルバートが部屋を出て行った。その様子を見て思った。自分の家がどういう立場にあるのか、自分の婚約していた相手がどれだけ素晴らしい令嬢だったかということに。
それにしてもリュシエンヌ嬢は本当に美しい令嬢だ。学園で話しかけようと思っても彼女の周りにはいつも人がいて話しかけることが出来ないからな。今回の事がきっかけで話しかけることが出来るだろうか。
まずは挨拶から始めよう。声をかけても不自然ではないだろう。婚約破棄をされて傷心だろうからその心に寄り添えばいい。
私は第二王子でいずれ爵位を貰い王家が所有する領地を経営することになる。その時はリュシエンヌ嬢が一緒にいて欲しい。誰にでも優しく優秀な彼女は領民にも好かれるだろう。今持っている領地の中では南の領地が心地良さそうだ。温暖な気候で作物もよく育ち避暑地としても人気がある。
普段は領地で過ごし避暑を楽しむ貴族たちとのパーティーで情報交換をするというのはどうだろう。完璧な計画だな。
23
お気に入りに追加
3,731
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
妹に全てを奪われるなら、私は全てを捨てて家出します
ねこいかいち
恋愛
子爵令嬢のティファニアは、婚約者のアーデルとの結婚を間近に控えていた。全ては順調にいく。そう思っていたティファニアの前に、ティファニアのものは何でも欲しがる妹のフィーリアがまたしても欲しがり癖を出す。「アーデル様を、私にくださいな」そうにこやかに告げるフィーリア。フィーリアに甘い両親も、それを了承してしまう。唯一信頼していたアーデルも、婚約破棄に同意してしまった。私の人生を何だと思っているの? そう思ったティファニアは、家出を決意する。従者も連れず、祖父母の元に行くことを決意するティファニア。もう、奪われるならば私は全てを捨てます。帰ってこいと言われても、妹がいる家になんて帰りません。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる