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突然の婚約破棄

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「リュシエンヌ・モルヴァン悪いが君との婚約は破棄する」

 王宮に呼び出されたかと思うと、婚約者のアルバート・レフィ・コリンズ伯爵令息に急に告げられました。立会人にはアルバート様の友人で第二王子殿下がいました。


「……理由をお聞かせいただいても宜しいでしょうか?」

「ふん。普通は婚約破棄と言われると、どこか自分に悪いところがあったんじゃないかと泣き崩れるもんだろうが、そういう生意気なところだ。そういう態度が気に入らない!」

 婚約破棄の理由は生意気だから? という事です。性格の問題ですわよね。


「そうですか。性格の不一致。という事で宜しいのでしょうか?」

 微笑むリュシエンヌ。

「そう言っているだろう! 大体女の分際で成績はトップクラスだし男を立てるという事を知らない気遣いの出来ぬような婚約者は望ましくない」

 成績が悪くて殿方をヨイショする令嬢が好みという事ですね? それならばわたくしはアルバート様の望む女性にはなれませんわね。

「成績が良く、ほんの少し人より美しく生まれ育ち、伯爵家の令嬢に過ぎない君が、学園で人気があるのも生意気だと思っていた。君といると私の影が薄くなるようだ」

 成績が悪くて美しくなく、人気のない中途半端な爵位ではない? 女性が好みとおっしゃるのかしら? 人の好みはそれぞれですものね。


「それに君は口うるさいところがある。リーディアが少し廊下を走っていただけで注意をしたり、庭園で摘んだ花が気に入らないと言って注意をしたり、お茶の淹れ方を注意したり、挙げ句の果てにもう少し勉強をしろ。と言ったそうじゃないか。もう伯爵夫人気取りなのか?」


 確かに注意はしましたわ。リーディアさんはアルバート様の家の新人メイドで、そそっかしい方。
 
 勢いよく屋敷の廊下を走るものですから、わたくしのメイドがぶつかって転んでしまい足を怪我しましたし、リーディアさんが持っていた運んでいたタオルはぶつかった衝撃で廊下に散乱し、全て洗濯のやり直しとなったそうです。アルバート様の家からはうちのメイドに怪我をさせてしまったと、謝罪を受けました。


 花は食堂に飾るといっていましたのに、香りの強い花や、花粉が落ちやすい花を選ぶものですからもう少し勉強をなさっては? と申しましたわ。するとリーディアさんは“私も貴族の端くれです。貴方にそんな事を言われる筋合いはない”と言われました。それについても謝罪を受けましたわ。

 お茶の件は、リーディアさんが毎回手元が狂ったといい、お茶を溢すものですから、わたくしのドレスに染みが……もう少し練習をしてからお客様の前に出るべきだと思ったのが顔に出てしまったのかしら? ドレスの件についても謝罪を受けましたわ。

 リーディアさんはスプーンより重たいものは持ちたくない。と言い注意を受けたそうです。

 リーディアさんとアルバート様は仲が良いようですから、リーディアさんを庇いたいのでしょうね。アルバート様のお家の分家筋の男爵家の三女らしいですわ。


 
「リュシエンヌ! 聞いているのか、何か言ったらどうだ!」

「あら、申し訳ございませんでした。少し考え事を……」

「余裕だな! 婚約破棄をされた女なんて嫁の貰い手はないと思うがいい!」

 古い考え方ですわね。はぁっ。とため息を一つ吐いてしまいましたわ。レディとしてはあり得ませんが、どうかお許しくださいませ。

「婚約破棄の件は了承いたしました。用件は以上でしょうか? 以上でしたらわたくしは帰らせていただきますわ。殿下におきましてはこのような話につき合わせてしまいまして申し訳ございません」

 立ち上がり挨拶をした。

「いや、私のことは気にしなくて良い。単なる立会人だよ」


 立会人などと言いながら、何故だかご機嫌な面持ちが薄気味悪いだなんて……不敬罪で捕まってしまいますわね。心の中に留めておきましょう。


「殿下は私の友人として、立会を申し出てくれたんだぞ」

 悪趣味なのか、おせっかいなのかどちらかなのでしょうね。
 
「殿下わざわざ王宮の応接室までお借りしてこのような場を設けていただいて大変申し訳ありませんわ。それでは失礼いたします」


 わざわざ王宮で殿下の貴重な時間を割いてまでしなくてはいけない話だったのかしら? と思いつつも早く家に帰って両親に報告しなくては。と足を早めたのだった。

 
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