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ジェラール様が抗議をして来ました

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「おい!」

 バタンっ! 

 と執務室の扉を許可なく開きました。



「あら? ジェラール様。急にどうかされましたの?」


 扉を急に開けるなんて不作法にも程がありますわね。控えていた侍女も驚いています。

 例え同じ屋敷に住んでいたとしても、扉をノックされて侍女が取り継ぐ、これが作法というものです。



 そ・れ・に! いくら同じ屋敷にいるとはいえ、今から行きます、時間を作ってください。と言うのが作法ですのよ。


 私が執務室にいると言うことはジェラール様と違って仕事中ですから……



「急なもんか! なぜこんな嫌がらせをするんだ!」


「嫌がらせですか……? なんのことですか?」


「部屋に閉じ込めただろう!」


「先生のおっしゃる通りにしたのですよ。クララさんは体調が悪いのでしたわね」


「………………」


 返事がない。と言うか返事ができないのかしらね。


「ジェラール様、書類は終わりましたか?」


 話を変えた。出来ていないのも知っているし、なんて答えるのかも楽しみだと思った。うん。私の性格の悪さったらないわね。



「まだだ。今日は用事が出来て外出をしていたから……」


「そうですか。分かりましたわ。もう用事がないのならクララさんのお世話をして差し上げたらいかがですか? 心配でしょう?」


「あ、あぁ。そうするよ」


 仕事の話は本当に嫌なようですね。あっさりと引きさがりました。


 その後大人しく部屋に戻られたようです。


 クララさんへの差し入れを買ってきたらしいですわね。例え栄養が豊富といえど、病人食では物足りないのでしょう。




 だって





 健康ですものね。






 試しにシェフの作る病人食を食べてみましたが、見た目はアレですけどお味はよかったのですわよ。


 このまま大人しくしている感じもしませんし、明日はどうなさるのでしょうか? 楽しみですわね!



「お嬢様、よろしいでしょうか」


 執事長がやってきました。


「どうしたの?」


 本日のクララさんの報告でした。調理場に迷惑をかけたりメイドに暴言を吐いたり、部屋に戻され暴れたりと、大変困った方ですのね。


 ご自分の欲求に正直というか、駄々をこねる子供のようと言うか、


 ……あ! 



 ……珍獣!!



 あまり見かけないタイプですもの。


 ジェラール様は元よりご実家に理由を言って引き取ってもらった方が良いのかもしれません。


******

(クララ視点)



「ねぇ!」

「あら、クララ? どうしたの……」


 声を掛けた使用人は私と一緒に伯爵家から来たメイドの一人だった。


「なんで侯爵家の制服を着ているの? 一瞬分かんなかったじゃないの」


「侯爵家のメイドになったのよ! お給金も上がったし、条件も良いの。なんたって侯爵家ですもの。お嬢様の信頼を得るためにも頑張って働くつもりよ。やり甲斐もあるし!」


 本当に侯爵家のメイドになったんだ……。


「伯爵家を捨てたの?」


「伯爵家は人員を減らしているのよ。だから辞めて他所に行く人もいるらしいわ。私たちの給金は伯爵家から出ていたけれど、それもいつまで続くかわからなくて不安だったのよ。ジェラール様について侯爵家に来られてラッキーだったわ!」


「伯爵家の使用人が? どうしてまた……」


「嫡男のリアム様がご結婚する際にあちらの家から使用人が連れてこられたの。若奥様がご実家で暮らしていた時と変わらないように過ごしてほしいと言う事らしいのね。それで新たに使用人が増えるから仕方がないわね。退職金はしっかりと貰えて、紹介状も貰えるし、王宮のメイドに決まった子もいるのよ。旦那様や奥様の口利きもあって変なところに紹介されるわけでもないし、クララもそうすればよかったのに。私たちも退職金を貰えたもの」



 そう言うことね……。それならますます私が戻るところがないじゃないの!


 絶対にジェラールにはアナベル様と結婚して貰わなきゃ。私の居場所が無くなるわ。


 その前に退職金を貰わなきゃ! 私もドロン伯爵家のメイドをやめたんだもの。









 
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