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逆ギレですわ

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 モニカに心配されていることから、クラウディオに一度聞かなくてはいけないと思った。今日は王宮に行き外国語のレッスンをする日だった。その後にクラウディオの執務室へ行って手伝いをするという流れになっているので、その時に聞いてみようと思った。


「フランチェスカ様、本日は少し集中力が足りないような気がしますね」


 教師に言われた。すっと返された答案にはケアレスミスが数箇所あったようだ。


「少し考え事がありまして……先生を誤魔化すことなど出来ませんでしたわね。先生の大事な時間をとっていただいているのに申し訳ございませんでした。もう一度お願いします」


 テストの時にクラウディオのことを考えるなんてダメね! もう一度筆記テストをお願いした。時間を見るともう一枚は出来ると思った。今回はテストに集中して間違えたところも見直した。



「はい。満点ですよ! 二回も自らテストを受け入れるなんて教え甲斐があります。この調子でまた頑張りましょう」


 満点! 外国語で書かれている本を読み漁った甲斐もあったわ! それに先生の教え方が上手ですもの。先生が外国へ行った際の話も面白いくていつも夢中になって授業を受けていた。


「ありがとうございます。一回目のテストは反省しかありません。でも合格が出来て良かったですわ」


 先生の時間ギリギリまで授業を受けてからクラウディオの執務室へと向かった。



「フランチェスカ! 遅いじゃないか。どこで油を売っていたんだ。書類が溜まっているんだぞ」


 執務室へ入るや否やクラウディオの怒声が飛び交う。執事が申し訳なさそうにお茶を淹れてくれて席に座る。


 私がいない間たまっている書類に目を通したのかしら?  それにクラウディオには伯爵家の仕事も覚えてもらいたい事はたくさんある! 


「申し訳ございませんね。今日は外国語の授業を受けていましたのよ」

 書類に目を通しながら答える。

「いつもより遅かったんじゃないのか? 終わったらとっとと執務をする様に。私だって忙しいんだから」


 そう言われて、腹が立ったけどしばらくは黙って大人しく書類に目を通し、終わる目処が着いたところで学園の噂について聞いてみる事にした。


「そういえば殿下、学園での噂をご存知ですか?」


「噂? くだらんな。そんな事を気にするなら書類の一枚でも仕上げたらどうだ?」


 その書類にサインをするだけのくせに! っと。ダメね。落ち着こう……

「殿下とミルカ侯爵令嬢との噂ですのよ?」

「くだらんな。暇な誰かが面白おかしく流しているのだろう。同じクラスで同じ班で学んでいる。それが何か問題でもあるのか?」

 それだけなら問題はないけれどそれ以上の噂が立たないようにお願いしたいだけ。でもなんて言えば伝わるかしら……


「殿下にはフランチェスカ様と言う婚約者がおられますし、他の令嬢と噂が立つのは良くない事ですよ。お相手の令嬢にも悪いでしょう?」


 クラウディオの執事も執務を手伝っているので、話に入ってきた。クラウディオの執事は三十歳という事で、大人の男性だ。まるで子供に言い聞かせるようにクラウディオに言った。


 噂が噂のうちは良いが、実際のところそう言う関係になったら、本人達だけではなく本人達の家族にも迷惑が掛かるので、大ごとになってしまう。それなら今のうちに噂を消しておきたいと思った。


「放っておけ! フランチェスカが余計な事を言うからやる気が起きない! 今日はもうやめる!」

 そう言って席を立ってしまった。もうっ! あと数枚で終わるのに……


 この場には私とクラウディオの執事ダニエルと側近のレナート、それに私の侍女がいた。

 クラウディオ付きのメイドは頭を下げてクラウディオを追って執務室から出て行った。


「まだまだ心の成長が伴わないようですね。フランチェスカ様もレナート殿もしなくても良い苦労をしますね」

 執事のダニエルが言ったけれどお互い様だと思う。


「ダニエルさんもご苦労様です」

 ここにいたみんなで苦笑いをして、残りの書類を終わらせた。




「うーーーーん」

 と体を伸ばしてから、挨拶をして執務室を出ようとした。



「フランチェスカ様、何かお困りのことがございましたら微力ながら、」

 レナートが言いかけたところで

「レナート様は殿下のお世話だけでも大変でしょう? お言葉だけ有り難く頂戴いたしますわ」

 そう言って執務室を今度こそ後にした。



 レナート様って良い人よね。殿下は本当に良い人を側近にされたものだわ。そこは恵まれているわね。


 そんな事を考えながら王宮の廊下を歩いていると


「フランちゃんじゃないか!」

 私をフランちゃんと呼ぶ人、それは……


「お義兄様じゃないですか! どうされたんですの?」

 
 気軽に手を上げてあいさつをするお義兄様。私の五つ上の姉の旦那様だ。姉とは幼馴染で三年前に結婚し未だラブラブな様子だ。

「もうじき子供が生まれるから、今のうちにやっておかないと休めないだろう? それに父上の執務も受け継いでいるから実は忙しいんだ」

 もうじき侯爵位を継承するお義兄様。二歳になる甥っ子は可愛いしもうじき産まれてくる子もきっと可愛いんだろうなぁ。


「お義兄様、少しやつれていませんか? ちゃんと食事をとっていますか?」

 クラウディオのようにお母さん視点で見てしまった! 姉がいるのにこれはいただけない発言だわ!


「忙しすぎて食事を抜かす時もある。フランちゃんにまで心配をかけるのはダメだな。ヴァレンティナにも言われているんだよ……今が頑張りどきだから少し多めに見てくれ!」

 ポンと頭を撫でられた。昔からお義兄様はこんな感じ。気さくなお兄ちゃんで姉にベタ惚れしていて、昔から家族みたいな関係だった。


「お姉様に言われているのなら私は口出しできませんね。お義兄様お体には十分お気をつけて下さいね。またお顔を見に行きますとお姉様にお伝えください」

「伝えておくよ、フランちゃんも頑張れよー」


 と言って手を振ってきた。隣には見慣れない騎士の服を着た人が会釈してきたので私も礼をした。


 誰だったんだろ? お義兄様の友人? 仕事関係? なのかな……

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