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その後
ただの……レオ2
しおりを挟む「先生、聞いても良いですか?」
「なんだ?」
「第二王子とは、お知り合いなんですか?」
「あぁ……。同級生なんだよ」
歯切れが悪いような気がした。あまり仲が良いとは思えないし、先生は面倒な男だと言われていたか?
「ユベール殿も、同級生ですものね」
「そうだ、だから今回の件でユベールも駆り出されたんだろ。ウィルベルト・オリバスの義兄にあたるしな」
「そうですか……もう結婚していたんですね」
そうか。セイラと、ウィルベルト・オリバスは結婚したのか……
「盛大な式だったぞ、両陛下も参列してな」
結婚式の話を聞かされた。凄いなセイラは。田舎に収まるような娘ではなかったということか。
「そういえば、あいつは無事だったんですね」
無事だとは聞いたが、拘束中は余計なことは教えて貰えなかった。
「しばらく意識がなかったそうだが、腹の傷は幸い深くなかったようで、今では殿下の秘書兼護衛として活躍している。
出世間違いなしと言われているぞ、なんだ? 嫉妬でもしたか?」
嫉妬なんてする筋合いもない。もう手が届かない存在だ。
「いや……小刀を持った男を拘束する時にやたら手際が良いなと思ったんだ」
「それをかわれて、護衛も兼任する事になったそうだぞ。ウィルベルト・オリバスの知られざる特技が、表に出た」
はっはっはと笑う教師は昔と変わらない。こんな大罪人に成り下がった俺にも態度は変わらないんだな……。
「言いにくいのだが……ファーノン男爵家とは関係ないと言う書類にもサインしたよな?」
「はい」
もう実家には迷惑をかけられない。他人でいることが、ルカにとっては良いだろう。
「お節介だと思ってくれ」
馬車が止められ、かちゃりと扉が開かれる
「……私は買い忘れのものを買ってくるから少し待っていてくれ」
そう言って教師は馬車から降りた。そこにはかつて弟だったルカが立っていた
久しぶりに会うルカは別人のように思えた。疲れとか苦労とかそう言った感じに思えた。大人になろうとしているんだろう。
明るい性格でいつも笑って俺とセイラの後ろについて回っていた……。俺のせいだ
申し訳なくてまず頭を下げた
「僕には、兄が居たんです」
ボソッと小さな声だった。ルカの顔が見れなくて顔を下げたままだった。
「大好きな兄で、尊敬していました。その兄を差し置いて僕が家督を継ぐ事になりました」
「……そうですか」
「兄は元婚約者の女性を裏切って、他の女性との子がいたそうです。僕は兄の元婚約者の女性を姉として慕っていましたので、大変ショックを受けました」
「……はい」
「元婚約者の女性は、今は結婚して幸せに暮らしているそうです」
「……はい」
「僕の兄の罪はそれだと思っています。カジノへ行き謹慎になるような愚かな兄でした。
女性に騙されて婿入りした先は悪徳男爵家でスケープゴートとして捕らえられたりもしましたが、兄も被害者です。
……もちろん悪くないとは言いません。
兄の元々の性格は残っていたようでホッとしました」
「…………」
「兄はもういないものと思え。と言われましたが、やはり僕にとって兄は兄ですから生きていてほしいと思います。
兄の子供は兄や僕と同じ髪色、瞳の色でした。出来る事なら兄には子供と穏やかに暮らしてほしいと思っています。
もし……叶うのならせめて……手紙くらいは……欲しいと思います。差出人名がないと尚更良いのかもしれません」
「……それは貴方に迷惑がかかる事になると思うので……」
これ以上迷惑をかけることは出来ない。縁は切っておいた方が良い……
「……僕は待ちます。内容なんてどうでも良いんです。生きているという確認がしたいんです、たった一人の兄だから。
僕は、僕だけは兄の味方で居たい….…もう会うことは叶わないかもしれないけれど」
「…………」
言葉が出なかった。ルカはセイラと同じだ。変わらないルカは強いと思った。
俺のせいで迷惑がかかっているだろうに。
「それでは僕は行きます、話を聞いてくださってありがとうございました」
「はい、こちらこそ。お体にお気をつけて……ご両親を大事になさってください」
父上……母上……ルカ、元気で。勝手な願いだけど、どうか元気で。
「……兄上、どうか、元気で」
下を向いたルカは涙声になっていた
「……ルカ、勝手な、兄で悪かった、迷惑を沢山かけた。元気でいてくれ、父上と母上をお願いします」
ルカの顔を見て深々と頭を下げた
ルカが手を出してきたので、握手をした
「兄上、頑張って!」
そしてルカに力強く抱きしめられた。
「はははっ。身長が伸びたな……」
もう小さかったルカではない。涙が堪えきれなくなり頬を伝った。
「頑張るよ、ありがとうな」
そう言ったらルカは、満足そうに笑って去っていった。
本当にあの教師はお節介だと思った。
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