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その後

ただの……レオ

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「おい、出て良いぞ」


 急に衛兵に出ろと言われた。


「どこへ?」


 牢から出ると大体物々しい人数の護衛と共に出て、取調べ室へ行くと言うのがルーティンだった。


 俺を取調べても、もう何も出てこないから、ここ何ヶ月は大人しく牢に入っていた。


「保釈だと」



「はっ? 俺は大罪人だぞ?」



 この場所には相応しくない人物がカツンカツンと足音を立て、俺の前に立つ。この国の第二王子だった。



「お前を調べても、もう何も出てこない、名前だけの当主だったからな……」


「はぁ。それは申し訳ございませんでした」



「潔く逮捕された件、男子学生を逃した件、陳述に嘘偽りのないこと、おまえは被害者でもあるからな……保釈だ。保釈金も支払われた。」


「ちょっと、待ってください。保釈金ですか?」


「そう言っただろう?」


「俺、いや、私には支払ってくれるような人はいないのですが……」


「いたんだ。おまえは面倒な男達の知り合いだな……」


「……覚えがありませんが?」



「保釈金を払ったのは、リオネル・スペンサー」


「……先生?」


 なぜ学園の教師が……?


「……ユベール・ルフォール」


「ユベール兄さ、いえ、ルフォール子爵の……?」


「あとは匿名希望……」


「匿名……? 誰ですか?」


 怪しい……なんだ、それ



「……訳あって名前は言えないそうだが、貴族の男とだけ伝えておく。おまえが何か犯罪に手を染めたら、名前の出た三人にも罰がくだる事になる。
 おまえは大罪人の元男爵だ。しばらくは監視させてもらうし、国から出す事はできないし、行動も制限する。
 元モンテス男爵関係者とは連絡を断つという書類に署名をしてもらう」


「……一つ質問をよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「モンテス男爵関係者に私の息子は含まれますか?」



「あぁ……そうだった。迎えにいってやれ。少し遠いが安全なところに避難させているんだそうだ」



 約束を、守ってくれたんだ….。



「おまえが保釈されたとなると、恨みのある者に命が狙われるかもしれないから、目立つ行動は控えるように。とにかく出ろ! おまえに話があると言う者が待っている」


 訳もわからず牢から出された。



******


「貴方は……」



「久しぶりだな。レオ・ファーノン、改め、ただのレオか? 相変わらず情けない顔をしているな」



 学園でいつも迷惑をかけていた教師が苦笑いをしていた。


「まぁ、仕方が無いですよね……」


 なんで、ここに……保釈金も出してくれた



「なんでと言う顔をしているな」


「……はい。学園時代からご迷惑をおかけしてましたので、合わせる顔はないと思っていました」


 頭を下げた


「おまえが逃してやった男子学生覚えているか?」


「……逃したことは覚えていますが、誰かは分かりません」



「私の受け持っているクラスの生徒なんだ。逃してくれて礼を言うよ。本人はとても反省していた。そしておまえに感謝をしていた、あの子の親からも、それにその他の生徒もな、みんなまとめて謹慎にしてやったけどな」



 はっはっは……と笑いながら




「自分の姿に重なったんだろう?」

 急に真剣な声になった


「……はい」

「おまえの言葉があの子に届いたんだよ。一人の人生を救った」


「……良かっ、た」



 俺みたいな人生を送ってはいけない、そう思っただけだ。
 やり直せるチャンスがあるなら……後悔してはいけない。



「継げる家がなくても、成績が良ければ働き先はあるとあの子に言ったな?」



「……覚えていません」



 あのときは逃すのに必死だった。言ったかもしれないが、覚えていない。


「おまえは働く気があるか?」



「それは、はい、あります」



 また息子と暮らせる日が来るのなら必死で育てたい。
 仕事は必要だが、大罪人だ。職なんてあるのだろうか……



「下働きから始める事になるだろうが、おまえが助けたあの子の家で働け。
 王都ではなくあの子の家の領地の屋敷、伯爵家だ……因みにおまえの保証人は私だ。
  おまえが何かしたら私の評判も悪くなる。おまえは傾いた男爵家から出されて平民になった、ただの男だ。話を合わせろよ?
 それでも良いなら紹介する。おまえの息子と新たな人生を歩め」


「そんな好条件……俺は大罪人なんですよ?」


「あの子の親が、伯爵がそうしたいと言ってくれたんだ。あの時捕まっていたらあの子の人生はどうなっていただろうな……たまには人の話を素直に聞くと良い、そのかわり真面目に働け」




「お言葉に……甘えたいと思います」


 手を差し伸べてくれる人がいる。この教師の恩にも報いたい……口うるさいと思っていたが、ここまで面倒を見てくれるとは、お節介も良いところだと思った。

 頭を下げると目から熱いものが流れた




 ポンと肩に手を乗せられた


「やり直せ、おまえはまだ若いんだ。息子の為に必死で働け」


「ありがとう、ございます、」







「リオネル……おまえの用意した馬車が来たぞ、早く行け」


 第二王子に面倒臭そうに呼ばれるこの教師は一体……


「今行くよ、レオ行くぞ」


「……はい、それでは失礼します」


 第二王子に頭を下げた。こんな高貴な……国のトップクラスに会うことはもう二度とないだろう。


「リオネルに、ユベールに、匿名希望に……おまえはラッキーなやつだな、二度と悪さをするなよ! いいな!」



 頭を下げて立ち去る事にした。





























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