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レイラと共に
しおりを挟む「え! 釈放ですって? だから言ったでしょ! 私は悪くないって」
本当に失礼な人達だわ! フランツに言って懲らしめてもらわなきゃ! クビよ、クビ、クビっ!!
「ふんっ!」
何が窃盗・横領・住居侵入・虚偽・不敬・脅迫・強要・侮辱よ! 何回も何回も何回も何回も聞かされたけれど、誰と間違えているのかしら!
「ねぇ、お風呂に入りたいのだけど」
離れに戻る際に案内していたメイドに声をかけた。
「私は案内係ですので分かりかねます」
「あ、そう。下級メイドなのね」
下級メイドなどではなく、王妃に頼まれた王妃の手先だった。レイラがどんな様子だったかを報告するようにと言われ任務に当たっていた。
「申し訳ございません」
下級メイドと言われた王妃のメイドはレイラを離れまで送り一礼して背中を向ける。
そして一言。
「品もないし、言葉遣いもなっておりませんね」
はぁっ。っとため息を一つ吐き王妃の元へと戻る。
******
「ねぇ、誰かいないの!」
建物内は清掃が行き届いているのに人がいる様子はない。
「ちょっとー! お風呂に入りたいんだけどっ!」
しーん。と静まり返っていた。響く声は己の声のみ。
「全く、どうしろっていうのよぉ!」
建物内を歩き使用人の姿を探すがやはり人の気配はない。
仕方がないので井戸で水を汲み湯を沸かし身体を拭いた。お茶を淹れるために覚えたお湯の沸かし方をこんな事に使う事になるとは……
「着替えは……フランツに買ってもらったドレスしか無いの? 外出用なんだけどしょうがないか。普段着はまた買って貰えば良いんだし。離れといえど王宮で暮らす以上誰が見ているか分からないものね」
鏡を見ながらなんとかドレスを着た。
「ドレスを着ると髪型が気になるわね」
鏡を見ながら髪に櫛を通す。しばらく髪を洗っていなかったので櫛を入れるたびに毛が抜け落ちる。
「最悪だわ! もうっ! なんで誰もいないのよ! 王宮に行って誰かを捕まえて人を寄越すように言わなきゃ! せっかく帰ってきたのになんて仕打ちよ! フランツが戻ってきたら罰を与えさせてやるわ!」
お腹も減ってきた……パンとスープといった簡単な食事し出さないのだものっ! 部屋には簡素なベッドと机に椅子。よく分からない取り調べ? をさせられてシンプルすぎるシャツとスカートを渡された。私のドレスはどうしたかと聞くと没収されたという。
あのドレスの価値もわかっていないくせによく没収なんてしたものだ。呆れるわね! 価値を知ると跪いて謝りたくなるような価値あるドレスなんだからっ!
「ダメだ。お腹が減ってきたわ。今日はバタバタと戻ってきたから何にも口にしていないわ」
本当に誰もいないなんておかしいわよね! 王子が婚約者と住んでいる王宮内の離れなのに! 仕方がないわね。王宮に戻り食事を運ぶように言ってこよう。今まで時間通りに食事が運ばれてきていたのに怠慢だわ。
庭を抜けてショートカットし、王宮の庭へと行く。
「ちょっと、あなたにお願いがあるの」
メイド服を着た若い女の子に声をかけた。
「え? 私ですか? 何ですか?」
驚いた表情をする若いメイド。
「お腹が減ったから食事を、」
「あぁ、もしかして新しく来た? え? お腹が、減っているの? この時間なら……こっちへいらっしゃい!」
「え? 何言ってるの、」
腕を掴まれて建物の裏口へ連れて行かれた。
「ちょ、ちょっと」
「この子お腹が減っているらしいの、何かあまり物ある?」
は? 何言ってんの?! あまりものですって?!
「あぁ、新しく入った子か? そんなふりふりのドレスを着ていたら汚れるぞ、これ食ったら着替えな」
ドンっと置かれたものはパンとシチューだった。って肉がかけらしか入ってないんだけど! でもお腹が減っているから仕方がなく口にする。銀のスプーンではなく木のスプーンというのが気に入らないけれど!
「……お、いしい」
温かいシチューを口にして呟いた。
「そうだろ! こんな美味いのに離れの客は気に入らないのか残しやがった事があった。ありゃ何様だと思ってんだろな! 単なるタダ飯喰らいなのにな! こっちは決められた予算内で作っているのに! 第五王子が朝、昼は抑えて夜は普通に出せるようにと節約してたってのに、肉を出せ! やれ今度は魚だ? 菓子やフルーツを増やせだの文句ばかり言いやがって、そりゃ離れに追いやられるってもんだ! 第五王子も見る目がねぇよな。最近は離れに誰も住んでないから、使用人達は精神的に楽になったって言ってんだ。おまえさんも離れにゃ近寄るなよ。食ったらそのままで良いから早く戻りな」
「ご、ちそう、さま、で、した」
小声で言った。そんなふうに見られていた? なんで?!
「おう、また来なよ、がんばれよ」
「あ、あの、」
「なんだ?」
「その客って嫌われているんですか?」
王子の相手を嫌うって不敬じゃない? 新入りだと間違えられているから丁寧語で聞き出す。
「誰かから客のことが好きって話は聞いたことがないな」
「そうなんですね、それはなぜですか」
なんでよっ?!
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