婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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謁見

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 ~フランツ視点~

「フランツ、陛下からお話があるそうだから聞いて来なさいな。私も行きますから」

「……レイラはどうなりますか?」

「しばらくここで自分の立場を分からせます。離宮にいても何の役にも立ちません。客人と思い黙っていましたがムダに餌を与えるほどフランツにも蓄えがないでしょう? 今日請求書を回すように言いましたが見ましたか?」

 見た! このままではいけないとレイラに言わなくてはならないと思っていた。
 

「……ハイ」

「買い物には性格が出るものです。本性が分かったでしょう? 男爵家では控えめに買い物をしていたそうよ?」

 伯爵家で世話になっていたが衣装代などは男爵持ち。

 伯爵家ではドレスを作る際についでだからと夫人が作ってくれた。と聞いたことがある。そこまで聞くと不満はなさそうだったし、伯爵家に出入りしているのだから質の良いものだろう。
 
 男爵にはアレもコレも。と強請れないだろうし、いくら男爵家が裕福でも男爵夫人が管理をしているのだから好き勝手は買えない。どこの家でも予算があるのだから。

 そこで私はレイラに必要な物を買っても良い。とは言ったがまさかあんなに買い物をするとは思わなかった。ドレスに宝石に靴にカバン。どこへ来ていくつもりなのか派手なものばかり。レイラの顔が見れない。


「レイラ、そういうわけだから私は父、いや陛下の元へと行ってくる」

「ちょ、フランツっ!」

 母がと わざわざ言ったのだからそれ相応の話があるはずだ。


 ******


「フランツ、そこに座れ」

「はい」

 お茶を置いてメイドが出ていった。父と母、そして父の側近の一人財務大臣である公爵が後ろで控えている。沈黙が痛い。


「各所からクレームが来ておる」

 各所から……か。

「クルー男爵はクレマン子爵家に慰謝料を支払うそうだ。養女として迎えたレイラがおまえと恋仲になった事により両家の婚約がなくなった。クルー男爵はこの問題が収束した後、社交を取り止め謹慎するそうだ。養女として迎えたおまえの相手を男爵家の娘として修道院に入れようとしていたのだが、娘がそれを拒否し男爵家から籍を抜かれた」

 え? 聞いてない。レイラからは家を出されちゃった。もうフランツしか頼れる人はいない。と聞いている。

 家を出されたのと、籍を抜かれたのでは全く立場が違う。後ろ盾もない。



「そういうわけでおまえの相手は後ろ盾を無くした。それでもおまえが面倒を見ると言ったのだったな。クレマン子爵家には私の私財で慰謝料とそれ相当の家の令嬢を紹介する。今回の婚約破棄により、世間の風当たりは強くなっておる」

「……申し訳ございません」

 レイラの面倒を見る? どうやって……


「執務も捗っておらんではないか。今まで誰の力を借りて仕事がか身に染みただろう。我々は周りの力を借りて実力を発揮しているのだ。わしも一人では大したことが出来ん。自由を手に入れてどうだった? 楽になれたか。何をしたか何をしなくてはいけないのか理解しておるか?」


 自由は不自由だった。飼い猫は放り出されるとすぐに……って。アリスを追放したのは自分なのに。私とアリスとの違いは人格者かどうか……私が追放されたら誰か付いてきてくれるのだろうか。

「ふむ。答えられんのだな。王妃よ、其方はどう考える?」

 静かに話を聞いていた母が口を開いた。


「簡単ですわ。フランツがしたのは単なる浮気です。夢見心地で自分が一番だと思っていたのにふと現実に戻ったのでしょう。アリスフィアに非はありません。あの子は自分の心を抑えて王子妃として全うしようとしていたのです。フランツじゃ頼りにならないのだから自分がしっかりしなきゃならないと周りの期待に応えていたのです。アリスフィアは生意気で結構。そういうところも可愛いと受け入れてくれる男じゃないとあの子の相手は務まりません。フランツの側近達は自分が止められなかったからと、フランツを悪く言うことはありませんでした。でもフランツも相手の方も文句ばかり……わたくしは情けなく思います」


「その時に言ってくだされば、」
「言ってもムダじゃ。側近達は止めたじゃろう? それでも聞く耳を持たなかったのは誰だ?」

“お願いですからアリスフィア様と話し合いをして下さい”
“アリスフィア様を裏切ってはなりません”
“婚約者以外の令嬢と二人きりはいけません”

 うるさいな。と思っていたが反対されればされるほど気持ちは盛り上がった。



「その顔を見ると少しは反省したか? フランツ・エル・シーバに命令する。しばらくの間外出を禁止、部屋から出ることも禁ずる。連れて行け」


 部屋の外から衛兵が現れ王宮の一室に入れられた。そこは何もない部屋だった。



 連れて行かれる途中で兄がいたような気がしたが、何も言えなかった。助けてくれとも思っていない。















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