上 下
29 / 93

グレマン到着

しおりを挟む

「ようこそグレマンへ」


 グレマン領へに到着した。正直言って移動疲れでヘトヘトだった。伯爵領で一泊させて貰えればまだここまでの疲労はなかったような気もするけれど、こちらは世話になる立場で文句は言えない。馬車まで用意してくださったのだから(馬車は快適でした)


「初めてお目にかかります。わたくしはアリスと申します。フェリクス殿下の紹介でこちらに来ました。突然のことで驚かれたことと思います。申し訳ございません」


 町娘のようなワンピースを着ているがカーテシーをした。


「ご丁寧にありがとうございます。お疲れの所こちらへ連れてきてしまいまして申し訳ない。本日は部屋でゆっくりと過ごしてください。湯浴みの準備も整っていますし、食事も部屋へ運ばせますので、気兼ねなくお過ごし下さい」


 急に来た迷惑な客に対してもこのような対応をしてくださるなんて……申し訳なく思う。

「お言葉に甘えて休ませていただきます」

 移動疲れで挨拶もそこそこに休ませて貰うことにした。おじさんに荷台に乗せてもらえたのは良いけれど、休憩をしてまた移動となり心身共に疲労が蓄積している感じ。
 グレマン家の使用人達によって湯浴みをさせて貰った。疲れて身体中が悲鳴を上げていたからリラックスできた。オイルマッサージまで……気持ちが良い。


 

「お嬢様、そろそろ休みましょうか」

 食事を提供されて至れり尽くせりの環境だった。食後のお茶を飲みソファに座りまったりとしていた。


「そうね。明日はグレマン領へ来た説明をしなくてはいけないわね」


 ミリーと話をしているとうとうととしてきた。思っている以上に疲労が溜まっていると感じた。

「ベッドにお入りください。おやすみなさいませ」





 ******


 ~翌朝~


「アーネストとお呼びください」


「いえ。そういうわけにはいきません」


「グレマン卿と呼ばれましてもグレマンは他にもいますので」


 そう言われればそうなる。

「それではお言葉に甘えてアーネスト様とお呼びする事をお許し下さい」


 名前を呼ぶのは許可を得てから。私は現在家名はないので昨日の自己紹介でアリスと呼んでもらう事にしていた。


「昨日は移動でお疲れでしたでしょう。フェリクス殿下やマーク殿から手紙を貰っていてもたっても居られなくなり、急ぎ迎えに参りました。休む事は出来たでしょうか?」


 わざわざ迎えに来てくれて馬車も準備してくれた。なんの関係もない私達にとても高待遇よね。


「はい。旅の疲れを取ることが出来ました。ありがとうございました」

 応接室にはアーネスト様と私、ショーンとミリー、グレマン家の使用人が数人居た。


「それにしても話を聞くだけで腹が立ってしまった……王族の、いや紳士のする事ではない! 大勢の前で婚約破棄などっ!」

 ドンっとテーブルを叩き怒るアーネスト様。

「しかも悪いのは自分の浮気なのに、アリス嬢のせいにするなどと、許せない! 事が落ち着くまでどうかこの屋敷でのんびりと過ごしてください。と言っても何もない田舎ですが……」

「何かお手伝いすることがあったら、させてください。フェリクス殿下にこちらにくるようにと言われてとりあえず、来ましたが私達はお客様ではありませんもの」

「いえ。フェリクス殿下からの手紙で頼む。と言われたのでお客様です」


 キッパリと断られてしまった。でも何もすることなくぼぉーっとしているのは疲れるのよね。


「それでは宿を探しますわ。しばらく過ごせる分は手持ちでなんとかなるわよね?」

 ショーンを見ると頷いた。

「フェリクス殿下にはグレマン領へと言われましたので、こちらの領地に留まっていれば問題はないわよね?」

 マリーを見ると頷いた。


「いえいえ! そういうわけにはいけませんよ。ここは隣国と近く旅人や中には荒くれ者もいますしアリス嬢に何かあっては、フェリクス殿下に言い訳が立ちません!」

「何もせずにご厄介になるのは気が引けますもの」


 申し訳ない顔をしてアーネストを見ると、うーん。と目を瞑り考えるように腕を組んだ。

「……それなら、私の母とお茶をしてくれませんか? 僻地なので話し相手を欲しがっています。それと甥と姪がいるので少しで構いませんのでマナーを教えてくださると助かります」


「まぁ。それは素敵ですわね。夫人にもご挨拶をしなくてはなりませんわね。グレマン伯爵様はお留守と言っていらっしゃいましたが、夫人はご在宅ですのね?」


「えぇ。昨日は遅かったようで昼過ぎまで起きて来ないでしょう」


 アーネスト様のお姉様のお子様を預かっているようで、夜は遅かったみたい。



「アーネストーあそぼー」


 すると子供の声が聞こえてきました。あら、噂のお姉様のお子様かしら。

「すみません。甥と姪です。お客様が来ているから静かにするようにと言ったのですが、子供には通じなかったようです。注意してきますね」


 アーネスト様は立ち上がり扉を開けようとした。


「わたくしもよろしいですか? ご挨拶をさせてください」



 アーネスト様の後ろへと立った。アーネスト様は大きい方ね。アーネスト様の後ろに私の全身が隠れてしまいました。
 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。 この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。 酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。 自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。 それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。 私、一度死んで……時が舞い戻った? カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。 嫉妬で、妹もいじめません。 なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。 エブリスタ様で『完結』しました話に 変えさせていただきました。

拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です

LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。 用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。 クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。 違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

処理中です...