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行ってらっしゃいませ。
しおりを挟む「それじゃ私達はしばらく邸を開ける事になるが、良い子にしているんだぞ」
「はい。お父様お母様行ってらっしゃいませ」
「父上、母上、お土産を買って来てくださいね」
私と弟のジェレミーが両親を見送る。両親は、陛下と王妃様が招待された他国の即位式に出席する為今日から一ヶ月ほど留守にします。
「ははっ。良い子にしていたら土産をたくさん買ってくるよ。クレイグ既に王宮に行っているからあちらで挨拶をする。クレイグも私たちが留守の間に視察が入っていて留守になるが二人とも頼んだぞ」
「「はい」」
そうして両親は屋敷を出て行った。私の名前はアリスフィア・ブラック。ブラック伯爵家の長女です。先ほど名前が出たクレイグとは私のお兄様で王太子殿下の側近をして忙しくしています。私の隣にいるのは弟のジェレミー。
「行っちゃったね」
寂しそうにジェレミーが言いました。お父様とお母様が出かけたばかりなのに……
「そうね。お兄様も視察で留守にするけれど楽しく過ごしましょうね」
両親や兄が一気に出かけるなんてことは初めて少し寂しく心細いけれど、ジェレミーと一緒だから大丈夫。
「アリス姉様がいてくれて良かった」
二人で両親が乗った馬車が見えなくなるまで見送っていた。
「お父様やお母様がいないからって、勉強を疎かにしてはいけないわね。ジェレミーは今日先生がいらっしゃる日だったわよね?」
「うん。アリス姉様は出掛けるんだよね?」
「そうなの。王太子妃のアルミナ様のご実家に呼ばれているのよ。アルミナ様の妹にお子様が産まれて、公爵家に里帰りをしているようでお祝いを届けがてらお茶をしてくるわね」
「いってらっしゃい。気をつけて」
本来なら私の婚約者でもあるこの国の第五王子フランツ殿下と行く予定だったのだが、予定が入ったと言われて、ドタキャンされた。渋々行かれるより良いわよね。それに最近は色々と忙しそうですし。
出かける為にドレスに着替える。そして侍女たちの手により磨き上げられた。
「美しいです! アリスフィアお嬢様」
侍女のミリーが大袈裟に誉めてくれた。ミリーは侍女長とシェフの子供で私の小さい頃からずっとそばに居てくれて、それでいてお姉さんのような存在。
「ありがとう。そろそろ行きましょうか? プレゼントとお花の準備は?」
プレゼントは先日購入して、お花は庭師に頼んでおいた。
「バッチリです。特製焼き菓子も用意いたしましたよ」
「まぁ、ありがとう。シェフの作る焼き菓子を持っていくととっても喜ばれるのよね。お礼を言っておいてね」
ミリーの父であるシェフは料理だけではなくお菓子作りの才能もあるのだけど、お菓子は趣味で作っているそうで、評判になっても気が向いた時にしか作らない。あくまでも料理人でそこは譲れないのだそう。
恐らくミリーが今日の為に頼んでくれたのよね。
公爵家に着くと、アルミナ様も来ていて、産まれたての赤ちゃんを見せてもらってほっこりした。
女同士募る話もあってついつい長居をしてしまった。そろそろ体に障るからと慌てて家に帰った。
「遅くなっちゃった。ごめんね待った?」
ジェレミーに謝る。
「いいえ。楽しんでこられたようで何よりです。今日兄上は帰りが遅くなるようなので先に食事をという事です」
お兄様から伝言があったようなので、二人で食事をする事になった。
話題は週末に行われる学期末のパーティーだ。私は現在十六歳で学園に通っている。学期末のパーティーは王宮で行われる。小規模な社交界と言った感じだけど学生のうちに場馴れすると言うのが学園の目的。
ダンスもあるし、お酒も出るので飲み過ぎには注意。醜態を晒すような真似は御法度。
当日はパートナーがいてもいなくても王宮に集合。学園の生徒達だけがパーティーに出られるので外部の人は参加出来ない決まりになっている。私も一人で行く予定だし、気軽よね。パートナーの第五王子は私の一つ上で同じ学園に通っているから現地集合となる。
婚約者が学園生ならファーストダンスを踊るのが決まりだし、王族がいるのなら身分的にも皆の前で披露すると言うのが決まっている。なので先ずはダンスの披露から……みんなの視線が痛いのよね。はぁっ。憂鬱。
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