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コレット侯爵夫妻

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「シャノンちゃんはナセル殿下とお付き合いしているのかしら?」

 シャノンの母が言った。


「してない! するわけないだろう。まだ十五歳だよ! 早すぎる!」

 シャノンの父が言った。


「わたくしがあなたと付き合い出したのは十五歳だったわよ」

「シャノンは子供だ。まだ早い!」

「でも婚約させても良いって思っているんじゃないの?」



「……シャノンが良ければ仕方ないとは思う。あの時からナセル殿下はシャノンの気持ちに寄り添って下さる。無理な事はなさらないし、我が家を継いでくださると言う……最近ようやく許せるようになった」



「そうね。あれからずっとお手紙をくれていたし、一途な方だと思うわ。シャノンちゃんは大人しいから少しくらい強引な方が良いのかも知れないわねぇ。王女殿下に会わせると聞いた時は、はらはらしたけれどいつかはお会いしなくてはならなかったんですものね。それに殿下が私たちの義理の息子だなんて嬉しいことよね。イケメンだし」 



「シャノンは辛い時に遊んでいた相手がミカエルしかいなかったからな。それ以前に遊んでいた相手は殿下や王太子やルイズ嬢だった。あの件があって以来王家の方々の話はしなかったから、良かったとは思う。王女もシャノンに会いたいと言っていたが、シャノンはあの時の話をすると口を閉ざしていたからなぁ……これで少しは成長したのかもしれない。甘やかしすぎたかなぁ……でも甘えて欲しいんだよね。まだまだ子供だと思っていたのになぁ」


「認めているじゃないの! 殿下の事」


「シャノンの相手としては。ただ面白くないよ。君だって殿下の事イケメンだなんて……私の可愛い妻と娘が殿下に取られてしまう」



「あなたったら、バカねぇ。わたくしにはあなたしかいませんよ」

「殿下のことばかり褒めるから少し寂しかっただけだよ」


 そっと夫人の頬に手を当てるとお互いに微笑みあった。自然にちゅっと頬にキスをする侯爵。もちろん周りに使用人はいる。使用人一同見慣れた光景。



「シャノンちゃんには幸せになってもらいたいのでしょう?」

「誰よりも幸せになってもらいたい。私ができることは限られているからね」

 少し寂しそうにそう伝えた。



 コホンコホンと執事が咳をする。





「旦那様、奥様失礼致します」

「なんだ?」

 執事を見ると少しだけ困ったような顔をして遠慮しがちに伝えた。


「ロンゴ伯爵のミカエル様がお嬢様に会いたいということですが」


「ミカエルが? 何の用だ?」


「それが、以前のようにふらっと来たというような感じでして、約束ではないようです」


「私が対応しよう」

 すっと立ち上がり、先ほど夫人に見せていた優しい顔ではなく厳しい顔つきに変わった。


「かしこまりました」



 一体何の用だろうか。ロンゴ伯爵にはうちの可愛いシャノンに変な噂が立たぬような付き合いをと言ってあった。

 伯爵はそれを分かってくれていたから、ミカエルの独断だろう。まだ幼馴染面をしているのか?


******


「やぁミカエル殿。急に我が家に何の用だろうか? 先日も言ったが年頃の娘のいる家を訪ねるのはお互いのために良くないと言ったはずだが……?」


 何だろうな……シャノンの遊び相手と思っていた時は何とも思わなかったが、こう見ると腹が立つ……。うちの可愛い天使シャノンを保留というんなんて! 見る目のない男だ!



「突然申し訳ありません。シャノンとは学園に入り、なかなか話をする機会がなくなりましてこうして会いに来てしまいました」


「ふむ。先日も言ったが娘のことを気安く呼ぶのはやめて頂きたい」

「あ……申し訳ございませんでした」

 頭を下げるミカエル。


「シャノン嬢はご在宅でしょうか?」


「いるにはいるんだがな、こういう場合は先触れを出してからくるのが筋だろう? 昔馴染みだからこうやって出迎えはしたがマナー違反であることはわかるね?」


「申し訳ございませんでした。以後気をつけます」


「頼むよ。君の行動一つでロンゴ伯爵の評判にも関わることに事になるんだからね」


******


「ミカエル? どうしたの?」

「やぁ、シャノン……嬢と話がしたくて会いに来たんだ」

「私も話があったの! 応接室で話をしましょうか。お父様よろしいですか?」


「あぁ……良いけど、でも二人きりはダメだぞ。侍女も部屋に入れること」

「うん」





「今日はどうしたの?」

 メイドがお茶を出す。侯爵のいう通り侍女にメイドに執事も室内にいた。


「シャノンは殿下と仲がいいんだね」

「親しくさせてもらっているわ。幼馴染だし久しぶりに再会して懐かしかったから」

「幼馴染……」


「えぇ、ミカエルと会う前の話だったけれど」

「そう言えばよく手紙をもらっていたね」


「? 知っていたの? お会いすることはなくても文通はしていたの。他愛のない内容だったけど」


「殿下と婚約が近いと聞いたけど本当か?」


「婚約……そんな話もあるけれど、どうしたの? あ! ミカエルもしかして婚約が決まったの? 学園内で出会いがあって……? もしかしてロルシー子爵令嬢?」


「違うよっ! マリとはそんな関係じゃない!」


「そうなの? 仲が良さそうだからてっきりそう言う仲だと……」





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