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きらい!

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 ※大変申し訳ないのですが1話飛ばして公開してしまいました! 
お兄様は年上好きだったの次が↓です!

******


「なぜ抱き合っているか聞いてもいいか?」

 ルシアンは私からそっと離れて手を上げた。

「なんで泣いているんだ? ルシアンに泣かされたのか? 説明を」

 あ、えっと、あたまが回らない。泣きすぎたせいかクラクラしてきた。

「答えられないのか?」

「エルマン様、俺から説明しても?」
「ルシアンのことを信用していたが、俺の婚約者と知りながら抱擁するとは、説明次第では、」
「待ってエルマン、」
「エマ、顔色が悪い。座ってろ」

「お嬢、エルマン様が変な誤解をしているし面倒だから話すぞ」
「面倒だって?」
「あぁ、すごく面倒だ。お嬢のことを分かっていれば、これしきのことで怒りゃしないだろ。今お嬢はショックを受けているから話を聞いてなだめていただけだ。お嬢は俺にとっては雇い主である旦那様の愛娘だけど妹のようで家族みたいなものだと思っている。お嬢が泣けば話を聞くし慰める。婚約者がいながら距離が近いのは認めるけれど、お嬢に対してよこしまな気持ちは一切ない」

「……分かった。それではなぜエマが泣いている?」

「誤解が解けたようで安心しました。お嬢は坊ちゃんが婚約すると聞いて寂しく思っています。仲のいい兄妹ですから」
「キリアンが婚約を? そういえば話があると呼ばれたんだった。だからエマが泣いて……なるほど。話は見えてきた。だからと言って使用人に抱きつく行為はどうかと、」

「使用人ってルシアンのこと?」

 むかっとした。

「ルシアンは私の大事な人なの! 生まれた時からずっと一緒だったの! エルマンよりずっと長い間一緒なの。うちにいる人は家族同様なの。使用人っていい方きらい!」
「悪かった、すまん」

「それにルシアンに泣かされたことなんて今までに一度もない。いつも助けてもらってばっかりだもん。エルマンは何にも分かってない。エルマンなんてきらい!」

 部屋を飛び出してしまった。ぐずっ。お兄様が取られちゃうみたいで寂しいと思っていただけなのに、エルマンのばか!

 ふらふらと庭に行きお気に入りのベンチに座る。このベンチもルシアンが作ってくれた。あのブランコはお兄様と一緒に遊んだ。お兄様もブランコに乗りたいのに私を乗せて後ろから押してくれた。最近は記憶が混在していてニホンに住んでいた家族のこととか忘れちゃってこの世界にいるんだって思い知らされる。

 ようやく涙が落ち着いた。この後どうしよう。エルマン追いかけてこなかったし。そぉっとエントランスを見るとエルマンの家の馬車が停まっている。ってことはまだ屋敷にいるってことか。

 顔、合わせずらいなぁ……。あ、そうだ。こういう時は甘いものを食べて元気出そ。サムエルが私の機嫌を取る為に買ってきてくれるあのケーキが食べたいなぁ。サムエルに護衛を……。あ、今日は休みなんだっけ。

 ポケットにお財布が入っていた。これだけあればお茶が出来る。一人で街に行ったことないけど歩いて30分くらいだよね。このワンピースも華美ではないから良くて貴族の娘か商家の娘ってところかな。

 歩いて街に向かうと馬車では感じられない風景が目に入ってくるので楽しい。結構歩いたな。あれ、もう30分経ってる。街まで歩くと思ったより時間かかるんだ。さらに20分歩いてようやく街にたどり着いた。

「疲れちゃった……」

 体力ないんだよね。この距離をまた歩くことになるの? そう思うと疲れが押し寄せてきた。まずはケーキ食べようかな。

「いちごのケーキと紅茶をください」

 疲れた時にいちごの酸味を体に取り入れると元気が出てきそう。私が一人で街に来たって聞くとお兄様心配するかな……早く帰らなきゃ。反省をした。私って嫌な子だなぁ。エルマンに八つ当たりしちゃったし、きらい。だなんて本当は思ってないのに。

「痛い……」

 家に戻ろうと店を出た。歩き慣れてないから足が痛くなってきた。ベンチを見つけて腰掛ける。靴擦れだった。靴擦れくらいで家に帰れなくなるなんて本当に私はバカだ……情けなくて泣けてくる。

「お嬢ーさん。もしかして一人?」

 え、だれ? 顔を上げた。

「え、まじ。めっちゃかわいい。まじ好みなんだけど」

 話し方からして平民の人。どうしよう。

「もしかして迷っちゃった? って、あれ? 血が出てるよ。俺の家すぐそこなんだけどおいでよ」

 手を掴まれてしまった。

「いいえ、結構です、」
「えー? だめー? 痛いでしょ? それならさー、飯でも行かない? 奢るからさ」
「困ります、」
「いーじゃん。こんなところで一人で泣いてるかわいい子放っておけないよ。失恋でもした? 失恋には新しい出会いが必要だよ。運命の出会いって信じる? 俺は今日がその日だと思って、」
「は? 今日が命日の間違いだろ? 俺の婚約者に馴れ馴れしく話しかけるなんて命が惜しくないんだな」

「イテッ! 何するんだよ。この子を保護しようとしてただけだ。泣いてたんだぞ。あんた婚約者ならそんな顔をさせるなよ、ってイタタタタっ! 離せよ。」

 エルマンが男の人の腕を捻り上げていた。

「エマ、なぜ一人で街に来た! ケガをしてるじゃないか。帰るぞ」

 男の人の腕を振り払い私を抱き上げた。エルマンは慰謝料だと言って男の人にお金を押し付けていた。男の人は痛そうに腕をさすっていた。

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