記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった

さこの

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お兄様は年上好きだった!

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「エマ話があるんだけどいい?」

 エルマンの家から帰ってきたらお兄様待っていた。

「うん。もちろん」

 改めて何の話だろう? お兄様とソファに横並びで座る。なんとなくお兄様が緊張していて言いにくそうに話をしてきた。

「エマ、シャーリー先生は分かる?」
「うん。屋上の鍵を貸してくれたり応接室を使わせてくれた先生でしょ?」

 学園を優秀な成績で卒業して語学の先生になったんだよね。小さい頃は外国で過ごしていたとか? 薄い茶色の髪の毛に肌が白くて大きな瞳ですこし切れ長の瞳。クールビューティーな見た目とは違って、面倒見のいい先生。学園で会うと気遣いの言葉をくれる。好きな先生の一人。

「そうだな。あの時シャーリー先生はエマをすごく心配してくれて僕も相談をしていたんだ」
「お兄様にもたくさんご迷惑をおかけしました。すみません」

 あの時からお兄様のラブレターの数が減った。淫乱な妹と噂をされたせいで。あの時は辛かった。

「エマ、何度も言うがそれは気にしなくていい。あの日から誰が味方で誰が敵かと見極めることが出来たんだから。エルマンはエマを必ず幸せにしてくれる。だからエマをエルマンに任せることにしたんだからね」

 お兄様はエルマンと普通に仲がいい。お兄様はエルマンを信用しているしエルマンにとってはフェルマン様以外初めての友人だとか言ってた。それは妬ける! お兄様は私のお兄様でエルマンは私の婚約者なのにー!

「僕はエマが大好きで愛しているんだけど、残念ながら結婚はできない」

 フェルマン様みたいな事を言うのね、うちはがっつり血が繋がった兄妹だから結婚はできない。

「私もお兄様が大好きです」

 かっこよくて優しくて、血がつながった兄弟じゃなかったら結婚したいと思うほど。急にどうしたのだろう。お兄様がわざわざこんなことを言うために私を呼び出すことはないと思うのよ。

「ありがとう。エマを傷つけるんじゃないかと思って今まで言い出せなかったことがある。聞いてくれるかい?」

 お兄様がいつになく真剣な顔だったのでなにがあったか逆に心配になる。

「お兄様! 私はお兄様に傷けられたことなんて今まで一度もありません。お兄様、何があってもドンと受け入れるつもりです。だからそんな顔をしないでください」

 昔の記憶が入ってきた時から今までお兄様にお世話になりっぱなしだった。もしお兄様が悪いことをして捕まることがあったとしてもお兄様の味方でいるつもり。お兄様の手をぎゅっと握りしめた。

「あぁ、ありがとう。エマ。落ち着いて聞いてくれ」
「はい」



 お兄様から話を聞いて私はショックを受けてしまった。おめでたいことに変わりはないのだけど、まさかお兄様がシャーリー先生と婚約をするなんて! お兄様は年上できれいなお姉さんが好みだったなんて!

「エマ祝福してくれるかい?」

「も、もちろんです、おにいさま」

 私笑えているよね? 

「今度シャーリー先生を連れてくるから正式に紹介するよ」

 お兄様はその後お父様とお母様にこれからのことを相談しに行くと言って部屋を出て行った。するとルシアンが私の様子を見に来た。


「お嬢、どうした? 浮かない顔をして」
「……そんなことないよ」
「なかったらそんな顔しないだろう? 言ってみ」
「お兄様婚約するんだって」
「へぇ。坊ちゃんが。そりゃめでたい。お嬢はめでたいと思わなかったのか?」
「それは思っているけど、」
「思っている顔じゃないな。なにか思うことがあるから浮かない顔してるんじゃないのか?」

 おめでたいことだって分かってるのにお兄様を取られちゃうと思ったら寂しくなってしまったなんて言ったら変に思われるかもしれない。

「俺は今のお嬢と同じような顔をした人物を知っている。それは坊っちゃんだ。お嬢が婚約するって言った時だったな。自分の手を離れるようで寂しいと言っていた。だからお嬢も寂しいとか思ってんじゃないのか?」

 ルシアンに隠し事は出来ない。

「お兄様も同じ気持ちだったの? お兄様はおめでとうって言ってくれたのに」
「お嬢の前では恰好つけたいに決まってるだろう。でもお嬢はその気持ちを素直に伝えた方がいいと思うけどな。坊っちゃんよろこぶぞ? おっと、泣くなよ。俺が泣かしたみたいになる」

 ルシアンは、泣くな、泣くな。って頭を撫でてくれた。この世界に来て初めてお兄様に会った事とか優しく接してくれた事とか色々思い出してきて色んな感情が込み上げてきた。
それにルシアンも優しい。そんな事を思っていたらぶわぁって涙が溢れ出てきて、うわぁん。ってルシアンに抱きついて泣いてしまった。

「思いっきり泣け、溜め込むよりスッキリするから」

「ぐずっ、ありがどう、」

 十分くらいかな、思いっきり泣いたから喉が痛くなってきた。

「お嬢、お茶でも飲むか? 果実水の方がいいか? 声が掠れている」

 ルシアンから離れようとしたらガチャって扉が開いた。



「何をしているのか聞いてもいいか?」
「あ、エルマン」

 なんかすっごい怒ってる? 黒い顔をしていた。

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