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ダンスパーティー
しおりを挟む「ダンスパーティーに参加ですか?」
「そうなの。エルマンとエマちゃんにも参加してほしいの」
お茶を飲みながら楽しく侯爵家の歴史を学んでいる時だった。王族に縁のある方のお屋敷で開かれるみたいで隣国の方との交流会の意味があるとか? 伯爵家以上限定のパーティーだって。
「分かりました。エマもいいかい?」
「はい。エルマンが参加するのなら私も必然的に参加ですね」
エルマンがダンスパーティーに参加とは珍しい。エルマンは女性が苦手だしダンスを踊りたくないと思っていたから。
「はい、決まりね。エマちゃん明日デザイナーを呼んでいるからドレスを作りましょうね」
「エルマンから贈られてまだ袖を通してないものがあるのでそれを、」
「今回は仮面ダンスパーティーなのよ。いつもと同じドレスじゃ身バレしちゃうから、いつもとは違うドレスを着たほうがいいわ。私も作るから一緒に作りましょう。それと今回入場は別よ。仮面をかぶっていても二人で入場したらすぐにバレしてしまうわ」
「は! 仮面ダンスパーティーなんて怪しいではないですか!」
エルマンの言う通り怪しい。仮面をつける理由とは?
「王族の誰かが参加するから顔バレしたくないのよ。身分を気にせずにお話をしたいから仮面をつけるのだそうよ。アンダーグラウンドなパーティーではないわ。たまにあるのよ? 王族がお忍びで参加するから急遽仮面をつけるパーティーになったりね。今回仮面は主催者側が用意をするから大丈夫なんだけど、身バレしないだろうとハメを外す人もいるわ」
ほー。勉強になる。入場は別でもエルマンと行動するのだから変な人には声をかけられないでしょう。そこは安心ね。
「エルマンの髪色は目立つからウィッグも用意させるわね」
「うわぁ、行きたくなくなった」
そこはエルマンに激しく同意!
「社会勉強だと思いなさいな。いかがわしい仮面パーティーもあるにはあるけれど、そこは絶対に不参加よ! 大捕物もあったり物騒だから」
わぁっ。絶対行きたくない! 正式な仮面パーティーといかがわしい仮面パーティーがあるって知らなかった! 王族がお忍びで来るから仮面をかぶるとか物語だけかと思っていた。
そして仮面パーティー当日、私はエルマンの家で支度をしていた。
「恥ずかしいわね。大丈夫かしら」
「お似合いですよ! セクシーでキュートです!」
仮面パーティーはいつものドレスとはテイストが違った方が身バレしにくいので、肩が丸出しで髪の毛はアップにして後れ毛がなんとなく色っぽい? と思う。黒と紫とピンクのドレスなんて着たことがないから仮面をすると確かに私だって分からないかも。
エルマンはウィッグを付けているから別人だと思われそう。どんな衣装なんだろ。楽しみだわ。
着替えが終わったのでお義母様とエルマンが待つサロンへと行く。
「エルマン、どうしちゃったの!」
少し胸元が空いたセクシーで遊び慣れた感のある衣装に黒髪のウィッグ! もう別人じゃないの! かっこいいんだけど近寄ったら火傷しそうな感じ……エルマンだからいいけれど、絶対に近寄りたくないタイプだ。
「母に選ばせたらこうなった。まじまじと見ないでくれ。恥ずかしいから。エマ……着替えることは出来ないのか? 似合っているけれどそんな姿見たくない……虫が寄って来そうじゃないか!」
「恥ずかしいけれど、これなら私だってバレないかなと思って」
「バレないと思うわよ! 入場は別でも会場内で一緒にいてもエルマンとエマちゃんだなんて誰も思わないと思うわ。きょうは名前で呼ぶのは禁止ね! 一曲ダンスでもして後はいつも通り交流していいわよ。挨拶は必要ないからその辺は楽よね」
お義母さまはいつもよりドレッシーな雰囲気でマダム感を出している。とてもお似合いだった。
「エマ、仮面をかぶるからと変な好奇心を持ってはダメだぞ。ダンスは俺とだけにしてくれ。心配で胃が痛くなってきた」
そして到着したお屋敷は幻想的な光で美しかった。馬車は一緒だったけれど、ここからは別行動で受付で仮面を渡された。
「この仮面はウサギだわ」
仮面と聞いたから鳥の羽のようなふさふさしたものをイメージしていたら違った。うさぎの仮面を付けて会場に入るといろんな動物の仮面をつけている人がいて賑やかだった。
「可愛いウサギさん、よろしければお話をしませんか?」
背後から声が聞こえる。振り向くとそこには。
「もしかしてフェルマン様?」
こそっと名前を告げると口角が上がった。
「正解。今日はライオンさんと呼んでもらおうかな?」
フェルマン様はきちっと正装をしてエルマンのようにウィッグを付けていた。色は銀色だから目立つけど良く似合っていた。
「ウサギさんはこれからアイツと合流?」
「はい。その予定です」
「合流するまで一緒にいようかな。ウサギさんのような小動物が一人でいるとオオカミに食われてしまうかも。顔は隠れているけれど可愛さは隠せないし、今日の衣装はそそるね」
「ライオンさん、」
「何がライオンさんだ!」
「あ、」
「おっと黒豹さんが怒っているぞ。まだ何もしてないし、話をしただけなのにな。怖い怖い」
エルマンは黒豹の仮面を付けていて妙に似合う。見るからに悪そうな雰囲気に当てられそうになった。これを見て誰もエルマンとは思わないだろう。イケメンは隠せないんだ。
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