上 下
61 / 74

ダンスパーティー

しおりを挟む

「ダンスパーティーに参加ですか?」
「そうなの。エルマンとエマちゃんにも参加してほしいの」

 お茶を飲みながら楽しく侯爵家の歴史を学んでいる時だった。王族に縁のある方のお屋敷で開かれるみたいで隣国の方との交流会の意味があるとか? 伯爵家以上限定のパーティーだって。

「分かりました。エマもいいかい?」
「はい。エルマンが参加するのなら私も必然的に参加ですね」

 エルマンがダンスパーティーに参加とは珍しい。エルマンは女性が苦手だしダンスを踊りたくないと思っていたから。

「はい、決まりね。エマちゃん明日デザイナーを呼んでいるからドレスを作りましょうね」

「エルマンから贈られてまだ袖を通してないものがあるのでそれを、」
「今回は仮面ダンスパーティーなのよ。いつもと同じドレスじゃ身バレしちゃうから、いつもとは違うドレスを着たほうがいいわ。私も作るから一緒に作りましょう。それと今回入場は別よ。仮面をかぶっていても二人で入場したらすぐにバレしてしまうわ」

「は! 仮面ダンスパーティーなんて怪しいではないですか!」

 エルマンの言う通り怪しい。仮面をつける理由とは?

「王族の誰かが参加するから顔バレしたくないのよ。身分を気にせずにお話をしたいから仮面をつけるのだそうよ。アンダーグラウンドなパーティーではないわ。たまにあるのよ? 王族がお忍びで参加するから急遽仮面をつけるパーティーになったりね。今回仮面は主催者側が用意をするから大丈夫なんだけど、身バレしないだろうとハメを外す人もいるわ」

 ほー。勉強になる。入場は別でもエルマンと行動するのだから変な人には声をかけられないでしょう。そこは安心ね。

「エルマンの髪色は目立つからウィッグも用意させるわね」

「うわぁ、行きたくなくなった」

 そこはエルマンに激しく同意!

「社会勉強だと思いなさいな。いかがわしい仮面パーティーもあるにはあるけれど、そこは絶対に不参加よ! 大捕物もあったり物騒だから」

 わぁっ。絶対行きたくない! 正式な仮面パーティーといかがわしい仮面パーティーがあるって知らなかった! 王族がお忍びで来るから仮面をかぶるとか物語だけかと思っていた。

 そして仮面パーティー当日、私はエルマンの家で支度をしていた。

「恥ずかしいわね。大丈夫かしら」
「お似合いですよ! セクシーでキュートです!」

 仮面パーティーはいつものドレスとはテイストが違った方が身バレしにくいので、肩が丸出しで髪の毛はアップにして後れ毛がなんとなく色っぽい? と思う。黒と紫とピンクのドレスなんて着たことがないから仮面をすると確かに私だって分からないかも。

 エルマンはウィッグを付けているから別人だと思われそう。どんな衣装なんだろ。楽しみだわ。

 着替えが終わったのでお義母様とエルマンが待つサロンへと行く。

「エルマン、どうしちゃったの!」

 少し胸元が空いたセクシーで遊び慣れた感のある衣装に黒髪のウィッグ! もう別人じゃないの! かっこいいんだけど近寄ったら火傷しそうな感じ……エルマンだからいいけれど、絶対に近寄りたくないタイプだ。

「母に選ばせたらこうなった。まじまじと見ないでくれ。恥ずかしいから。エマ……着替えることは出来ないのか? 似合っているけれどそんな姿見たくない……虫が寄って来そうじゃないか!」

「恥ずかしいけれど、これなら私だってバレないかなと思って」

「バレないと思うわよ! 入場は別でも会場内で一緒にいてもエルマンとエマちゃんだなんて誰も思わないと思うわ。きょうは名前で呼ぶのは禁止ね! 一曲ダンスでもして後はいつも通り交流していいわよ。挨拶は必要ないからその辺は楽よね」

 お義母さまはいつもよりドレッシーな雰囲気でマダム感を出している。とてもお似合いだった。

「エマ、仮面をかぶるからと変な好奇心を持ってはダメだぞ。ダンスは俺とだけにしてくれ。心配で胃が痛くなってきた」


 そして到着したお屋敷は幻想的な光で美しかった。馬車は一緒だったけれど、ここからは別行動で受付で仮面を渡された。

「この仮面はウサギだわ」

 仮面と聞いたから鳥の羽のようなふさふさしたものをイメージしていたら違った。うさぎの仮面を付けて会場に入るといろんな動物の仮面をつけている人がいて賑やかだった。

「可愛いウサギさん、よろしければお話をしませんか?」

 背後から声が聞こえる。振り向くとそこには。

「もしかしてフェルマン様?」

 こそっと名前を告げると口角が上がった。

「正解。今日はライオンさんと呼んでもらおうかな?」

 フェルマン様はきちっと正装をしてエルマンのようにウィッグを付けていた。色は銀色だから目立つけど良く似合っていた。

「ウサギさんはこれからアイツと合流?」
「はい。その予定です」
「合流するまで一緒にいようかな。ウサギさんのような小動物が一人でいるとオオカミに食われてしまうかも。顔は隠れているけれど可愛さは隠せないし、今日の衣装はそそるね」
「ライオンさん、」
「何がライオンさんだ!」
「あ、」
「おっと黒豹さんが怒っているぞ。まだ何もしてないし、話をしただけなのにな。怖い怖い」

 エルマンは黒豹の仮面を付けていて妙に似合う。見るからに悪そうな雰囲気に当てられそうになった。これを見て誰もエルマンとは思わないだろう。イケメンは隠せないんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki
恋愛
ウォーマン王国の第四王女として生まれたのにある事情で生まれた時から第二王子として生きていくことになった。 一部の人間しか俺が女性であることを知らず、隠し病弱で馬鹿な第二王子の振りをして一切表に出ず、日影で生きてきたのに国王になってしまった。 国王として国を民を守る為に戦に明け暮れついに大陸を統一して国に戻る時に落馬して打ちどころが悪かったのか呆気なく死んだ。 次は平和な世でのんびり気楽に生きていきたいと思ったのに乙女ゲームの世界の悪役令嬢になってくれと言われて… 前世と前々世の記憶を持つ主人公がいざ、悪役令嬢として生きていく。 女主人公ですが、前世ずっと男として生きてきたので心の中では俺と言います。 恋愛もののつもりですが、前半主人公の恋愛らしきものはほとんど出てきませんw ユルユル設定です!ご容赦下さい。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

影の王宮

朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。 ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。 幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。 両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。 だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。 タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。 すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。 一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。 メインになるのは親世代かと。 ※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。 苦手な方はご自衛ください。 ※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>

私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。 結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。 だからもう離婚を考えてもいいと思う。 夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。

処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン
恋愛
 王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。   ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。 「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」 「はい?」  叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。  王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。  (私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)  得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。  相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって――― 生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話 ※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。 ※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。 ※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...