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ヴァネッサ様のデビュー

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 王宮のパーティーも華やかだったけれど、さすが公爵家。一般貴族のパーティーとは比べ物にならない。一体何人が参加しているのだろうか。準備だけでも大変だろうな。

「盛大だね」
「そうだな」
「エルマン、どうしていつも通りなのよ」

 たくさんの人がいる。公爵家と付き合いのある家となれば国の重鎮も多い!

「エマ見てみろ、大臣たちがこぞって参加しているぞ」
「なんで緊張するようなこと言うのよ」
「ほら知った顔もいる。アルロー殿だ」

 大臣達と一緒にいる。

「本当だ……。こうやって見るとアルロー様ってすごい人なんだね」
「王族だからな。友人だと気さくに接してくれるから忘れがちだけどな」

 ゲストの顔ぶれがすごすぎて萎縮しちゃう。そしてざわざわしていた会場がシーンと静まりかえった。本日の主役のヴァネッサ様とご家族の登場だ。
 公爵様の挨拶に始まりヴァネッサ様が紹介され集まってくれたゲストに挨拶をする。堂々としたたたずまいを見て公爵家のお嬢様なんだわとしみじみと思った。

 ヴァネッサ様には婚約者がいないから公爵様とダンスを披露していた。普段のヴァネッサ様とは違って優雅で綺麗だった(失礼)

 ヴァネッサ様はダンスの披露後、ご家族と挨拶まわりをしていた。

「ヴァネッサ様に挨拶をしたら帰ろうか」
「そうだな、さすがに疲れた」

 エルマンは侯爵家の嫡男で社交をサボっていたから、皆さん珍しいものを見るような目で声をかけてくる。声をかけてくれる大半の皆さんが好意的で助かるのだけど、たまにエルマンを貶めようと嫌味を言ってくる人もいた。でもエルマンの知識量は凄まじく相手を一撃、顔を真っ赤にしていた。そんな事が続くと見ている方も疲れる。心臓に悪い……。

「エルマンかっこよかったよ!」
「惚れ直したか?」
「うん。はらはらしたけどね」
「吊り橋効果だな」
「そうかも!」
「社交は面倒だけどサボっていると余計な事を言われるんだな。エマと参加出来るものだけは適度にこなしていこう」

 なんの取り柄もない伯爵家令嬢が人気の侯爵子息と、婚約したのだから面白くない人たちが結構いたりする。学園とは違って社交界には私たちの味方も多いので、気にしていない。文句を言われても価値を落とすのは私たちではないのだから。

「エマ様~! 来てくださったのですね! ありがとうございます。嬉しいですっ!」

 ヴァネッサ様が私の腕に絡みついてきた! 挨拶をしたいのに出来ないではないですか!

「ヴァネッサ様、この度はデビューおめでとうございます」

 離れようとしても離してくれない……

「エマ様にお祝いをしていただけて本当に嬉しいです。本日のドレス姿とてもおキレイです。今度私にもドレスを贈らせてください!」

 それは困る……。

「あ、お父様お母様お兄様~。こちらいつもお話をしている私の推しのエマ様です」

 なんと公爵家の皆さまに紹介をされてしまった!

「いつも娘が世話になっているね」
「ヴァネッサ、少しおとなしく出来ないの? はしゃぎすぎです!」
「やぁ、いつも妹から話を聞いているよ」

 緊張して挨拶が辿々しくなってしまった。すかさずエルマンがフォローしてくれてその後公爵家のお茶会に招待されてしまった! ゆっくりお話をしましょう。と夫人に言われた。

「エマ様とお茶会だなんて嬉しい。すぐに予定を立てますから!」

 ヴァネッサ様が楽しそうだからいっか。ヴァネッサ様のおかげで学園生活も落ち着いてきているのだから感謝しかない。

「お招きありがとうございます。こちらこそ楽しみです」

 笑顔で答えた。

「わぁ、素敵な微笑み……お茶会が終わったあとは画家を呼ぶので私とエマ様二人だけで描いてもらいませんか! その後は陛下に頼んで国立美術館に飾ってもらいましょう! そして永遠に絵画として残すの」

「え、それはちょっと、どうかと」

 どうしてそんなことで陛下の名前を出すのよ! 永遠に残すって……。

「エマ嬢、妹がすまないね。エマ嬢が好き過ぎておかしな事を口走っている。我が妹ながら恥ずかしい奴だ。これに懲りずに仲良くしてほしい」

 小公爵様に言われて断れるわけもない。戸惑いながらも答えた。

「はい、こちらこそ? よろしくお願いします」
「さて、ヴァネッサ! そろそろ猫を被るように! 挨拶はまだまだ続くんだからな」
「せっかくエマ様とお話ししているのにですか! お兄様の意地悪っ」

「ヴァネッサ嬢、デビューおめでとう。それではまた学園で」

 エルマンが切り上げてくれた。公爵家の皆さまにご挨拶出来たので私たちは帰ることにした。

「華やかだったね! 見たことのない方もたくさんいたね」

 外国の人かな? うちの国の人っぽくなかった。

「外国からのゲストが何人もいたし隣国の公爵家もいた。数年前の流行風邪で隣国はたくさんの死者が出た。その中には貴族学園も含まれて、若い貴族が何人も亡くなって大変な思いをした。特効薬を見つけたのは我が国の学者でそれを支援したのがヴァネッサ嬢の家だ。その繋がりもあるのだろうな」

「エルマン、もしかして他国の貴族の顔を見て名前とか分かっちゃう感じ?」
「そうだな。繋がりのある国なら大体は答えられると思う」

 それはもうSi◯じゃない! どんな頭の構造なの! エルマン恐ろしい。
 



 
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