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美術館で

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 美術館に入り静かに美術鑑賞をする。エルマンも興味ありそうにしていた。

「ねぇ、エルマン美術に興味あるの?」
「世界の美術大全巻って本がある。この王国美術館に所蔵されている絵が何点かあって興味があった。実際の大きさや絵のタッチを見ると感動するな」

 エルマンの頭の中を見てみたい。スマホに拘らなくていいからねと言わなきゃ。スマホと人間の脳は構造が違うからね? なんでも記憶に残さなくていいから。知識としては良いかもしれないけど。

「おや、エマさん!」
「あっ、アルロー様。こんにちは」
「こんにちは。もしかして、デートとか?」

 指をさされる。そうだ私エルマンと手を繋いだままだったんだ。

「こんにちは。アルロー殿、今日はエマにランチに誘われて、ここに来たんですよ。エマ、デートに見えるって」

 手をさらにぎゅっと繋がれた。側から見たらそう見えるよね。

「ははっ。そうか、残念だなぁ。エマさんにはまだ相手がいないと思っていたのに、粘着質な彼がいるようだし残念ながら私は手を引こう。でもエマさんと話をするのは楽しかったから、友達になってくれないか? まだ帰国したばかりで友達がいないんだよ」

 友達? 

「はい、喜んで」

 にこりと返事をする。

「エマ、が出来て良かったね。アルロー殿、是非私とも友達になってください。そしてエマともし会う事があれば私も一緒に伺います」

 エルマンとアルロー様が握手していた。高貴な2人が握手する姿は眼福だ。

「分かったよ。降参。友達が2人出来たと思って諦めよう。実は今度新たに手に入れた絵画のお披露目会をするから2人とも来てよ。小さなパーティーなんだけど、美術好きが集まるからさ」

「喜んで参加します。ね、エマ」
「はい」

 社交の一環として楽しもうと思った。そして次の週はノエル様のお茶会に行った。エルマンが迎えに来てくれてエスコートしてくれる。ノエル様にはエスコート不要なんだけどね。と苦笑いをされていた。

「ノエル様、これ良かったら是非」

 今日のお茶会に出してもらえれば……と抹茶のクッキーを作ってみた。抹茶を苦手な方もいると思うので、ココアと抹茶の渦巻きクッキーを前世で作ったレシピを元に作ってみた。前世の私はお菓子作りが趣味で特にクッキーを作るのが好きで、いろんなクッキーを缶に詰め込んで楽しんでいた。でも前世のものをこの世界で広めると世界観が崩れるかもしれないので注意をしている。私は目立ちたくないのだから!

「あら! もしかして抹茶? エマちゃんもあのお店に行ったことあるのね?」

 なんとノエル様もあのお店を知っていた。初めは苦味が苦手だったようだけど、癖になって今では緑茶や抹茶も好きになったみたい! 嬉しいなぁ。ノエル様がエルマンと私を紹介してくれて席についた。エルマンがお茶会に参加をするのはとても珍しいので驚かれていたけれど、きちんと対応していた。やれば出来るのね。いつもとは違う貴公子風だった。ノエル様のお茶会にはエルマンには色目を使う令嬢がいなかったのでエルマンも終始笑顔でいた。

「エマさんとデルクールエルマン子息はどういうご関係なの?」

 隣に座っていたノエル様のご友人に聞かれた。

「同じ学園で、親しくさせてもらっています」
「あら、そうなのね。エスコートされるくらいですもの。愛されているのね?」

 親しくしている。とエルマンが言うとなるほど。と納得されるので真似して言ってみたけれど、そう言う意味なの? 返答に困る!

「その、」
「困った顔をするエマも可愛いね。そうです。と自信を持ってもらえるように頑張るよ。実は彼女に猛アタック中なんですよ。親しい関係ではあるのですが、あと一息なのですよ」

 エルマンが私の肩を抱いてきた。

「あら! 素敵ね! デルクール子息を応援しますわね。エマさんもその想いに応えられますように」

 ふふっと。笑われた。

「ねぇエマさん、ぜひ私ともお友達になりませんこと? ノエル様とは学生時代から仲良くしていて、いつもお茶会を楽しみにしているの。新しいお友達が出来るって幸せよね」

 ノエル様のご友人クレール様は社交界について色々と話をしてくれた。クレール様が学園生活に慣れなくて困っていたところノエル様が声をかけてくれて、仲良くなったんですって。クレール様の文字がとても美しい。と褒めてくれたのがきっかけなんですって。

「私ね、学園に入学する前まで領地にいたから友達がいなくて、学園ではすぐに友達ができると思っていたの。でも自分から声をかけることが出来なくて、1人でいることが多かったの。ノエルに声を掛けられて好きなものや好きな事を話していたら楽しくなって笑顔になれたの。社交界に出るのも不安だったけど、夫とも出会えてこうして新しい友達もまた出来たわ。エマさんも社交界に出たばかりで不安もあると思うけれど私達もいるからね」

 ノエル様に私のことを聞いているのだろうと思った。そして受け入れてくれているのだと思う。クレール様もステキで優しい方。

「人気のある彼がいると大変だと思うけれど、負けないでね! エマさん!」

 圧がすごい……。エルマンを見ると満更ではない顔をしていた。



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