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エマが人気の令嬢に!
しおりを挟む長期休暇もなるべくエマに会いに行く。何かと用事を作り街へも連れ出した。俺はエマが好きだ。伯爵に絶対結婚するから見合いは断ってくれ。と頼み込んだ! デビューの時に伯爵夫妻やキリアンの姿が見えなかったのは、エマを紹介しろ。という家が後を絶たず丁寧に断っていたからだそうだ。俺の家は侯爵家だから俺と仲睦まじい姿を見て大半は諦めてくれたそうだ! 中にはまだ婚約してないから。というしつこい家もあるのだそう。そんなぽっと出の男に俺は負けない! なんせエマの秘密を知っているのは俺だけだからだ!
王宮でデビューした令嬢たちの中で1番エマが可愛かった! というか後は興味がないからエマしか目に入らなかった。いつも可愛いのだけど、あのドレスがまた初々しく可憐で見惚れてしまった! くそっ。キリアン殿がパートナーか。その役目俺がしたかった。ファーストダンスはキリアン殿、次は伯爵か。周りの子息達がエマとのダンスを狙っていた。ここは負けてはいられない! すかさずエマに声を掛けると、ぱぁぁーっと笑顔が溢れた。俺の顔を見てそんなに嬉しそうな顔をするなんて反則だろ。周りの子息たちの鼻の下が伸びている! ダンスを誘うと喜んで。と受けてくれた。エマはダンスがうまいな。このまま二曲踊ってエマは俺のものだ! と見せつけてやりたいがそんな卑怯な事は出来ない。きちんと婚約をした後に堂々と二曲、三曲と踊ってやるからな! それにしてもエマの衣装は可愛いのに目のやり場に困る! 見たい気持ちはあるのだが、盗み見は犯罪だ! 仕方なく目に入る分は許してもらおう。
楽しいダンスの時間もあっという間に終わってしまった。さて、このままエマを連れ出して……とおもっていたらなんとセドリック・アルロー殿に声を掛けられた。
セドリック・アルロー殿は現陛下の弟君で外交担当をしている太公家の三男。ずっと外国で過ごして来て先月末に帰国したばかり。どうやらこの夜会で社交を始めるようだ。ここ10年の貴族名鑑を丸覚えして10年後こんな顔になるであろうと想像した顔と一致した。王族の血を引くのに偉ぶっていない所がとても感じが良かった……人好きしそうな笑顔と話し方だった。美術館で知り合ったといい、エマの事を気に入っているようだった。じゃないとわざわざダンスに誘いやしない。
他の令息とダンスを踊るエマを見る時間は長くて息が詰まるかと思った。いつ終わるのかを待っていると外野がうるさかった。一緒に踊れだの、飲み物がどうのだの、おしゃべりをしようなど。全く興味がない。エマの両親を見ると、息子を紹介させてくれ。などと言われている! 厳つい顔をしたエマの父親だが根は優しく、助け合い精神を持ち貴族たちからは信頼を得ている。キリアン殿は令嬢に囲まれていたかと思うと今度は令息に妹を紹介してくれ。と年上の子息達に言われていた。社交界デビューの前にエマと婚約までしたかったのに、未だ友達止まり……情けない。このままではいけないと思い、エマに振り向いてもらえるような男にならなくてはいけないと心から思った。
セドリック・アルロー殿とのダンスが終わりすぐにエマを迎えに行く。これ以上子息にエマを触れさせたくない。嫉妬のあまり胸がはち切れそうだ。セドリック・アルロー殿がエマにデートの誘いを申し出た。手慣れているな! そして名前で呼べと言い、あろう事かエマの手にキスを落とした! なんてやつだ! 今すぐにエマの手を洗いたい衝動に駆られる。とにかくこの場を離れよう。ダンスフロアになどいたらまたエマが声を掛けられてしまう。
エマが可愛い! コルセットが苦しく大好きなスイーツが食べられないと泣くなんて! そんな顔を見せるのは俺の前でだけ。今日のエマは可愛いのに、その、色気もある。伯爵家のメイド達に身体をぎゅうぎゅうに締められたというが、良い仕事をするな……こほん。それはさておき無性にエマを甘やかせたくなる! そしてセドリック、アルロー殿との事を忘れさせよう。そう思った。そして俺はエマにフルーツを食べさせた。並んでいるのにスイーツとフルーツを吟味した結果、旬のもので尚且つ、高価なものを口にすると満足感が得られるのではないか? と思い選んだ。
途中エマの胸に触れるというハプニングもあったが用意していたプレゼントを渡すことができた。またネコか。と思われるかもしれないがエマは動物が好きなようだし、うちの犬も見たいという。エマには可愛い犬が似合うと思うし、うちの犬は番犬とかそんな部類だ。あいつらはしっかりトレーニングされているから噛みついたりはしないだろうが、何かあっては困るので護衛にも側にいてもらおう。
今回のプレゼントはネコのブローチでキリアン殿に教えてもらったサクラというネコに似せて作らせた。ネコの瞳はサファイヤで出来ていて黄金色の毛はシトリンを使ったで高価な品。家の仕事についてきちんと向き合うことも増え、父や母も喜んでくれている。これもエマのおかげでデビューのプレゼントを買わなくてはならないと相談するとアクセサリーの提案をされた。しかしわざとらしい首飾りなどを渡しても受け取ってもらえないかもしれない。それなら受取拒否の品を作ればいいのだと思った。受け取ってもらえてよかった。
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