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友達
しおりを挟む~エルマン視点~
「珍しいな、1人か?」
1人本を読みながら弁当をたべていた。
「フェルマンか……」
「エマちゃんに友達が出来たんだってな。とうとう振られたのか? 俺の出番が回ってきたとか?」
フェルマンはエマの事を諦めていないのか。
「一生回ってくることはない」
「まだ婚約してないんだろう? 俺も本気でアタックするかな」
「冗談ならよせ。本気なら受けて立つ」
「おっと、こりゃマジだ! エマちゃんに興味があるのは本心だ。可愛らしいし不思議な子だ。俺の壁ドンをスルー出来るなんて、興味があっても仕方なくないか?」
「エマはそんなものに引っかからないぞ」
「お前、変わったな。エマちゃんにベタ惚れしてんだろ? エマちゃんは」
「軽々しくエマの名を呼ぶな。今までの腑抜けの俺とは違う。フェルマンには申し訳のない事をしたと思っているが、俺は変わる」
「へー。俺といる時は俺に、エマちゃんといる時はエマちゃんか。結局お前は誰かに依存しなきゃ何も決められないんだろ?」
確かに昔の俺はそうだった。フェルマンに頼りっぱなしだった。
「俺が自分に自信がなかっただけだ。だから誇れる人間になるように努力するしかない。今すぐは無理だけど、自分を嫌いになる前に気がつけて良かったと思っている」
「見合い相手を何人も傷つけたよな」
「……それに関しては悪いと思っている。できる限りのことはしているつもりだ」
断った見合い相手には、父や母の知り合いに頼み見合いを勧めている。中には既に婚約に至った令嬢もいるし、謝罪もした。たまに勘違いした令嬢がいてフェルマンに未練たらたらだったり、エマに手を出した令嬢もいたが、最低だったあの頃には戻らないし、フェルマンも傷つけたくない。
「俺は楽しかったけどな。やっぱ顔がいいってのは正義なんだな。じぃさんに感謝だよなー。俺のクズだった父親もお前の父親もイケメンだしな。あの中ではクズだった父親が一番だけどな。血は争えないな」
「お前、令嬢から逆恨みされてないか? それとチャラチャラした性格はやめたんだな」
気さくに声をかけていて人気だったフェルマンだが、最近は1人でいる事が多い。近寄るなオーラが見えるほどだ。
「誰にでもいい顔をするのは疲れる。そう考えるとエマちゃんの兄キリアン殿はすごいな。教師の手伝いも嫌な顔をせずに淡々とこなしているし、困った生徒には声をかけているし、解決に導き出す手腕はすごい」
「キリアン殿か。そうだな、疲れているだろうな。毎日資料と睨めっこしている」
「エルマンがエマちゃんを落とせなかったら、俺の番が来たと思うことにするからな」
「好きにしろ。順番は回ってこない」
「自信があるんだな。まぁ、応援してやるよ。後継は必要だし侯爵家がうまくやっていかないと下の家は切られてしまう。そうなるのは勘弁だからな」
じゃぁな。とフェルマンは好きなことを言うだけ言って去って行った。フェルマンの言う通りかもしれない。フェルマンといるとフェルマンに頼り、エマといるとエマに好きになってもらえるように努力している。エマに友達が出来たことは嬉しいが、エマとの時間を取られるのが悔しい。エマは誰のものでもないというのに。これが依存なのだろうか。
「あ、エルマンいた!」
「エマ? 友達はどうした」
「食事が済んだから別れてきた。放課後お茶もするし。それよりエルマン顔色悪くない?」
「そうか? 自分では分からない」
「食欲ないの? 残してるじゃない」
「あ、あぁ、本に夢中になってた」
「食事中にも本を読むの? 何この本」
「世界のお菓子図鑑」
「ふふっ。スマホになんてならなくてもエルマンは物知りなのにね。あ、そうだ。お茶飲まない? 食堂で氷を貰ってきたの」
「……エマが淹れたのか?」
「うん。前世ではよく飲んでいたから、適当に淹れているから口に合うか分からないけど、水出しにして持ってきてたの。あと、パウンドケーキも作ったんだけど、食欲ないのなら今度にする?」
エマらしいといえばエマらしいな。ランチをしてお茶を飲みながら過ごすのが一般的なランチの誘いだというのに。
「エマがせっかく用意してくれたのだからいただくよ」
「無理してない?」
「ちょうど飲み物が欲しいと思っていたんだ」
冷やした緑茶はサッパリして苦みが少なく喉ごしもいい。本で得た知識だけではなく経験するというのは大事だ。エマといると今まで知らなかった事を知ることが出来る。
「どう? 普段冷たいお茶って飲まないでしょう。ダメだったら無理して飲まなくてもいいんだよ」
「いや。美味いよ」
「良かった。エルマンいつも嫌な顔せず付き合ってありがとう。前世では好んで飲んでたの。紅茶も好きだけど私のイメージのお茶はやっぱり緑茶なの」
紅茶も緑茶も同じ葉を使っているけれど作り方が違うだけ。同じ茶であることに変わりはない。
「淹れ方でも変わるんだな。またあの店にいこうな」
「うん。エルマンがいると便利だね」
あはは。と笑うエマ。
「そうだろう。俺は便利な男だから、早いうちに予約しておかないと売約済になるぞ」
「……ちゃんと考えるよ」
! 思った反応と違った。
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