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自供
しおりを挟む~エルマン視点~
「そうよ! 私がやったの! これで満足?」
「開き直られても遅いです。反省の色もありませんし、私が罪を軽くするように校長に進言する事はありません。何をしたかしっかり反省をしてください」
「先生には分からないわよ! エルマン様を独り占めしてフェルマン様まであの女にちょっかいをかけて! 少し顔が良いだけの取り柄もない女でしょう! 少し揶揄われたくらいで大袈裟に騒ぐから、ココン伯爵家が周りにどう見られているか分かる? 慰謝料や留学に多大な金額が動くからうちの事業の信用がた落ちなのよ! ココン伯爵からの援助がなくなって婚約は白紙になるし、少し痛い目に遭えばいいのよ!」
なんだその理由……? 人の援助ありきで商売をして信用がた落ちって。商才がないとさっさと見極めればすむだけでは? 単なる逆恨みだし、恨むのなら俺に向ければ良いものを……。
「人には向き不向きがあります。ドルー嬢のご両親は商才がなかった。これ以上借金を増やす前に撤退するのが最良なのでは? ココン伯爵家はなぜ援助を止めるのか考えましたか? あなたの家に資金を費やしても元が取れないと踏んだのでしょう。お金が動く時は人情だけではなく冷酷になる事も求められます。被害が大きくならぬよう切り捨てるのは当然のこと。ドルー嬢はご自分の両親の会社の収支を理解していますか?」
「それは、両親の管轄で、」
「ドルー嬢は長子で家を継ぐのでしょう? それなのに“知らない”は通用しません。恨む相手も間違っています。筆跡鑑定、指紋鑑定など行わなくとも短絡的ドルー嬢の事ですからすぐにまたモンフォール嬢を攻撃する事になったでしょうね。彼女の周りにはナイトが多いのをご存知でしょうに……。学園側としてもくだらない子供じみた嫉妬による執拗な嫌がらせは今後、より厳しく対処していく所存です。ドルー嬢は家に帰り学園からの沙汰が出るまで謹慎とします。以上」
教師は席を立ち部屋から出た。
「理路整然としていた」
「校長が指名しただけあるな」
キリアンと教師について話をしていた。隣の部屋にいたドルー嬢はメイドが迎えにきて家に帰された。しばらくすると校長が来て謝罪された。先ほどの教師と同じ意見を言い、今回かかった費用は校長が私財で支払うといった。
「校長、私が呼んだのですからうちに請求して構いません」
ドルー子爵に支払わせるつもりだったし校長に迷惑をかけるつもりはない。鑑定士を派遣したのも俺だし。
「校長であるわしが支払う。わしの顔に免じて今回はこれで勘弁してほしい。二度とこのような事が起きないように目を光らせると誓う」
「エルマン殿、校長がここまで言うのだからそうしよう」
「キリアン殿が言うのなら」
校長も事件解決に関与したのだぞ。と生徒に知らしめる目的があるのだろう。そして家路に着いた。ドルー子爵はどう出るかな? 娘が俺の名前を出して攻撃した。となると……
「お客様がいらしたようです。エルマン様も同席するようにと旦那様からの伝言です」
「今行く」
来たか。時計を見ると家に帰ってから三時間後。ドルー子爵の家からうちまで距離があるから相当急いできたのだろうな。
両親揃ってドルー子爵の話を聞いていた。娘は学園側に言われた通り謹慎させているんだとか。しっかり反省させると謝罪を受けた。貴族にはパワーバランスがあるから圧倒的にうちの方が上で、さらにエマの家は伯爵家。伯爵家の令嬢にケガをさせた罪は重い。と伝えた。商売から手を引き残りの借金を抱えながら領地での生活をすることになると思う。
ドルー子爵が帰って行った。謝罪はスピードが命だからな。ドルー子爵の気持ちは受け取っておこう。
「さて、エルマン今後はどうするつもり? エマちゃんと婚約したいのでしょう」
両親にエマと婚約したい。と釣書を送ってあるので今後について聞かれた。
「はい。気持ちは変わっていません」
「エルマンといる事でエマちゃんがまた嫌がらせをされたらどうするの?」
「今回は俺の名前を使われたので厳しい対応ができました。証拠もしっかりあった事ですし、今後も同じです。エマは俺のせいで友達が出来ず1人でいる事が多いです。しかしエマから抗戦的な態度を取ることは絶対にありませんので、俺はエマの味方でいるつもりです」
友達なんて学園でできなくても社交界は広いのだからそこで作ればいい。と母も言っていた。
「分かりました。それならばテストが終わったら私の茶会に正式に招待することにします。そこでエマちゃんの人間性を見させてもらいます」
「分かりました」
「その時は私も顔を出そう。エルマンが婚約を望んでいる令嬢に会ってみたい」
父まで出てくるのか! とにかくテスト勉強をして良い成績を残さないといけないな。
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