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手紙が届いた

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 エルマンと出かけた翌週学園に行くと机の中に手紙が入っていた。なんだろう? もうすぐ授業が始まるので後で確認しよう。とカバンにしまった。午前の授業はもうすぐ始まる。授業の内容はテスト範囲だったので、集中していたらすっかり手紙を忘れていた。

 そしてお昼休憩にエルマンが来て、屋上に行くため移動していた。エルマンにもらったネコの髪飾りはお気に入りとなって、貰ってからは毎日つけている。

「それ、そんなに気に入ったのか?」
「うん。ルビーの瞳がすごい可愛い」
「気に入ってくれたのなら嬉しいがそればかりだと飽きないか?」
「飽きることはないと思うよ」
「同じものを毎日つける令嬢は珍しい」
「そうなの? 気にならなかったケド、そっか貴族だもんね。うーん、でもやっぱり気にしない。好きなものは好きで良いんだよ」
「エマがいいのなら。似合っている」

 食事が終わりお茶を飲もうとした時だった。ずっと返さなきゃと思っていた。

「あの、これ」

 エルマンに借りていたハンカチを返した。

「ん? あの時のハンカチか。別に返さなくても良かったのに」
「借りたものは返さなきゃ。それとこれ」

 ハンカチを返すのが遅くなった理由はお返しの為のハンカチを用意していたから。そのまま洗って返すだけでは失礼だ。とメアリーメイドに言われたから新しいハンカチを買おうと思っていたら、刺繍をしましょう! となぜか張り切ったメアリーに教えてもらいながら、ワンポイントの刺繍をしたのだ。

「その、気に入らなかったら捨ててもいいからね」
「開けても良いか?」
「うん」

 緊張する。決して上手ではない刺繍を人にプレゼントするなんて……。エルマンが何を好きか知らない。エルマンが侯爵家の嫡男だって自信を持ってもらいたかったから、すっごい頑張って侯爵家の家紋を刺繍した。指を針で刺し、肩が凝り、目が霞んだりと慣れないことをしたから疲れたけれど、出来上がったハンカチを見るとやり切った感があった。

「まさかこれエマが?」
「上手じゃないけど、頑張った」
「ありがとう。気持ちが伝わってくる。嬉しいよ」

「これ、何が言いたいか分かる?」
「多分……、自信を持て。とかそんな?」
「うん。お兄様から聞いたけどエルマン成績良いんでしょ? フェルマン様と同等って前に言ってたけど、本当はまだ出来るのに手を抜いてない? それはフェルマン様に失礼だと思う」 
「手を抜いているわけではない」
「嘘は嫌いなんでしょう? 私もテスト頑張るからエルマンもね!」
「そうだな。テストで上位を取ったらご褒美をくれるか?」
「なんで! それなら私も欲しいよ!」
「そりゃ、もちろん。一緒に頑張ろう」
「うん」

 私は今回のテストは絶対にいい成績を取るって決めている! 勉強を諦めることはしないから!

「あと、もう一つあるんだった。これ昨日作ったの」
「パウンドケーキか?」
「この髪留めのお礼の意味も込めているんだけど、何を渡せばいいか分からなくて今度街にいった時に探してくるから、」

 エルマンはパウンドケーキを一口食べた。紅茶のパウンドケーキを作ったんだけど、口に合ったかな。

「美味い。エマお菓子が作れるのか」
「簡単なものだよ。うちは自由だから、厨房に入っても怒られないし、メイド達に混ざって作ったりするの。エルマンに持ってきた物は成功した部分だから安心して」

 火加減で焦げたり生焼けの部分があったりする。エルマンに持ってきた物は吟味された箇所。

「素朴で手作り感があっていい。気に入った」

 これは褒められているのか? 難しいな、言葉って。その後エルマンはパウンドケーキを食べ、褒めているんだぞ。と言った。

「そろそろ戻らなきゃね」

 片付けをしていたら、ひらりと手紙が落ちた。すっかり忘れていた。

「なんだ、これ?」

 エルマンが拾ってくれた。

「手紙かな? 朝机にあったからそのままカバンに入れていたの忘れちゃってた。時間のある時に読もうと思って」
「誰からだ?」
「えー? 分からない。家に帰ってから読むよ。エルマン、急がないと午後の授業遅れちゃうよ!」
「おい、」

「ごめん! 移動教室なんだ、先に行くね。鍵かけといて」

 急いで教室へ行き荷物を置いて教科書とノートを持って音楽室へと行く。テスト終了後の音楽祭で発表する楽曲の練習だった。これが終わると長期休暇となる。


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