20 / 74
手紙が届いた
しおりを挟むエルマンと出かけた翌週学園に行くと机の中に手紙が入っていた。なんだろう? もうすぐ授業が始まるので後で確認しよう。とカバンにしまった。午前の授業はもうすぐ始まる。授業の内容はテスト範囲だったので、集中していたらすっかり手紙を忘れていた。
そしてお昼休憩にエルマンが来て、屋上に行くため移動していた。エルマンにもらったネコの髪飾りはお気に入りとなって、貰ってからは毎日つけている。
「それ、そんなに気に入ったのか?」
「うん。ルビーの瞳がすごい可愛い」
「気に入ってくれたのなら嬉しいがそればかりだと飽きないか?」
「飽きることはないと思うよ」
「同じものを毎日つける令嬢は珍しい」
「そうなの? 気にならなかったケド、そっか貴族だもんね。うーん、でもやっぱり気にしない。好きなものは好きで良いんだよ」
「エマがいいのなら。似合っている」
食事が終わりお茶を飲もうとした時だった。ずっと返さなきゃと思っていた。
「あの、これ」
エルマンに借りていたハンカチを返した。
「ん? あの時のハンカチか。別に返さなくても良かったのに」
「借りたものは返さなきゃ。それとこれ」
ハンカチを返すのが遅くなった理由はお返しの為のハンカチを用意していたから。そのまま洗って返すだけでは失礼だ。とメアリーに言われたから新しいハンカチを買おうと思っていたら、刺繍をしましょう! となぜか張り切ったメアリーに教えてもらいながら、ワンポイントの刺繍をしたのだ。
「その、気に入らなかったら捨ててもいいからね」
「開けても良いか?」
「うん」
緊張する。決して上手ではない刺繍を人にプレゼントするなんて……。エルマンが何を好きか知らない。エルマンが侯爵家の嫡男だって自信を持ってもらいたかったから、すっごい頑張って侯爵家の家紋を刺繍した。指を針で刺し、肩が凝り、目が霞んだりと慣れないことをしたから疲れたけれど、出来上がったハンカチを見るとやり切った感があった。
「まさかこれエマが?」
「上手じゃないけど、頑張った」
「ありがとう。気持ちが伝わってくる。嬉しいよ」
「これ、何が言いたいか分かる?」
「多分……、自信を持て。とかそんな?」
「うん。お兄様から聞いたけどエルマン成績良いんでしょ? フェルマン様と同等って前に言ってたけど、本当はまだ出来るのに手を抜いてない? それはフェルマン様に失礼だと思う」
「手を抜いているわけではない」
「嘘は嫌いなんでしょう? 私もテスト頑張るからエルマンもね!」
「そうだな。テストで上位を取ったらご褒美をくれるか?」
「なんで! それなら私も欲しいよ!」
「そりゃ、もちろん。一緒に頑張ろう」
「うん」
私は今回のテストは絶対にいい成績を取るって決めている! 勉強を諦めることはしないから!
「あと、もう一つあるんだった。これ昨日作ったの」
「パウンドケーキか?」
「この髪留めのお礼の意味も込めているんだけど、何を渡せばいいか分からなくて今度街にいった時に探してくるから、」
エルマンはパウンドケーキを一口食べた。紅茶のパウンドケーキを作ったんだけど、口に合ったかな。
「美味い。エマお菓子が作れるのか」
「簡単なものだよ。うちは自由だから、厨房に入っても怒られないし、メイド達に混ざって作ったりするの。エルマンに持ってきた物は成功した部分だから安心して」
火加減で焦げたり生焼けの部分があったりする。エルマンに持ってきた物は吟味された箇所。
「素朴で手作り感があっていい。気に入った」
これは褒められているのか? 難しいな、言葉って。その後エルマンはパウンドケーキを食べ、褒めているんだぞ。と言った。
「そろそろ戻らなきゃね」
片付けをしていたら、ひらりと手紙が落ちた。すっかり忘れていた。
「なんだ、これ?」
エルマンが拾ってくれた。
「手紙かな? 朝机にあったからそのままカバンに入れていたの忘れちゃってた。時間のある時に読もうと思って」
「誰からだ?」
「えー? 分からない。家に帰ってから読むよ。エルマン、急がないと午後の授業遅れちゃうよ!」
「おい、」
「ごめん! 移動教室なんだ、先に行くね。鍵かけといて」
急いで教室へ行き荷物を置いて教科書とノートを持って音楽室へと行く。テスト終了後の音楽祭で発表する楽曲の練習だった。これが終わると長期休暇となる。
77
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す
岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。
身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました
三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。
助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい…
神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた!
しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった!
攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。
ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい…
知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず…
注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
冷遇王女の脱出婚~敵国将軍に同情されて『政略結婚』しました~
真曽木トウル
恋愛
「アルヴィナ、君との婚約は解消するよ。君の妹と結婚する」
両親から冷遇され、多すぎる仕事・睡眠不足・いわれのない悪評etc.に悩まされていた王女アルヴィナは、さらに婚約破棄まで受けてしまう。
そんな心身ともボロボロの彼女が出会ったのは、和平交渉のため訪れていた10歳上の敵国将軍・イーリアス。
一見冷徹な強面に見えたイーリアスだったが、彼女の置かれている境遇が酷すぎると強く憤る。
そして彼が、アルヴィナにした提案は────
「恐れながら王女殿下。私と結婚しませんか?」
勢いで始まった結婚生活は、ゆっくり確実にアルヴィナの心と身体を癒していく。
●『王子、婚約破棄したのは~』と同じシリーズ第4弾。『小説家になろう』で先行して掲載。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる