10 / 74
今度はなに?
しおりを挟む「お嬢様、お客様が来ていますがどうされますか?」
翌日サムエルの家でサクラと遊んでいたら声をかけられた。
「エルマン様なら断って。なんだか怖いから」
あれからすぐに大きな花束とお菓子が届いた。花束は部屋に飾るには大きすぎてエントランスに飾ってある。お菓子はボンボンだったからメイド達と食べた。素直に美味しかった。
「フェルマン・ベラール様が来ておりますが……。坊ちゃんが対応中です」
お兄様が対応しているという事は行かなきゃダメなやつ。
「お嬢、行ってきたらどうだ?」
「……行かなきゃダメ?」
サクラをぎゅっと抱きしめた。
「気になるだろ?」
「まぁ、ね」
重い腰を上げて立ち上がった。今日も家着のワンピースだ。普通さ、急に来る? 手紙とか先ぶれとか出せないの? 礼儀がなってないのよね。ぶつぶつ言いながら応接室をノックした。
「失礼します」
するとフェルマン、ソファから立ち上がり頭を下げた。なんだ、これは。デジャヴか? それとも口裏合わせて同じような対応をしているのか? と勘繰ってしまった。
「この前はすまなかった。決してもてあそんだわけではない」
などと不穏なことを言うものだからお兄様が豹変した。お顔が怖い! さすがお父様血を引くわけだ。
「フェルマン殿、それはどういう事だい? うちの可愛いエマに何かしたのかい?」
お兄様には説明したよね! フェルマンも言い方が悪い!
「私は何もされていません。されそうにはなったけれど、ムカっとして帰ってきたって説明しましたよね」
「されそうになったことが大問題なんだけど? エマはまだ16歳で冗談でも手を出そうとしてきた輩がいるってことだよな。そんなふしだらな真似をされたら怒っても良いし殴ってもいいんだ」
「暴力は反対ですよ、お兄様」
「エマの綺麗な手を汚すわけにはいかない。その時は僕がするから、」
「お兄様の手が汚れても嫌です!」
お兄様の顔が怖いから手を握りしめた!
「エマは優しいね。僕の心配なんてしなくていいんだよ」
私の手を優しく包むお兄様。いえ、心配させてください。私のせいでおかしくなっていくお兄様なんて見たくない!
「こんなに優しいエマ嬢に俺はなんてことをしたんだ……。いくらエルマンの相手を見つけるためだとしても。俺の美貌を前にしても変わらないその態度。むしろ俺を叱ってくれて……。こんな令嬢は初めてだ。エルマンの相手をとして全く問題ない」
フェルマンもおかしなことを言ってきた。フェルマンは確かにイケメンだけど、前世の記憶もあるし色気はあるけど、好みじゃないのよね。色気を売りにしている男ってクズのイメージだしそんなのに騙されるほど若く? ないもの。現在のエマだけだったら逃げられなかったかもしれないけれど、過去の絵麻はマンガでの知識もあるから騙されないし、エルマンもフェルマンもクズだと思っている。女の子の気持ちをゲームのように扱うなんて最低の一言。マンガを見ていて思っていた。女の子達は何故フェルマンにホイホイとついていくのか? それはエルマンといても会話ができないからだよね? 会話のない食事会は地獄だった。いくら話し下手とはいえ少しは努力しろって。見合いの回数ばかり増やしていつか、成立するなんて思っていたのか。それにフェルマンが認めた女の子って、なにそれ?
「エマは選ばれたいなんて思っていないぞ。一体何しに来たんだい?」
それよ! 何しにうちに?
「先日の俺の態度についての謝罪を、」
「それについてはもう終わった話だ。すまないが用事がそれだけなら帰っていただけないかな。僕とエマはたまたま家にいただけで急に訪問されても困る」
「謝罪は受け入れます」
受け入れたからおかえり願いたい。と意味も込めてにこりと笑った。
「君は優しいんだな、あんなことがあったのに。やはりエルマンの相手に相応しい」
「その件についてもお断りをするつもりですので、デルクール子息にお伝えください」
この人が相応しくないといえばエルマンも引くでしょ。
「そうだ。謝罪を受け入れる代わりに、デルクール子息に私は相応しくない。と、言って下さい」
「エルマンを拒むのか?」
「はい、」
「それなら俺が君の相手に立候補してもいいだろうか!」
は? エルマンとフェルマンいくら従兄弟だったとしても言動が突拍子もなくて恐ろしい。
「お断りします。デルクール子息にも急に訪問されても困ります。とお伝えください。ベラール子息、」
「フェルマンと」
「ベラール子息、私は軟派な男性は嫌いです。デルクール子息の相手を見極めるためとはいえ今まで何人もの令嬢に同じことをしてきたのでしょう? 何人もの令嬢を冷たくあしらったりなさったでしょう? 私もその1人にするおつもりだったのでしょう? 女性の気持ちを弄ぶような方は女性の敵です。これ以上迷いごとを言われるのなら警備を呼びますよ」
うちに警備なんてそんな大それた人間はいないけれど……。
「これは本心で……君に惚れたんだ」
惚れる要素どこにあった?
「ベラール子息のおっしゃる意味、いえ本筋から外れてしまいましたね、」
「軟派な男ではないと必ず証明する。その時は真剣に考えてくれ」
「デルクール子息もベラール子息も私を困らせるのがお好きなようですね….」
「その間は俺たちのことを考えてくれるだろう?」
ポジティブといえばポジティブ……はぁっ。
「ごめんなさい」
頭を下げてお帰り願ったのだった。
101
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
マルフィル嬢の日々
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する!
※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜
なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!
七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。
木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。
しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。
ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。
色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。
だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。
彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。
そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。
しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。
【完結】彼女を恋愛脳にする方法
冬馬亮
恋愛
アデラインは、幼少期のトラウマで恋愛に否定的だ。
だが、そんな彼女にも婚約者がいる。結婚前提で養子となった義弟のセスだ。
けれど、それはあくまでも仮の婚約者。
義理の弟セスは、整った顔立ちで優しくて賢くて完璧な少年だ。彼には恋愛を嫌悪する自分よりも、もっとふさわしい相手がいるに違いない。
だからアデラインは今日も義弟に勧める、「早く素敵なご令嬢を見つけなさい」と。
セスは今日も思い悩む。
どうやったら恋愛に臆病な彼女に振り向いてもらえるのだろう・・・と。
これは、そんな健気な義弟の恋愛奮闘記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる