4 / 74
訪問販売
しおりを挟む
「エマ、腫れが引いてきたね」
「はい。エミリーが毎日冷やしてくれていましたしお医者様が治りが早いと言ってくれました」
私の専用メイドメアリーはもう大丈夫だと言ってもダメ! と言ってタオルを替えてくれたり、脚立事件では私に文句をつけてきた。それだけ心配をかけたし、メアリーの言うことは尤もで素直に謝った。メアリーは少し口煩いところや口が悪いところがあるけれど、私のことを思っての事なので心地が良い。メアリーの家族も揃ってうちで働いてくれている。大貴族ではない我が家は使用人の人数が多くないから大変貴重な存在なのだ。信用できる使用人がどれだけ集められるかという点ではどこの家も人手不足。うちは少数精鋭でやっていける。といえばかっこいいのだけど使用人を育てるのも大事な仕事なんだけどね。でも働いてくれている人の名前が全員分かるのは良いことだと思う。うん。
「今日は業者が来るから僕も立ち合いするよ。それが終わったらサムエルのところに行き猫を見てくるかい?」
私が助け損なった猫! 見たい。
「はい! 楽しみです」
「エマが元気になって良かった。サムエルも心配していたぞ。部屋で過ごす為に見舞いの花を選んで花瓶に飾ってエミリーに渡していたのはサムエルなんだ」
「私の好きなお花ばかりでした。あとでお礼を言わなきゃいけませんね」
その後すぐに業者が来た。
「遅くなってしまい申し訳ございませんでした。伯爵のお言葉に甘えてしまいました。お詫びといってはなんですが文具は新商品も揃えてございます」
リストを見ながら教科書を一揃えする。かなりの量だった。一日の授業は多くて三科目、前期と後期で教科書が分かれていた。
筆記用具は王道なものから可愛らしいもの物までかなりの量が揃っていた。私が選んだのはというと……。
「あら、この花ってサクラかしら?」
「お嬢様、ご存知でしたか? 遠い国で人気の花らしいのです。ワンポイントにサクラを使っていてシンプルで上品に仕上げております」
シンプルで上品。一言で捉えるとそんな感じね。でも私は懐かしいと感じた。春の一定期間しか咲かないサクラはニホン中どこでも咲いていて、この時期になると必ず話題に上がるし入学式の象徴的な花。
「気に入りました。筆記用具はこのサクラシリーズにします」
にこっと笑う。和を感じる物を持つのは悪くないわね。心が落ち着く。そんな感じ。
「お嬢様はサクラをご存知だったのですね。実は他の貴族の方はご存知なかったようで、目にとまりませんでした」
「まぁ。それならこのサクラは私の為に残ってくれていたのですね」
王道な物なら高位貴族と被った! となっても王道を選ぶ人は多いし、イニシャルや家紋、名前を入れてもらう事も可能なんですって。ただ高位貴族と持ち物が被ると下位の貴族は申し訳なくなり、別のものにそっと替えるなどと気遣いをする場合もある。
高位貴族でも気さくな人だと趣味が同じだったね。なんて、言ってくれる場合もあるようだし一概にとは言えない。
「お嬢様のような方に選んでいただけて嬉しく思います。訪問が遅くなってしまったお詫びにこちらのポーチをよろしければ贈らせてください」
カバンから業者さんが取り出してきたのは、薄いピンクの生地に白い桜とネコが刺繍されていた。色のコントラストもデザインも素敵!
「まぁ。なんて美しいのでしょう。気に入りましたので購入させてもらいます、お兄様良いですか?」
学用品とは関係のない物だからお兄様に確認をする。自分のお小遣いから出しても良いほど気に入った!
「そんなに気に入ったのかい? しかし贈らせて欲しいという彼の気持ちもあるのだからここは素直に受け取ろう」
お兄様が言うと業者は頷いた。
「お嬢様が気に入りそうな小物をまたご用意しておきますので、よろしかったらその時はご贔屓にしてください」
「エマ、今度は店に買い物に行こう」
「はい。それでは遠慮なく……。大事に使いますね」
良い買い物が出来たし、素敵なポーチも手に入ったので、大満足だった。残り物には福があると諺がある。この世界で通用するかはわからないけれどね。
これで入学準備はほぼ終えた。
「エマ、昼食後にサムエルのところに行くと連絡してあるからまずは昼食を摂ろうか」
やっと猫ちゃんとの対面だ!
「はい。エミリーが毎日冷やしてくれていましたしお医者様が治りが早いと言ってくれました」
私の専用メイドメアリーはもう大丈夫だと言ってもダメ! と言ってタオルを替えてくれたり、脚立事件では私に文句をつけてきた。それだけ心配をかけたし、メアリーの言うことは尤もで素直に謝った。メアリーは少し口煩いところや口が悪いところがあるけれど、私のことを思っての事なので心地が良い。メアリーの家族も揃ってうちで働いてくれている。大貴族ではない我が家は使用人の人数が多くないから大変貴重な存在なのだ。信用できる使用人がどれだけ集められるかという点ではどこの家も人手不足。うちは少数精鋭でやっていける。といえばかっこいいのだけど使用人を育てるのも大事な仕事なんだけどね。でも働いてくれている人の名前が全員分かるのは良いことだと思う。うん。
「今日は業者が来るから僕も立ち合いするよ。それが終わったらサムエルのところに行き猫を見てくるかい?」
私が助け損なった猫! 見たい。
「はい! 楽しみです」
「エマが元気になって良かった。サムエルも心配していたぞ。部屋で過ごす為に見舞いの花を選んで花瓶に飾ってエミリーに渡していたのはサムエルなんだ」
「私の好きなお花ばかりでした。あとでお礼を言わなきゃいけませんね」
その後すぐに業者が来た。
「遅くなってしまい申し訳ございませんでした。伯爵のお言葉に甘えてしまいました。お詫びといってはなんですが文具は新商品も揃えてございます」
リストを見ながら教科書を一揃えする。かなりの量だった。一日の授業は多くて三科目、前期と後期で教科書が分かれていた。
筆記用具は王道なものから可愛らしいもの物までかなりの量が揃っていた。私が選んだのはというと……。
「あら、この花ってサクラかしら?」
「お嬢様、ご存知でしたか? 遠い国で人気の花らしいのです。ワンポイントにサクラを使っていてシンプルで上品に仕上げております」
シンプルで上品。一言で捉えるとそんな感じね。でも私は懐かしいと感じた。春の一定期間しか咲かないサクラはニホン中どこでも咲いていて、この時期になると必ず話題に上がるし入学式の象徴的な花。
「気に入りました。筆記用具はこのサクラシリーズにします」
にこっと笑う。和を感じる物を持つのは悪くないわね。心が落ち着く。そんな感じ。
「お嬢様はサクラをご存知だったのですね。実は他の貴族の方はご存知なかったようで、目にとまりませんでした」
「まぁ。それならこのサクラは私の為に残ってくれていたのですね」
王道な物なら高位貴族と被った! となっても王道を選ぶ人は多いし、イニシャルや家紋、名前を入れてもらう事も可能なんですって。ただ高位貴族と持ち物が被ると下位の貴族は申し訳なくなり、別のものにそっと替えるなどと気遣いをする場合もある。
高位貴族でも気さくな人だと趣味が同じだったね。なんて、言ってくれる場合もあるようだし一概にとは言えない。
「お嬢様のような方に選んでいただけて嬉しく思います。訪問が遅くなってしまったお詫びにこちらのポーチをよろしければ贈らせてください」
カバンから業者さんが取り出してきたのは、薄いピンクの生地に白い桜とネコが刺繍されていた。色のコントラストもデザインも素敵!
「まぁ。なんて美しいのでしょう。気に入りましたので購入させてもらいます、お兄様良いですか?」
学用品とは関係のない物だからお兄様に確認をする。自分のお小遣いから出しても良いほど気に入った!
「そんなに気に入ったのかい? しかし贈らせて欲しいという彼の気持ちもあるのだからここは素直に受け取ろう」
お兄様が言うと業者は頷いた。
「お嬢様が気に入りそうな小物をまたご用意しておきますので、よろしかったらその時はご贔屓にしてください」
「エマ、今度は店に買い物に行こう」
「はい。それでは遠慮なく……。大事に使いますね」
良い買い物が出来たし、素敵なポーチも手に入ったので、大満足だった。残り物には福があると諺がある。この世界で通用するかはわからないけれどね。
これで入学準備はほぼ終えた。
「エマ、昼食後にサムエルのところに行くと連絡してあるからまずは昼食を摂ろうか」
やっと猫ちゃんとの対面だ!
66
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました
黎
ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。
そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。
家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。
*短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる