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またお茶会? 最後になれば良いのに!

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 今日もジャド嬢と私がお茶会に誘われて王宮に来た。次こそはお断りしようと思っていたらお父様に『行ってこい! 断れるかバカ娘!』 と言われた。最近イライラしているみたいで、反抗しようとしたら2度と部屋から出さないって言われた。

 これは脅しよー! 

 兄様に助けて貰おうとしたら『行っておいで。2度とリリーと出掛けられなくなるのはゴメンだからね』と、言われて王宮まで送ってくれた。

 本日は庭でティーパーティーですって! またあの魅惑的なプリンが用意されている! 殿下に挨拶をして席に着くと、メイドが椅子をもう一脚持ってきた。殿下も不思議そうな顔をしていたわね。

 するとすぐにキリアン様が来て椅子に腰掛け


「やぁ! リリアン嬢、それと君はフレデリックの婚約者候補のジャド伯爵令嬢だったね」

「キリアン様!」

「キリアン! おまえ、何しに来たんだ、邪魔するなよっ」

「えっと、」

 ジャド嬢が困っているわ! こんな時に悪役令嬢なら……

「お二人ともおだまりになってくださる? ジャド嬢が困っているではありませんか! キリアン様も突然お越しになるのなら一言おっしゃってくださればよかったですのに!」


 キリアン様ごめんなさいね。お友達のよしみで無礼をお許しくださいませね。殿下はまぁ良いわ。


「あぁ、そうだね。すまなかった。私はキリアン・モントール。君のことはフレデリックの婚約者候補として話に上がるから勝手知ったると言ったら失礼にあたるかな。リリアン嬢とは学園が同じでさせてもらっているんだ」

 席を立ち胸に手を当てジャド嬢に挨拶をした。ジャド嬢も席を立ち淑女の礼をした。

「公子様でいらっしゃいますね。わたくしはジャド伯爵が二女でナタリナと申します」

「あれ? 私のことを知っているのですか?」


 二人とも良い感じで会話が続いているわ! ジャド嬢もフレデリック殿下と話をするより穏やかな顔つき!

「剣術大会の練習を拝見させて貰いました。とてもお強いのですね。本番はわたくしも応援に参りますので頑張ってくださいませ!」

「ありがとう。しかし私は他校の人間だよ。同じ学園の参加者を応援した方が良いのではないか?」


 あぁ! 合同練習の相手校はジャド嬢の通っている学園だったのね!

「リリアン嬢も応援してくれると言うし、負けていられないね」

 にこっと笑顔を見せてきたではないか! それ友達に見せる顔ではありませんよ!


「黙っていれば勝手に話が進んでいるようだね。キリアンは何しにここに来たのかな? 誘った記憶はありませんよ」

 面白くなさそうにフレデリック殿下が言った。でも笑顔は絶やさないのね。ジャド嬢の前ですものね!


「陛下にここでフレデリックが婚約者候補の方々とお茶をしているから参加したら良いと言われて参上したまでだ」

 こちらも笑顔は絶やさずに会話をされていた。


「父上め! 困った人だ」




 なんとなく気まずい雰囲気の中2対2でお茶会が始まり、池の近くに散策へ行くことになった。

 4人で歩くと事はままならず、いつのまにかフレデリック殿下と歩くことになってしまった。


「リリー足元に気をつけて。この前怪我をしたばかりだから心配だよ」

 と言って腕を出されたので遠慮なく腕を借りた。


「先日はご心配をお掛けしましたわ。この通りすっかり良くなって居ますのでお気になさらないでくださいましね」

 また責任とか言われても困るもの! 靴の裏には滑り止めが付いている! なので簡単にすっ転ぶ事は無いと思いたい!


「もし何かあっても私がちゃんとリリアン嬢の家まで送り届けるから安心して良いよ」

 キリアン様が私の背後から顔を出して言ってきたけれども友達の距離感じゃないわ。

 そっと……2人から離れると殿下とキリアン様が何かを言い合っていたから、ジャド嬢と歩くことにした。



「サレット嬢は公子様と親しいのですか?」

 珍しくジャド嬢から話を振られることになる。


「公子様は学園の先輩で、お友達なんですのよ。ジャド嬢は公子様をご存じでいらしたのね」


 キリアン様のことを呼ぶ時は本人を目の前にした時だけじゃないと、他の方に変に取られてしまう可能性がある。
 家族内やマデリーンの前だけなら良いけれど、知らない方は変に誤解をしてしまう可能性もある。そうなるとキリアン様に迷惑が掛かる。


「公子様は剣術大会の練習でお見かけしましてとても強くて、負けた方にもアドバイスをなさっていてとても素敵な方だと思いました」


 へー。さすがキリアン様! 心もイケメンなのね!

「そうでしたの。わたくしはつい最近知り合ったばかりでそう言った事は知らなくて……公子様の人柄がわかるようなエピソードですわね」


 ジャド嬢がキリアン様の事を話す様子は穏やかで優しい雰囲気だわ。ってもしかして?


「成績も優秀でらしてその話は我が校まで噂をされるほどですのよ。ご存じでしたか?」


 他校の話って全く知らないわ……


「恥ずかしながらわたくし、噂などはあまり耳に入らないようでその辺りのことは全く詳しくなくて、公子様もお名前は存じ上げていましたが、お顔を見ても分からなくて……失礼ですわよね」


「今度の剣術大会を見学に行かれるのでしょう? 我が校の出場者についてはご存知ありませんの?」

 確かに知らないわね。他校の生徒と関わってはいけないと通達されていたもの。


「申し訳ございません。不勉強なもので」


「サレット嬢にしてみればそう言う些細なイベントなのかもしれませんわね。子息たちはここで名前を挙げれば将来に役立つと頑張って鍛錬していますのに」


 そういう理由があっての大会だったのね。不勉強だわ。


「ジャド嬢に言われるまで気がつきませんでしたわ。恥ずかしいですわ」

 
 そんな意味合いがあるイベントだったとは! 気軽に頑張ってくださいね! ってそれではダメね。誠意を込めて応援しなくてはなりませんね。


「それに殿下の婚約者候補でありながら、他の子息と仲良くするなんてあり得ませんわよ。だから変な噂をされるんですわよ? 殿下が不憫ですわ」


 大人しいと思っていたらちゃんと意見を言う人なんじゃないの。


「まぁ、それでしたらジャド嬢が殿下をお支えしたらいかがかしら? わたくしのように面白おかしく噂をされるような者よりもお似合いですわよ。ほほほほほっ」

 悪役っぽいわ! ジャド嬢が少し怒っているように思えるわ!


「なんですって? それであなたは公子様を取ると言う事ですか?」


 ん? なぜ? キリアン様?


「何のことか分かりかねますわ!」


「殿下を捨てて公子様に乗り換えするだなんてふしだらですわ! 公子様が可哀想だわ!」

 捨てる? 何のこと? 

 もし、もしもよ? 例えそうであっても、殿下との婚約がなくなったら良いお相手が見つかるんでしょう……? ふしだらなのかしら……


「わたくし不愉快ですわ! あなたのような方と一緒にいたくありません」

 くるりと振り返り殿下たちの方へ向かったわ。

「この事、殿下に報告いたしますわ!」



「ちょっと、お待ちなさい……」


 触れようとすると思いっきり手を振り払われた。思ったより力が……って! 



 あっ!


 ふらついてしまった! 靴底に滑り止めがつけてあるから下半身に力は入るけれど上半身は……


「きゃぁぁっ……お嬢様」


 遠くから悲鳴が聞こえる。何? 


 場所が悪かったわ……すぐそこに池があれば池ぽちゃだけで済んだのに、緩やかに坂になっているのよ。この場所!



 最後に見たのは驚くジャド嬢の顔と


「リリー!!」
「リリアン嬢!!」


 殿下とキリアン様の声……







 それから意識を手放した。














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