26 / 65
またお茶会? 最後になれば良いのに!
しおりを挟む今日もジャド嬢と私がお茶会に誘われて王宮に来た。次こそはお断りしようと思っていたらお父様に『行ってこい! 断れるかバカ娘!』 と言われた。最近イライラしているみたいで、反抗しようとしたら2度と部屋から出さないって言われた。
これは脅しよー!
兄様に助けて貰おうとしたら『行っておいで。2度とリリーと出掛けられなくなるのはゴメンだからね』と、言われて王宮まで送ってくれた。
本日は庭でティーパーティーですって! またあの魅惑的なプリンが用意されている! 殿下に挨拶をして席に着くと、メイドが椅子をもう一脚持ってきた。殿下も不思議そうな顔をしていたわね。
するとすぐにキリアン様が来て椅子に腰掛け
「やぁ! リリアン嬢、それと君はフレデリックの婚約者候補のジャド伯爵令嬢だったね」
「キリアン様!」
「キリアン! おまえ、何しに来たんだ、邪魔するなよっ」
「えっと、」
ジャド嬢が困っているわ! こんな時に悪役令嬢なら……
「お二人ともおだまりになってくださる? ジャド嬢が困っているではありませんか! キリアン様も突然お越しになるのなら一言おっしゃってくださればよかったですのに!」
キリアン様ごめんなさいね。お友達のよしみで無礼をお許しくださいませね。殿下はまぁ良いわ。
「あぁ、そうだね。すまなかった。私はキリアン・モントール。君のことはフレデリックの婚約者候補として話に上がるから勝手知ったると言ったら失礼にあたるかな。リリアン嬢とは学園が同じで親しくさせてもらっているんだ」
席を立ち胸に手を当てジャド嬢に挨拶をした。ジャド嬢も席を立ち淑女の礼をした。
「公子様でいらっしゃいますね。わたくしはジャド伯爵が二女でナタリナと申します」
「あれ? 私のことを知っているのですか?」
二人とも良い感じで会話が続いているわ! ジャド嬢もフレデリック殿下と話をするより穏やかな顔つき!
「剣術大会の練習を拝見させて貰いました。とてもお強いのですね。本番はわたくしも応援に参りますので頑張ってくださいませ!」
「ありがとう。しかし私は他校の人間だよ。同じ学園の参加者を応援した方が良いのではないか?」
あぁ! 合同練習の相手校はジャド嬢の通っている学園だったのね!
「リリアン嬢も応援してくれると言うし、負けていられないね」
にこっと笑顔を見せてきたではないか! それ友達に見せる顔ではありませんよ!
「黙っていれば勝手に話が進んでいるようだね。キリアンは何しにここに来たのかな? 誘った記憶はありませんよ」
面白くなさそうにフレデリック殿下が言った。でも笑顔は絶やさないのね。ジャド嬢の前ですものね!
「陛下にここでフレデリックが婚約者候補の方々とお茶をしているから参加したら良いと言われて参上したまでだ」
こちらも笑顔は絶やさずに会話をされていた。
「父上め! 困った人だ」
なんとなく気まずい雰囲気の中2対2でお茶会が始まり、池の近くに散策へ行くことになった。
4人で歩くと事はままならず、いつのまにかフレデリック殿下と歩くことになってしまった。
「リリー足元に気をつけて。この前怪我をしたばかりだから心配だよ」
と言って腕を出されたので遠慮なく腕を借りた。
「先日はご心配をお掛けしましたわ。この通りすっかり良くなって居ますのでお気になさらないでくださいましね」
また責任とか言われても困るもの! 靴の裏には滑り止めが付いている! なので簡単にすっ転ぶ事は無いと思いたい!
「もし何かあっても私がちゃんとリリアン嬢の家まで送り届けるから安心して良いよ」
キリアン様が私の背後から顔を出して言ってきたけれども友達の距離感じゃないわ。
そっと……2人から離れると殿下とキリアン様が何かを言い合っていたから、ジャド嬢と歩くことにした。
「サレット嬢は公子様と親しいのですか?」
珍しくジャド嬢から話を振られることになる。
「公子様は学園の先輩で、お友達なんですのよ。ジャド嬢は公子様をご存じでいらしたのね」
キリアン様のことを呼ぶ時は本人を目の前にした時だけじゃないと、他の方に変に取られてしまう可能性がある。
家族内やマデリーンの前だけなら良いけれど、知らない方は変に誤解をしてしまう可能性もある。そうなるとキリアン様に迷惑が掛かる。
「公子様は剣術大会の練習でお見かけしましてとても強くて、負けた方にもアドバイスをなさっていてとても素敵な方だと思いました」
へー。さすがキリアン様! 心もイケメンなのね!
「そうでしたの。わたくしはつい最近知り合ったばかりでそう言った事は知らなくて……公子様の人柄がわかるようなエピソードですわね」
ジャド嬢がキリアン様の事を話す様子は穏やかで優しい雰囲気だわ。ってもしかして?
「成績も優秀でらしてその話は我が校まで噂をされるほどですのよ。ご存じでしたか?」
他校の話って全く知らないわ……
「恥ずかしながらわたくし、噂などはあまり耳に入らないようでその辺りのことは全く詳しくなくて、公子様もお名前は存じ上げていましたが、お顔を見ても分からなくて……失礼ですわよね」
「今度の剣術大会を見学に行かれるのでしょう? 我が校の出場者についてはご存知ありませんの?」
確かに知らないわね。他校の生徒と関わってはいけないと通達されていたもの。
「申し訳ございません。不勉強なもので」
「サレット嬢にしてみればそう言う些細なイベントなのかもしれませんわね。子息たちはここで名前を挙げれば将来に役立つと頑張って鍛錬していますのに」
そういう理由があっての大会だったのね。不勉強だわ。
「ジャド嬢に言われるまで気がつきませんでしたわ。恥ずかしいですわ」
そんな意味合いがあるイベントだったとは! 気軽に頑張ってくださいね! ってそれではダメね。誠意を込めて応援しなくてはなりませんね。
「それに殿下の婚約者候補でありながら、他の子息と仲良くするなんてあり得ませんわよ。だから変な噂をされるんですわよ? 殿下が不憫ですわ」
大人しいと思っていたらちゃんと意見を言う人なんじゃないの。
「まぁ、それでしたらジャド嬢が殿下をお支えしたらいかがかしら? わたくしのように面白おかしく噂をされるような者よりもお似合いですわよ。ほほほほほっ」
悪役っぽいわ! ジャド嬢が少し怒っているように思えるわ!
「なんですって? それであなたは公子様を取ると言う事ですか?」
ん? なぜ? キリアン様?
「何のことか分かりかねますわ!」
「殿下を捨てて公子様に乗り換えするだなんてふしだらですわ! 公子様が可哀想だわ!」
捨てる? 何のこと?
もし、もしもよ? 例えそうであっても、殿下との婚約がなくなったら良いお相手が見つかるんでしょう……? ふしだらなのかしら……
「わたくし不愉快ですわ! あなたのような方と一緒にいたくありません」
くるりと振り返り殿下たちの方へ向かったわ。
「この事、殿下に報告いたしますわ!」
「ちょっと、お待ちなさい……」
触れようとすると思いっきり手を振り払われた。思ったより力が……って!
あっ!
ふらついてしまった! 靴底に滑り止めがつけてあるから下半身に力は入るけれど上半身は……
「きゃぁぁっ……お嬢様」
遠くから悲鳴が聞こえる。何?
場所が悪かったわ……すぐそこに池があれば池ぽちゃだけで済んだのに、緩やかに坂になっているのよ。この場所!
最後に見たのは驚くジャド嬢の顔と
「リリー!!」
「リリアン嬢!!」
殿下とキリアン様の声……
それから意識を手放した。
0
お気に入りに追加
1,688
あなたにおすすめの小説
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
婚約者に見殺しにされた愚かな傀儡令嬢、時を逆行する
蓮恭
恋愛
父親が自分を呼ぶ声が聞こえたその刹那、熱いものが全身を巡ったような、そんな感覚に陥った令嬢レティシアは、短く唸って冷たい石造りの床へと平伏した。
視界は徐々に赤く染まり、せっかく身を挺して庇った侯爵も、次の瞬間にはリュシアンによって屠られるのを見た。
「リュシ……アン……さ、ま」
せめて愛するリュシアンへと手を伸ばそうとするが、無情にも嘲笑を浮かべた女騎士イリナによって叩き落とされる。
「安心して死になさい。愚かな傀儡令嬢レティシア。これから殿下の事は私がお支えするから心配いらなくてよ」
お願い、最後に一目だけ、リュシアンの表情が見たいとレティシアは願った。
けれどそれは自分を見下ろすイリナによって阻まれる。しかし自分がこうなってもリュシアンが駆け寄ってくる気配すらない事から、本当に嫌われていたのだと実感し、痛みと悲しみで次々に涙を零した。
両親から「愚かであれ、傀儡として役立て」と育てられた侯爵令嬢レティシアは、徐々に最愛の婚約者、皇太子リュシアンの愛を失っていく。
民の信頼を失いつつある帝国の改革のため立ち上がった皇太子は、女騎士イリナと共に謀反を起こした。
その時レティシアはイリナによって刺殺される。
悲しみに包まれたレティシアは何らかの力によって時を越え、まだリュシアンと仲が良かった幼い頃に逆行し、やり直しの機会を与えられる。
二度目の人生では傀儡令嬢であったレティシアがどのように生きていくのか?
婚約者リュシアンとの仲は?
二度目の人生で出会う人物達との交流でレティシアが得たものとは……?
※逆行、回帰、婚約破棄、悪役令嬢、やり直し、愛人、暴力的な描写、死産、シリアス、の要素があります。
ヒーローについて……読者様からの感想を見ていただくと分かる通り、完璧なヒーローをお求めの方にはかなりヤキモキさせてしまうと思います。
どこか人間味があって、空回りしたり、過ちも犯す、そんなヒーローを支えていく不憫で健気なヒロインを応援していただければ、作者としては嬉しい限りです。
必ずヒロインにとってハッピーエンドになるよう書き切る予定ですので、宜しければどうか最後までお付き合いくださいませ。
悪役令嬢の幸せは新月の晩に
シアノ
恋愛
前世に育児放棄の虐待を受けていた記憶を持つ公爵令嬢エレノア。
その名前も世界も、前世に読んだ古い少女漫画と酷似しており、エレノアの立ち位置はヒロインを虐める悪役令嬢のはずであった。
しかし実際には、今世でも彼女はいてもいなくても変わらない、と家族から空気のような扱いを受けている。
幸せを知らないから不幸であるとも気が付かないエレノアは、かつて助けた吸血鬼の少年ルカーシュと新月の晩に言葉を交わすことだけが彼女の生き甲斐であった。
しかしそんな穏やかな日々も長く続くはずもなく……。
吸血鬼×ドアマット系ヒロインの話です。
最後にはハッピーエンドの予定ですが、ヒロインが辛い描写が多いかと思われます。
ルカーシュは子供なのは最初だけですぐに成長します。
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
【完結】前世を思い出したら価値観も運命も変わりました
暁山 からす
恋愛
完結しました。
読んでいただいてありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーー
公爵令嬢のマリッサにはピートという婚約者がいた。
マリッサは自身の容姿に自信がなくて、美男子であるピートに引目を感じてピートの言うことはなんでも受け入れてきた。
そして学園卒業間近になったある日、マリッサの親友の男爵令嬢アンナがピートの子供を宿したのでマリッサと結婚後にアンナを第二夫人に迎えるように言ってきて‥‥。
今までのマリッサならば、そんな馬鹿げた話も受け入れただろうけど、前世を思したマリッサは‥‥?
ーーーーーーーーーーーー
設定はゆるいです
ヨーロッパ風ファンタジーぽい世界
完結まで毎日更新
全13話
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる