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ジャド伯爵令嬢 2

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「お前が不憫だから殿下に相談をして婚約者候補に入れて貰った。婚約者候補に選ばれたと言うことはなにか秀でたものがあるから。その後辞退すると結婚相手に恵まれる、他の候補者の家も。殿下との縁も繋げて婚約者も……良い話なんだアンヌは可哀想に学園に入学できなくて外に働きに出てしまった。お前が殿下の婚約者候補になりそこそこの家と縁を繋いでくれればアンヌにもまだチャンスがある。父上は金のかかることは嫌がるがチャンスだと思った!」


 そう言うことね……


「殿下の本命はサレット嬢という事ですね?」


「そうだ。幼少期から殿下が婚約者にと望んでいる方はサレット侯爵令嬢なんだそうだ」


「それであればすぐに婚約なされば良いのに。お似合いだと思いますよ」


「そのつもりだったらしいが帰ってきた殿下に相談があったのだそうだ。私も便乗した! ようやく殿下が帰ってきてくださったから皆嬉しくてつい余計な相談をしたんだろう。一石二鳥だとみんなが思った。サレット嬢が婚約者になるのは選ばれた結果となるだろうし表立って文句を言われない」

「大事なことなのかもしれませんね」

 婚約者はサレット侯爵令嬢と指名すれば、嫌でもYESというしかなくなる。サレット侯爵令嬢を見ていると殿下を慕っている。という感じはなかった。


「あぁ、だからお前はいつ断ってくれても構わない。殿下と婚約したいだなんて大それた考えはないだろう?」

断ってもよろしいのですね?」


「もちろんだ!」


 いつ断っても良いならもう少し王宮へ通いたいと思った。こんな事がないともうあの優雅な空間に足を踏み入れることは出来ないだろうから。


 次のお茶会にはサレット侯爵令嬢も呼んで良いかと聞かれ、もちろん答えはYES。


 2人がどのような関係か見てみたい。婚約者候補を辞退したらこんなチャンスもう2度とないと思った。それに美味しいお菓子やお茶を堪能したいもの。

 殿下は何かと話を振ってくれるけれど、少し気まずいわ。それにサレット侯爵令嬢の装いは今日もお金が掛かっている!

 ブルーダイヤですって! 目が飛び出るほどの金額のものをサラッと付けているなんて! うちの父はケチで宝飾類などかって貰った事がない。母の宝飾類も数は少なくきちんと保管されていてひとつでもなくなると、大騒ぎになる。

 価値があり、さらに価値が上がるものだと殿下もサレット侯爵令嬢も納得しているようだけど、理解できないわ! ただの娘にここまでお金を使うなんて。代々受け継がれる宝飾類じゃないでしょう? 高位貴族の当たり前が羨ましいと思った。

 サレット侯爵は豪快なお金の使い方をするのか? と聞くと自分にはそこまで使わないが周りには使うのだと言った。そうやってお金が(経済)回っていくのだろう。そう言う方にこそ人はついていくのだと思ったら、父が情けない人間に思えた。


 辞退してもいい。それならもう少し様子を見てから辞退しようと思った。


 その後サレット侯爵令嬢はお披露目会を邸宅でするようで誘われたが、私はお披露目会など出来るような家柄ではないので、まだ社交界デビューをしてないのでお断りした。

 王宮で年に一度行われる、その年にデビューした子息令嬢が王族に挨拶をすると言うイベントがあるのでそこでデビューをする事が出来る。
 ドレスにはお金がかかるけれど家でお披露目をするよりは遥かに安上がりだ。


 今年のデビューに間に合わせるために兄と姉が父にドレスを頼んでくれていた。


******

 

「ナタリナ、そろそろ婚約者候補を辞退したらどうだ?」

 兄がまた学園の寮に来た。お茶会になると王都で宿を取ってくれる兄だが、本日は馬に乗り会いに来てくれたようだ。


「実は良い縁談があってな、子爵家のご子息でーー」

 兄が話をし出したけれど、子息家? うちよりは断然裕福なんでしょう。殿下の婚約者候補になった私を望んでいると言うくらいだもの。

「私たちの先輩に当たる方なんだよ。少し年上だけど優秀な成績のナタリナに興味があると言ってくださっている」


 姿絵を見せてくれたけど、10歳も年上で小太りで冴えない男だった。殿下の優雅な姿とは真逆ね。

 結婚する場合の支度金も免除してくださるって確かに良いお話だし、実家に援助もするですって? うちは決して貧乏ではない。ケチなだけ! 援助されてもきっとタンス貯金で終わるだけ。私達に何かをしてくれると言うわけではないわ。


 売られていくようなそんな気にさせられた。そろそろ婚約者候補であるのも限界が近づいてきたみたい。



「そうですね、お会いします。けれどお兄様、来週お茶会がまたあります。それを最後に辞退の旨を伝えます」


 せめてあと1度は夢を見させてほしい。あの優雅な世界の。



「わかったよ。またいつもの宿を取っておく」


「お願いします」



 あと1度のつもりだったのに……


















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