20 / 65
お茶会です!(ジャド伯爵令嬢)
しおりを挟む「ジャド伯爵令嬢、今日は急にわたくしも来てしまって申し訳ございませんでした」
せっかく殿下と二人きりのお茶会なのに邪魔をしてしまったわ……ここはジャド伯爵令嬢の良いところを殿下に見せつけて、私の良くないところを……ふふふっ完璧ね!
「いいえ。サレット侯爵令嬢とご一緒できるなんて嬉しいですわ!」
思ってもいないことを、健気な方なのね! 歳は同じだと聞くし仲良くなれるかも!
「それに殿下と二人だけだと、わたくしのような者は会話が続きませんもの」
「そんな事なくってよ! 殿下は、」
「待たせたね、盛り上がっているようだね」
すっと立ち上がり淑女の礼をする。ジャド伯爵令嬢も私に倣って淑女の礼をしたようだった。綺麗な礼だった。
それから三人でお茶をする事になった。
「ジャド嬢、何の話で盛り上がっていたんだ?」
「あ、はい。わたくしが面白味のない人間ですので、殿下と二人きりだと話すことがないと話をしていましたの」
恥ずかしそうに答えるジャド嬢。
「そんな事はございませんわよ! 実はわたくしジャド嬢の話を伺いましたのよ。学園の成績はとても良くて品行方正だと伺いました。見習わなくてはいけませんわね」
「……恥ずかしながら、自己流です。教師についていたわけでもありませんので……」
さらに恥ずかしそうに答えたけれど、自己流で学園の成績が良いだなんて凄いじゃないの!
「それは凄いね。私は小さい頃から教師を付けてもらっていたし留学もしていたけれどなんとかトップクラスに齧り付いていたくらいなのに」
「そんな……わたくしと殿下を比べないでくださいませ」
おぉー。話しが盛り上がっているわね! ここは大人しくお茶でも飲んで静かに見守りましょう。
「あら、お茶が冷めてしまいましたわね。わたくしがお淹れしてもよろしいでしょうか?」
「頼むよ」
「はい」
せっかくお茶を飲んでのんびりしようと思っていたのに、お茶が温いなんて! メイドに淹れてもらっても良いのだけれど、二人にさせないとね!
「侯爵令嬢であるサレット嬢に淹れていただけるなんて申し訳ないですわ。本来ならわたくしが淹れるべきですわね」
うーん。そうねぇ。この場ならメイドに淹れて貰うのが良いのかも知れないわね。わたくしのお茶会では無いし。
お茶は相変わらずメイドが配ってくれた。
「美味しいですわ」
ジャド嬢が言った。
「ありがとうございます」
褒められて悪い気はしないわ。
「子爵令嬢のお茶が不味いと怒っていたサレット嬢ですもの。流石にお上手ですわ。わたくしごときが淹れなくて正解でしたわ」
ん? たしかに美味しくはなかったけれど、そんなに怒っていたように感じたのかしら……それならなぜあの時失敗に終わったのかしら?
「お茶が不味いと怒ったの?」
フレデリック殿下はこの話に興味があるの? 続ける気?
「まぁたしかに美味しくはなかったですわね」
「子爵令嬢がお茶を淹れていれたのに、サレット嬢が不味いと言って、淹れ直してくださったのですよ」
そう捉えることも出来るのね! うん。私悪そうじゃない! うんうんと頷いた。
この話は続くこともなく別の話題へ
「ジャド嬢は本を読むのが趣味だったね。最近は何を読んだんだい? 私も息抜きに本を読むから是非おすすめを聞かせて欲しい」
「……ナタリー・トトゥ先生のミステリーを読んでいます」
「シリーズになっていて面白いよね。私も読んでいる。そういえば最新刊が出たね。もう読んだ?」
「いえ、まだです。図書館で貸し出しをされる頃に読みたいと思います」
ミステリーを読むんだ。おとなしそうなのに意外だわ。私は読んだことはないけれどナタリー・トトゥ先生は死者が~悪霊が~っていうストーリーもあるわよね。怖いわ……眠れなくなっちゃう!
新刊をお持ちなら貸して差し上げれば、次のチャンスに繋がるのに!
「舞台などは観に行かないの?」
「行ったことはありません。興味はあるんですけれど……」
そう言われたら殿下は誘うしかないわね! ほら誘って! と殿下に目で訴えるが、にこりと笑われた。
なんで!
「あれ、リ、じゃない、サレット嬢の胸元で光っているのはブルーダイヤ?」
あ! やはり気がつきましたか! お目が高い。って舞台の話は!?
「えぇ、父が殿下に会うのなら好きなものを買っても良いと言ったので、遠慮なく購入しました。高価なものはいらないと断ったら経済を回すには私たち貴族がお金を使って回すんだと言われましたので、お言葉に甘えましたわ。それにこのブルーダイヤは将来的にもっと価値が上がると踏みました。何かあった時にお金に換えることも出来ますもの」
首元のダイヤを触った。
「そうだね、きっと価値が上がるだろうね。侯爵の言う通り使う時には使わないと経済は回らない。サレット侯爵の領地経営の賜物でもあるよね。賑わっていると聞く」
父の領地経営は上手く行っているようで、我が領土は平和そのものだ。父も領民の話に耳を傾けている。
「サレット侯爵は豪快な方ですのね。そんなお金の使い方で将来にお金を残すことを考えていらっしゃいますよね……」
どう言う意味かしら? 反論しなきゃ肯定の意味に取られてしまうわ! うちのお父様のことを良い風に思っていない?
「父は領民や使用人のためにもお金を使っていますし、自分のことは二の次と言うところはありますわね。兄がいずれ爵位を継ぐ時のために父が教育にお金を費やするのも領民や、使用人の為でもありますし兄も父の姿を見て学ぶことが多いようです。ジャド伯爵はどういう方ですか?」
「わたくしの家の話なんて面白くもございませんわ。サレット嬢が羨ましいですわ」
たしかに家のことをペラペラ話すのは好ましくないけれど聞かれて困る内容じゃない場合は家族の話もする。
結果ジャド嬢は謎の人だと思った。そうこうしているうちにお開きとなったのだ。
よくわからないお茶会だったわ。次回誘われても行かなくても良いかな。
******
「ジャド嬢は今日も辞退してこなかったな」
「そのようですね」
「私がリリアンを好んでいると言うことは賢い彼女のことだ、理解しているだろう?」
「そのようです」
「ジャド伯爵経由で辞退をしてもらうように頼んでくれ。ある子爵家がジャド嬢に興味を示している。将来性のある家だからと言っておいてくれ」
「畏まりました」
「何か不思議じゃないか? 彼女からは私に好かれたいと言う気持ちも感じられないのに……彼女が辞退してこない限りこのお茶会は続く」
「その前にサレット嬢が辞退をしてきたり、し、て」
鬼のような形相のフレデリックを見て従者はやばいと言う顔をした。
「させるか! 侯爵にも時間の問題だと言ってある。リリアンの心を射止めないと! キリアンが横から掻っ攫ってしまうかもしれん! 父上も楽しみやがって!」
ドンっと机を叩くフレデリック。
「ジャド嬢に関しては伯爵ではなくジャド嬢の兄に聞くのがいいかと」
そうか! ジャド嬢の婚姻について相談をしてきたのはジャド嬢の兄だった! 失念していたではないか!
0
お気に入りに追加
1,705
あなたにおすすめの小説
【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる