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謝罪に来ました!

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「この度はご心配をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。足の腫れもひき普通に歩けるようになりましたのでご報告に参りました次第でございます」



 足の腫れが引いたから学園に行くと言うと『殿下への挨拶が先だろうが! 一度挨拶に行ってこい! バカ娘!』

 とお父様に罵られて挨拶に来たのです。ヒドイわ! っと怪我をしたくてしたわけではないのに! でもお見舞いに来てくださったわけだから行かなきゃね。


「それは良かったよ。リリーが元気じゃないとないと私の調子が狂うよ」


「ご心配とご迷惑をおかけしました。お見舞いにも来ていただいて、申し訳なく思います。今回の事で殿下の方からどうか、わたくしを婚約者候補から外すと言っていただきたいのです」



 深々と頭を下げた。迷惑をかけたんだもの。世間の噂などで殿下の評判を下げるわけにはいかないわ。



「お茶の準備をしてあるんだ。リリー悪いけれど淹れてくれない?」



 あれ? スルー? された? まさか聞こえてないとか?



「殿下、あのですね」


「お茶! 淹れてくれない?」

 にこりと優雅に笑顔を向けられた。


「あ、はい」

 立ち上がりお茶の準備をされたカートの前に立つ。




「それで、私の婚約者候補を外れてリリーはキリアンと婚約するつもり?」

 ん? 首を傾げる



「どうしてそこで公子様のお名前が出るのでしょう?」


「私とキリアンはリリーの心を射止めるのに奮闘しているのだろう?」

 ん? 心を射止める?


「それなら私も本気で挑もうか」




「……おっしゃる意味が分かりません。それに今はお茶を淹れています。もう少しお待ちを」


 砂時計を見て頃合いを図り二人分のお茶をカップに注いだ。良い茶葉なんだから美味しく淹れたいもの。


 運ぶのはメイド。でもなぜかティーカップは机に並べて置かれた。
 もしかしてお客さまが来られるのかしら? 向かいの席に座ろうとしたら


「リリーは私の隣に座って」

 ん? それはダメでしょう!


「お客さまが来られるのでは?」

「リリーの分だよ。言われた通りに座って」

「……はい」


 殿下の隣にちょこんと座った。少し間を空けたつもりではいたけれど、ち、近いわ!


「婚約者候補の件だけど、カサール侯爵令嬢、アデル子爵令嬢、ミロー伯爵令嬢は辞退されたんだよ」



「え! ミロー嬢まで!」

「そうだよ。3人とも私の妃にはリリーをすすめると言って辞退されてしまった」


 なんと! それではもう……


「まぁ。存じ上げませんでしたわ。わたくしでは殿下の妃は務まりませんわ。悪い噂しかありませんもの。わたくしはジャド伯爵令嬢を推しますわ! あの方は真面目で質素で、」


「悪い噂? なんのことだい? 私とキリアンがリリーを巡って争っているというのは、リリーが良い女という事だよね」


「へ? どこが!」


「うん、その話し方の方が良い。あの変な話し方はよした方が良いよ。それと、忘れ物を返す」


 はい。と渡された私の扇子。あ! これって。恐る恐る開いてみた。


「も、もしかしてこれ、見ましたか?」

「もちろんさ! 誰のものか把握するために確認するに決まっているよね。面白いことが書かれていたね。なにかな?」


 マデリーン以外の令嬢の名前と会話していて忘れがちな

 ~ですわ! ~でしてよ! ホホホホホ! 高笑いの仕方……

【悪役令嬢の極意】など。


 恥ずかしすぎて、変な汗が出てきた!


「穴じゃないけど、一生出られない檻なら用意してあげるよ。私の部屋にでも。誰にも会う必要なくなるよね!」

 
 さわやかな笑顔で物騒なことを言わないで! 組んだ足をこちらに寄せてこないで!


「檻は結構です。扇子を拾っていただきありがとうございました」

 扇子を取ろうとすると上にヒョイっと上げられて、恨めしそうな顔をするとかえしてくれた。


「どういたしまして」

 だから近いんだって、少しずつ横にずれているはずなのになんで距離が縮まるの!

「ジャド伯爵が辞退するか、リリーが私を好きになるのはどっちが早いかな?」


「へ?」


「リリー明後日ジャド伯爵令嬢と茶会をするんだがリリーにも来て欲しい」


「それはお邪魔では? 無理ですよ」

「彼女にも伝えておくからいいね?」


「……はい」


 選択権はないのね。



******

 その頃屋敷では……


「え! リリーに正式な婚約の申し出が? 断ればいいでしょうに。今までも届いてましたし」

「シルヴァンよ。相手が相手だ……こんなことになるなら子息との会話も禁止しておけばよかった」


「まさか相手というのは!」


「その通り、モントール公爵家だ!」


「いやいや、だってリリーは殿下の婚約者候補で殿下はリリーと婚約する気でいますよね! モントール公爵家は王家と親戚で……陛下は許可したんですか?」


「面白がっているよ。好きにさせろとな」


「噂が噂じゃなくなるではないですか!」


「うちのバカ娘は大人しくしておれんのだな。何のために女生徒しかいないクラスにいるんだか……それに殿下も殿下だ! 回りくどい方法を取らずにとっととリリアンと婚約する。と言ってくれればこんな面倒な事に巻き込まれなかったのに!」


 頭を抱えるリリアンの父


「殿下の元に娘の縁談をどうしたら良いかと相談があったようで、相談に乗るうちに自分の婚約者候補にしたら、名が上がり良い婚約相手が見つかるだろう。本命はリリアンだからそれさえ守ってくれれば相手を紹介する。と話がまとまったようですね。リリアンには自分を好きになって欲しいのでその間の婚約者候補だなんて……優しいのかそれとも考えなしなのか……」 


 5人の候補の中からリリアンが選ばれたと言う体になるので、その辺に関しては問題はないのだと言う。


「既に3人の令嬢は辞退して相手も決まっているし後はリリアンの気持ちとジャド伯爵令嬢なんだが……ジャド伯爵もそろそろ引かないと良い相手がいなくなるだろうに何を考えているのだろうか?」


「そうですね。ジャド伯爵家といえば質実剛健といえど、ドケチで有名ですからねぇ。滞在費用も馬鹿にならないでしょうし、なにを考えているんだか……」

「もうすぐリリアンのお披露目会だ。何がお披露目会までにリリアンの心を掴んでみせるから、自分が帰ってくるまでお披露目をしないでくれ! だ。掴めていないではないか!」

「まさかこう言う理由でお披露目会が遅れたとはリリアンも知ったら驚くでしょうね。父上! エスコート役は絶対に譲りませんよ! リリアンをエスコートするのは私ですからね!」

「それはお前しか出来んだろう。うちで行うお披露目会で、単なる婚約者候補の一人を殿下がエスコートできるわけではなく、モントール公爵家の子息って言うわけにはいかない」





 頭を悩ませるリリアンと父と兄だった!



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